一般講演

3-023

相関性を用いた回転不変性を有するParticle Swarm Optimization

◎熊谷 渉・安田恵一郎（首都大学東京）

メタヒューリスティクスは多様な環境下での使用が想定されるため、問題構造の変化に対するロバスト性が必要である。その一種として、解空間の変換に対する不変性（変換不変性）が挙げられ、変換不変性の具備が設計方針の一つとして望ましい。一方で、Particle Swarm Optimization（PSO）は解空間の回転変換に対して探索性能が極端に悪化することが知られている。まず本稿では、その原因が、解空間の回転変換に対する不変性（回転不変性）の欠如にあることを指摘する。また、相関性を用いた回転不変性を有するPSOを提案すると同時に、提案手法が回転不変性を有することを示す。最後に、変数分離可能なベンチマーク関数を対象にした数値実験を通じて、提案手法の有用性を示す。

3-024

正確な係数推定を実現するεPSOに基づくステレオエコーキャンセラ

○米田洋介・木許雅則（日本工業大学）

ステレオエコーキャンセラ(以下，SAEC)では，入力チャネル間の強い相関により，係数不定性と呼ばれる特有の問題が生じる．この問題に対しては，前処理等のが有効とされているが，それらは音質劣化等の二次問題を持つ．これに対し，最適化技法である粒子群最適化法(以下，PSO)を応用した手法が提案されていが，実用に際して十分な収束精度は得られていない．本稿では，εPSOを導入した新たなSAECを提案し，環境変化に対する係数収束性能について報告する．

3-025

Brain Storm Optimizationによるエネルギープラント最適運用計画

◎新井 馨・西村典大・佐藤繭子・福山良和（明治大学）・松井哲郎（富士電機）

工場・ビルにおいては，エネルギープラントの最適運用は経営上の大きな課題であり， FEMSやBEMSによるエネルギー最適化の研究が行われている。この問題は，設備の起動・停止や設備特性の非線形を考慮する必要があるため，一般的には混合整数非線形計画問題となる。このため，各種進化計算手法が適用されてきたが，解に改善の余地がまだあることが課題であった。本論文では，解の改善を目的として，エネルギープラント最適運用に対し，Brain Storm Optimizationの適用を行った結果を報告する。

3-026

Modified Brain Storm Optimizationによるスマートコミュニティ全体最適化

◎佐藤繭子・福山良和（明治大学）

現在，スマートコミュニティ（以下，SC）の実証試験が世界中で行われている。著者らは，SCの定量的評価のためSC全体最適化を検討してきた。SC全体最適化の様な大規模最適化問題を効率的に解くためには，適切な初期探索点を与えることと，探索効率の高い最適化手法を用いるという2つの方法が考えられる。k-means法による初期探索点生成手法やSBDIとk- Means法による初期探索点生成方法，PSO，DE，DEEPSOによるSC全体最適化や探索領域の削減も提案してきた。しかし，解の質には改善の余地があった。よって本論文では，BSOの修正版であるMBSOによるSC全体最適化を提案する。

3-027

並列DEEPSOを用いたスマートコミュニティ全体最適化の提案

◎加藤綾重・佐藤繭子・福山良和（明治大学）

現在，再生可能エネルギーや蓄電技術，最新の情報通信技術を活用することで，持続可能かつ低炭素な社会を実現しようとするスマートコミュニティ(以下，SC)の実証実験が世界中で行われている。著者らは， PSO， DE， DEEPSOによるSC全体最適化や，探索領域の削減も提案してきた。SCの設計においては，個々の分野における設備を変更する等の様々なシナリオを検討しながら最適設計を行う必要があり，設計の効率化のためには，シナリオ1回のシミュレーションの高速化が必要となる。本論文では，DEEPSOの処理を並列化した並列DEEPSOを用いたSC全体最適化を提案する。提案法は，富山市を対象としたSCの全体最適化を例題として，高速化が実現できることを検証した。

3-028

複数集団型DEEPSOのエネルギープラント最適運用計画への適用

西村典大・○福山良和（明治大学）・松井哲郎（富士電機）

産業分野のエネルギー消費は，我が国のエネルギー消費の約4割を占め，最も大きなウエイトを占めており，産業分野の省エネは非常に大きな意味を持つ。このため，産業分野のエネルギー設備に対する最適運用システムの研究が進められ，FEMSによるエネルギー最適化が研究されている。従来，この問題は各種進化計算を用いて研究されてきていたが，解に改善の余地があった。本論文では混合整数非線形計画問題となるエネルギープラント最適運用計画に対し，解の改善を目指して複数集団型DEEPSOによる適用を行ったので報告する。

3-029

電力・ガス自由化に対応した家庭におけるエネルギーコスト最小化方式

○安部恵介・大隈隆徳（九州産業大学）

本研究では家庭用エネルギー管理システム(HEMS)等を導入したスマートハウスにおいて、電力・ガス自由化に対応してエネルギーコストを最小とする機器の最適運転計画方式について検討する。家庭におけるエネルギー消費では給湯需要も大きなウエイトを占めており、電力・ガス全体の効率的な運用が重要である。そこで時間帯毎に設定された家庭における電力消費量や電力価格、給湯使用量、ガス料金に基づき、太陽光発電の売電や蓄電池・電気自動車による蓄電、給湯器、燃料電池等を利用して、全体のコストを最小化する方式を提案する。自由化により様々な料金体系が提案された場合も、電気・ガスも含めてそれらの料金を設定することにより比較・検討が可能である。

3-030

大規模混合整数非線形計画問題に対する緩和分解に基づく準最適化手法の提案

○鈴木亮平・大井章弘・藤本 久・福田 尚（富士電機）

Energy ManagementやUnit Commitment等，多くの最適化問題が混合整数非線形計画問題(MINLP)として定式化することができる。MINLPはサイズが大規模となると，現実的な時間で最適解を求めるのが困難となる。そこで大規模MINLPを効率的に解くために離散変数を連続変数に緩和した緩和問題を解くことが考えられる。緩和問題の多くは凸性を有しており，多項式時間で解を得ることができるが，元問題の実行可能性を満たすための手続きを必要とする。本研究では，緩和解に近接した実行可能解を効率的に計算するため，緩和と分解を組合せた手法を提案する。

3-031

需要予測と変化率制約を考慮した数式処理型高速最適分配制御

◎桐生智志・丹下吉雄・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

当社ではCPUやメモリなどの計算リソースが乏しい環境向けに，数式処理技術を利用した最適負荷分配法を開発してきた。本稿では開発済みの最適負荷分配法に対して，需要量の予測値と変化率制約を考慮可能となるように拡張を行った。そして，例題へ適用し，需要の予測を考慮することで，1.18%の省コストが可能なことを確認した。

3-032

小売電気事業者の電力貯蔵装置とディマンドレスポンスの導入評価

○佐藤 翼・大森浩充（慶應義塾大学）

2016年4月に開始された電力の小売全面自由化により, 小売電気事業者（新電力）の市場でのシェアは確実に高まってきているが, 全体に占める割合はまだ低いと言える。電力自由化の目的である市場競争の促進のためには, さらなる新電力の躍進が不可欠である。本研究では, その新電力を対象にESS（電力貯蔵装置）である蓄電池とDR（ディマンドレスポンス）の導入評価を行う。本研究の貢献として, 大規模な新電力における電力調達問題を解き, 蓄電池導入評価では蓄電池の導入コストを考慮したこと, DR（価格型）の導入評価では2レベル計画問題を扱い, 市場価格, 需要, 太陽光発電の3つの不確実性を考慮し, 一定料金制と比較したことが挙げられる。

3-033

PVの最大導入量決定問題における二次錐計画問題の応用

◎池田春之介・大森浩充（慶應義塾大学）

近年，PVをはじめとした再生可能エネルギーは様々な環境問題に対する解決策として注目されているため，安全に系統運用が行えるPVの最大導入量を評価する必要がある． PVの最大導入量決定問題は非凸な非線形計画問題として定式化されるが，最適解の保証がない点や解法であるメタヒューリスティクスのパラメータ設定に労力を費やすなどの問題点がある．そこで，これまで線形計画問題とすることで，高速で解け，最適解の保証も行われる研究がなされてきた．しかし，線形計画問題は非線形項の電力損失を無視しているため，厳密なモデルではない．本研究では，二次錐計画問題を二段階で解くことで，PVの最大導入量決定問題において，電力損失も考慮した凸最適化手法を提案し，線形計画問題よりも電力損失を抑えつつ，最大導入量を増加することに成功した．

3-034

エネルギーマネジメントを考慮したジョブショップスケジューリング問題に対する改良版並列リアクティブタブーサーチの提案

◎川口嵩平・福山良和（明治大学）

ジョブショップスケジューリング問題(以下，JSP)は，生産計画問題の中で機械の処理順序が異なる多数のジョブを扱う工場において，スケジュールを最適化する組合せ最適化問題である。著者らは，JSPに対してエネルギーマネジメントの最適運用を同時に考慮することで一次エネルギーの削減を実現した。また，近年生産現場では単一品種の大量生産から多品種少量生産に移行しており，特性の異なる様々な生産計画を短時間に計算できることが求められている。本論文では，この手法を改善するために探索点ごとにOpenMPによる並列処理を行う解法を提案する。これにより，解の質を維持しつつ計算時間の高速化が実現できることを確認した。

3-035

実ダイヤグラムへの適用を考慮した乗務員スケジューリング問題に対する並列タブーサーチの適用

◎小久保達也・福山良和（明治大学）

乗務員スケジューリング問題（以下，CSP）とは，列車の運行予定に対して，必要な乗務員の勤務スケジュールを決定する問題である。この問題は，就労上の理由により，多くの制約条件が存在する。そのため乗務員が列車を乗り継ぐ際は制約を充足することが第一となり，現代の複雑化する列車のダイヤグラムでは，計画も複雑化しており，大規模問題であることが知られており，現実的には制約充足問題として解かれる。本論文では，最終的な研究目的である，事故時の乗務員スケジュール修正問題への適用を考慮して，実ダイヤグラムを用いたCSPに対して，高速化のための並列タブーサーチを提案する。提案法は，並列処理の適用により，約4.6倍の高速化を確認した。

3-036

ハイブリッドGAを用いたミルクラン物流網計画の一解法

○井上古樹（宮崎産業経営大学）

近年、インターネットを用いた通販、いわゆるe-businessの普及により物流量が増大してきた。低コスト、迅速配送、省エネルギーなど物流に求められるものは、日増しに増大している。これらを満足させる新技術の輸送手段の開発も重要な課題であるが、物流の需要は増大の一途を辿っている。まずは、物流計画の見直し、改善の重要性が担うところが大きい。配送車が出発地点に戻ってくるミルクラン物流計画は、物流における中心的な物流形態である。本研究では、コストの明確化ときめ細かなコントロールが可能になるよう、小ロット多頻度調達、在庫量を抑えるミルクラン物流網モデルを作成し、ハイブリッドGAを用いた改善手法を提案した。

3-037

動画像を対象としたシームカービングの高速化

○北村憲吾・村木祐太・西尾孝治・小堀研一（大阪工業大学）

本研究では，動画像の印象を保持したリサイズ手法であるシームカービングを高速化する手法を提案する．まず，動画をフレーム間のZNCCとHSVヒストグラムの類似度からショット領域に分割し，その領域内で同様のシームを生成し，フレームの再帰的な計算を削減する．次に，動的計画法による計算コストを削減するため，コストマップを正規化しシームに一定の幅を与える．また，ショット領域から生成された全てのシームを一度に取り除くことで，フレームの再帰的なシームの削除を一度に行う．最後に，視覚的に重要な物体領域をリアルタイムで物体検出可能なYOLOを用いて検出する．これにより，従来手法よりも印象を保持したリサイズを高速で実現する．

3-038

形状の再利用を目的とした点群データからの表面形状の抽出

◎大坪真之・村木祐太・西尾孝治・小堀研一（大阪工業大学）

近年3Dスキャナの普及に伴い，CGモデルに点群モデルが用いられるようになっている．一方，CGモデルとして普及しているサーフェスモデルでは，凹凸表現としてディスプレイスメントマッピングが知られている．同様に，点群モデルに対するディスプレイスメントマッピングの研究も行われている．それらの手法では，点群モデルに凹凸を表す表面形状をマッピングしている．しかし，予めマッピングに用いる表面形状を作成しておく必要がある．本研究では，3Dスキャナを用いて取得した点群モデルから，ディスプレイスメントマッピングで用いる表面形状を自動で抽出する手法を提案する．これにより，CGモデルの表面形状を自動で生成することができる．

3-039

中央値を用いた背景画像の合成

◎篠原皓太郎・香取照臣・泉 隆（日本大学）

背景差分処理による背景画像を生成するため、連番画像から各画素の輝度値の中央値を用い、安定した結果を得ることができた。考案した評価値による結果も良好であり、最頻値合成に比べ見た目に反しない結果が得られた。

3-040

時空間画像処理によるドア前徘徊行動の検出に関する検討

◎舘野 仁・香取照臣・泉 隆（日本大学）

ドア前での徘徊(うろつき)行動を自動検出するために、カメラから得た動画に時空間画像処理を行い、時間と面積を特徴量として徘徊行動を検出する手法を検討した。良好な判別結果は得られたが、カメラに複数人映っている、大きな荷物を持っており荷物が人間と判別されている、など、面積が増加する場合の検討が必要である。

3-041

没入環境における立体視の主観評価

○浅井紀久夫（放送大学）・杉本祐二（同志社大学）

バーチャルリアリティ（VR）環境での学習が検討されている。広視野や立体視によってその没入感を高め、動機を高めたり理解度を促進したりする。しかし、学習は長時間にわたって実施されるため、VR環境に長時間さらされることになる。そのことが年少者の視覚機能に悪い影響を及ぼすことが指摘されている。本研究では、没入環境において立体視が没入感に及ぼす影響を主観評価によって調べた。その結果、立体視条件の方が利用者に近い場所にある物体は立体的に見えやすいが、長時間利用には負荷が高いことが示唆された。

3-042

高画素数画像のための移動正規化法の高速化

○江田孝治・中村健人・田川拓也・折居英章（福岡大学）

本研究では、局所的コントラスト強調法の一つである移動正規化法の高速化手法を提案する。移動正規化法では画像上の注目画素をラスタ走査しながら、それを中心とした局所領域に対して連続して正規化処理を行うため、高画素数の画像では処理時間が非常に長くなる問題がある。そこで本研究では、入力画像を1/Nに縮小したものから正規化処理のパラメータを求め、求めたパラメータをN倍に拡大することで入力画像のパラメータとして用いることにした。さらに局所領域内の探索画素をチェッカーフラッグ型に配置することによって処理時間を削減した。提案手法によって移動正規化の処理を大幅に短縮できることが確認できた。

3-043

VR環境と現実におけるリーチングに関する認知・行動の比較研究

◎平本和己・濱本和彦（東海大学）

現在のVR環境と現実における認知・行動の差を調査するため、以前、著者らはリーチングを用いた比較実験を行った。結果、VR環境と現実で認知に差があることを明らかにし、その補正の可能性について検討した。この中で、認知・行動の違いがVR環境内の環境情報量に依存することも示唆された。しかしVR環境と現実のスケールの一致度合いの厳密な検証が必要であることも示唆されたため、本研究ではリーチングを用いてVR環境と現実の空間のスケール差の検証を行い、VR内の環境情報量による認知の変化についてより詳細に調査した。また、以前の研究では認知の差に関する調査のみであったが、本研究ではVR環境と現実における行動差についても調査した。

3-044

ステレオディスプレイを用いた鏡面物体の質感変調

○神之門拓己・岩井大輔・佐藤宏介（大阪大学）

投影型複合現実感技術を用いて実物体の見かけを操作し，知覚される印象や質感を操作する取り組みが行われている．しかし投影光を対象に直接照射する従来の手法では，反射の指向性が高い鏡面物体の見かけを自由に操作することは難しい．そこで本研究では，対象物体の正面に設置したスクリーンに投影を行い，対象表面に映り込んだ投影像の鏡像によって対象の見かけを操作する手法を提案する．視点位置によって映り込む領域が変化するという問題に対処するため，視点位置追跡とステレオプロジェクタによる投影を行う．提案手法を検証するため，鏡にテクスチャを重畳する実験を行った結果，意図した見かけが得られていることが確認できた．

3-045

肺音・心音の聴診に関するVRを用いた看護師教育支援システムの開発

◎千葉 恵・濱本和彦（東海大学）

聴診は看護師の業務の中でも日常的に行われているが，聴き分けが困難であり，多くの学習が必要である．聴診学習する際に用いられる生体シミュレータは細かな聴診部位，聴診音を搭載しているが，非常に高価であり，実際の人体とは感触が異なるといった問題点がある．その為本研究では生体シミュレータをバーチャルリアリティ環境で作成し，触覚デバイスを用いることで人体との接触感覚の提示が可能なバーチャル生体シミュレータを開発した．看護関係者を対象にバーチャル生体シミュレータの評価を行ったところ，聴診音や人体の感触は改善が求められたが，バーチャル生体シミュレータを聴診学習において使用することは有効であることが示唆された．

3-046

ウミトサカグループサンゴの画像自動判別法の開発と考察

◎米須大尊・野崎真也（琉球大学）・坂巻隆史（東北大学）

サンゴの種類や数などを調査する際,その手法の一つとしてコドラート法が広く用いられている. この手法は沿岸などの測定する場所において複数点で撮影する.撮影には一定の枠を写し,枠内にある基質をランダムに複数点選び,その点で基質を目視で確認し,それらを統計データとしてまとめて環境および生態に関する知見を得る. しかし,その画像の枚数は膨大であり,かなりの時間が必要となる.そこで本研究では,ソフトコーラルの中でもウミトサカグループについての判別を目的とし,沖縄に生息するウミトサカグループについて,それらがもつ多くの突起について着目し,判別を行った.その結果を踏まえ更なる精度向上に向けた考察を行った.

3-047

鉄道と道路交通シミュレーションの連携方式の検討

○矢野浩仁・富山友恵・渡邉慶彦（日立製作所）

日本の都市圏は鉄道インフラが高度に発達しているが、依然として鉄道や道路交通の混雑渋滞は課題となっている。このためには鉄道や道路交通状況を収集し、交通全体として変化を予測し対応していくことが重要となる。このためには鉄道や道路交通シミュレータを連接する必要があるが、2つのシミュレータ間の情報連携が密になる程シミュレーションの実効速度は落ち、予測が困難となる。そこで本研究では一旦全体の交通量変化を大まかに予測し、その後鉄道、道路交通シミュレータで詳細に予測することで、実効速度を上げる方式を検討した。今後本方式を実装し、性能評価を進める予定である。

3-048

DEEPSOを用いたPID制御のパラメータ調整

◎森 一平・福山良和（明治大学）

PID制御は，様々な産業で幅広く使われている。従来，適切なPIDパラメータを求めるには専門家による調整が必要であった。この調整が困難なPID制御のパラメータ調整に対し，Particle Swarm Optimization（以下，PSO）等の進化計算を用いた調整の研究が行われている。しかし，最新の進化計算を用いることにより，さらにPID制御の性能向上が期待できる。本論文では，多くの産業分野で利用されている1次遅れ＋むだ時間系を制御対象として，PSOの改良手法であるDifferential Evolutionary PSO（以下，DEEPSO）によるPID制御のパラメータ調整手法を提案する。

3-049

面状サーマルディスプレイにおける分布熱流制御

◎大澤友紀子・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

電流の印加によって温熱・冷却できる熱電変換素子は有用性が高く，産業分野や家庭などで広く用いられている。多くの場合，温熱・冷却範囲を広げるために複数の熱源を並べ，各素子の温度制御が行われている。しかしながら，複数熱源が敷き詰められた面全体をひとつの制御対象と捉え，面上に流れる熱流の向きや大きさに焦点を当てた制御手法は未だに存在しない。そこで本稿では，複数熱源間の仮想熱抵抗を仮定し，その抵抗値を自在に変化させることにより面上の熱流における所望の向き，大きさを制御する手法を提案する。これにより制御対象となる面を直接制御することができるため，広い範囲での熱電変換素子の応用が可能となる。

3-050

画像処理を用いたシルバーカーのアシスト制御の提案

◎井野雅之・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

自立歩行ができる高齢者が荷物の運搬や長距離移動の補助としてシルバーカーが利用されている。シルバーカーは杖に比べて安定した歩行ができ、荷物を積むことで運搬負担を減らすことができる。しかし、シルバーカーを使用することによって転倒する危険がある。転倒事故を防ぐためにアシスト機能を備えたシルバーカーの販売や開発が行なわれているが、人や障害物を検知し、回避する機能の開発は進んでいない。本報告では、画像処理技術を用いて路面上の障害物を検出し、転倒事故を減らすためのモータアシスト機能を検討し、LEGO MINDSTORMS EV3とWEBカメラを用いてシルバーカーのモデルを試作し、アシスト制御の検討を行った。

3-051

マルチコプタの重心位置に対する水平飛行姿勢制御

◎松村勝裕・半田拓磨・上野貴博（日本工業大学）

近年、高架下の点検や、荷物を積載し離れた場所への配達にマルチコプタを用いる試みが行われている。その他にも災害現場での情報収集や、農薬散布にもマルチコプタが利用される等、様々な分野でマルチコプタが注目されている。マルチコプタに荷物を積載する場合、機体の重心を考慮しなければならない。機体の重心が中心からずれている場合、飛行に悪影響を及ぼし、最悪の場合墜落してしまう恐れがある。本研究では重心の偏りをセンサによって検知し、モータ出力を調整することにより、重心が偏っている状態においても安定飛行を行える飛行システムの開発を行う。本稿では重心変化時の水平姿勢制御並びに、圧力センサを用いて重心の測定を行った。

3-052

特性変動するプラントに対するモデルスイッチング異常診断方式

○村上賢哉・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

IoT（Internet of Things）環境の進展によるプラント設備データの計測・蓄積が進み，多数のセンサデータを活用した異常診断方式として「多変数統計的プロセス管理：MSPC（Multivariate Statistical Process Control）」の適用が進んでいる。これは正常時のデータをモデル化しておき，診断時に正常モデルからの逸脱により異常を検出する方式であるが，プラントは特性変動するため，診断時に同じ正常モデルを使い続けていると正常時でも正常モデルから乖離するという問題がある。 本論文ではこれに対応するために正常モデルのプラントの特性変動への追従する新しい方式モデルスイッチング法を提案する。シミュレーションにより従来法のJIT（Just-in-Time）法よりも優れた異常診断性能が得られることを確認した。

3-053

波外乱項をもつ浮体式洋上風車の線形モデルを利用したブレードピッチ角制御器の設計：波外乱項の有用性評価

◎野間友貴・原 尚之・小西啓治（大阪府立大学）

近年，浮体式洋上風力発電が注目されている．浮体式洋上風力発電の問題として，風や波の影響を受けて浮体が動揺するというものがある．本研究では，風速および波を外乱項としてもつ浮体式洋上風車の数学モデルを部分空間法により求め，H₂制御法に基づいたブレードピッチ角制御器を設計する．波を外乱項として含むモデルを利用することの有用性を評価するため，波を外乱項として考慮しない場合の制御器も設計し，空力弾性非線形シミュレーターFASTにより各制御器の制御性能を比較する．

3-054

メキシカンハット関数を活用した旋回クレーンの軌道計画法

○阿部 晶（旭川工業高等専門学校）

本研究では，旋回クレーンのPTP制御問題を扱い，新たな軌道計画法を提案する．ここで扱う旋回クレーンは，ブームの一端を中心に円弧上の軌道を描きながら旋回運動し，旋回方向と遠心力の影響による半径方向の2つの方向に荷揺れが発生する機構である．提案手法では，クレーンブームの旋回軌道をサイクロイド関数とメキシカンハット関数の結合で表現する．生成される軌道はメキシカンハット関数のパラメータに依存することとなる．そこで，粒子群最適化を適用し，クレーン位置決め後の残留振動抑制されるようにキシカンハット関数のパラメータをチューニングして最適軌道を生成させた．シミュレーションを実施し，提案手法の有効性を検証する．

3-055

可変ステップサイズ型相関LMSアルゴリズムを用いた能動騒音制御

◎関口 諒・木許雅則（日本工業大学）

アクティブノイズコントローラ(ANC:Active Noise Controller)は対象となる騒音に対し,同振幅かつ逆位相の疑似騒音を生成し,それらを干渉させて騒音を消去する能動騒音制御システムである.本稿では,演算量の増加を伴わずにFiltered-x法における収束速度の向上とそれ特有の二次経路変動問題の解決を行なう手法として,可変ステップサイズを適用した二種の相関LMSによるHybrid型アルゴリズムを提案し, 具体例によりその有効性を示す.

3-056

倒立ロボット及びモビリティのVSS適応制御

◎竹田 勇・稲葉 毅・平田弘志（東海大学）

セグウェイを代表とした車輪型倒立二輪は不安定な対象であるため,ロバスト性を考慮した制御系設計が必要不可欠である.本研究では,倒立二輪型の自律走行ロボット及び,着座状態で人為的に操作を行うパーソナルモビリティを構成し,全物理パラメータを未知とした運動制御を行う手法を提案する.対象の倒立振子部分に目標値追従型のVSS適応安定化制御系を構成し,有界な振子目標角と並進位置の制御にSTCを用いる.また,旋回系にもVSS適応制御を構成している点も大きな特徴である.以上, 2種類の制御系を用いた提案手法により実験を実施し,不安定系な自律ロボットやパーソナルモビリティの運動制御への有用性を検証する.

3-057

オンライン・オフライン融合型ニューラルネットワークを用いたサーボモータの位置決め制御

◎森田昌一・黄 慶九（工学院大学）

サーボモータの位置決め制御では、負荷が変化すると制御ゲインの再設定を行う必要がある。その実現へ向けて、まず、ニューラルネットワークを用いたフィードバック誤差学習と従来の極配置法との位置決め制御にて、定常偏差がより小さくなることを確認した。次に、オンラインニューラルネットワークでの結果を用いたオフラインニューラルネットワークでの制御を行った。本研究では、その2つのニューラルネットワークを融合したオンライン・オフライン融合型ニューラルネットワークを用いた位置決め制御を行って、オンライン・オフライン融合型ニューラルネットワークを用いることで定常偏差がより小さくなり、本手法が有効であることを確認した。

3-058

情報遅延を考慮した2重積分器型マルチエージェントシステムの収束値解析

◎根岸萌友・児島 晃（首都大学東京）

近年, 無線技術の発展が目覚ましく, マルチエージェントシステムの合意問題はセンサネットワーク, スマートグリッド, 高度交通システム, 人工衛星のフォーメーションフライトなど, 様々な工学応用を含んでいる. 本稿では, 2重積分器モデルを用いて車車間通信を想定した情報遅延を伴うネットワークにおいて車両の位置と速度の合意問題を解く. そして, 情報遅延を伴う系の収束値が初期状態から陽に求められることを明らかにする. 最後に数値例を用いて得られた結果の性質を調べ, 情報遅延の違いがネットワークに及ぼす影響を調べる.

3-059

不確かさの正実性およびゲイン情報に基づくロバスト性能に関する設計法

◎秋葉惇平・劉 康志・下ノ村 翔・小岩健太（千葉大学）

モデルの不確かさを扱う制御系設計法として，不確かさのゲインに基づくロバスト制御系設計法が現在まで研究されてきた．しかし，それらの設計法は不確かさの位相の変動範囲が限定される場合，可能なロバスト性能が制限される．それに対して先行研究では，不確かさの位相情報である正実性と最大ゲイン情報を統合したロバスト性能設計方法を提案していたが，不確かさのゲインの変動を考慮していなかったために保守性が高くなる問題点があった．本稿では保守性を低減させるため，不確かさのゲイン情報として周波数伝達関数を用いたときのロバスト性能設計方法を提案する．そして，先行研究と比較することで提案手法の有効性を検証する．

3-060

非線形システムの擬形式的線形化法とその応用

小松一男（熊本高等専門学校）・○高田 等（鹿児島大学）

高精度で実用的な非線形システムの線形化の一つとして「形式的線形化法」がある．これは，関数空間上のベクトルを構成し，これに関する線形システムを構成する手法である．これの近似精度向上にはベクトルの次数を上げる必要がある．これは，システムの複雑化や計算時間の増大につながる問題がある．そこで本稿では，小領域毎に適用された低次数ベクトルの形式的線形システムを，滑らかに結合する自動抽出関数により近似精度向上可能な「擬形式的線形化法」について考察する．本稿では，ベクトルとしてテーラー展開による多項式列を導入する．本手法の応用例として非線形オブザーバを構成する．最後に数値実験により，本手法の有効性を確認する．

3-061

パラメータ変動を持つシステムのためのロバスト制御法

◎下ノ村 翔・劉 康志（千葉大学）

これまではパラメータが不確かなシステムを設計する場合は小ゲイン定理の範囲で設計する必要があった。更に、筆者らは正実性に基づく設計により、より適切なパラメータ表現を扱うことが可能になった。しかし、未だにパラメータ変動に対しては改善の余地が見込まれる。 本研究ではPopov変換を一般化して、ブロック線図の変形と変動重み伝達関数の導入することにより、従来の設計法では不可能であったシステムを容易に設計可能とする方法を提案する。さらに、この設計法をバネ定数が大きく変動する二慣性のマスバネダンパ系に対し適用して、従来のロバスト設計法よりも高い制御性能が得られることを確認する。

3-062

音波の減衰を考慮した音響インピーダンス制御による仮想反射音生成

◎横田英治・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

人間が臨場感が感じ，音が立体的に聞こえる主要な要因の一つは反射音である。反射音よりも音源からの直接音の影響が支配的である野外等の反射物体がない自由音場においても，仮想的に反射音を作り出すことが出来れば臨場感のある音の生成が可能である。 本論文では仮想音響インピーダンスという新たな物理量を定義することにより，反射音の存在しない自由音場においても，音源からの放射音があたかも特定の位置に構成される仮想壁において反射しているかのような仮想的反射音を二次音源からの放射音により生成する手法を提案し，シミュレーションにより提案手法の有効性を確認する。

3-063

多次元有向情報量に基づく新しいシステム動態解析理論

○阪田 治（東京理科大学）

発表者は過去に多次元有向情報量解析法を提案した。これは，互いに時空間的相関関係を持つ多チャンネル時系列間について，各時系列間の因果性を「情報の流れ」として可視化することができる。これにより，多チャンネル時系列を生成するシステム内部の動的特性に関する知見を得ることが可能である。ただし，これは因果関係を持つ複数の1次元時系列信号を対象とした解析理論であり，本研究ではこれを多次元の集合の間の因果性解析理論へと拡張し，多次元集合を生成するシステム内部の動的解析を行う新しい理論の提案とする。

3-064

測定記録支援システムの開発－②照度測定記録システム－

◎山口紘輝・中島栄一・岡 信哉（関電工）

電気設備工事業務は，どの様な施工現場においても計画を立てて施工を行い，施工が正しく行われているかの検査，そして引き渡しという流れになる。しかし，人手不足が進むと，一人ひとりにかかる負担が大きくなり，長時間労働の要因となるため，業務改善・効率化が必要である。 本稿では，その一例として，現場からのニーズが多い照度測定作業に焦点を当てて，CAD図上に直接入力できるシステムを開発したので報告する。

3-065

測定記録支援システムの開発－①システム概要－

○中島栄一・山口紘輝・岡 信哉（関電工）

関電工では、電気工事に伴う測定作業及び結果記録の業務を効率化し、かつ業務の品質を向上させることを目的として、測定記録支援システムの開発を進めている。本システムは測定記録を行う際に用いられる様々な要素、具体的には測定器に依存するデータ構造及び通信I/Fと測定結果を記録する記録媒体(アプリケーション)の組み合わせに対してフレキシブルに対応することができ、さらに記録媒体への直接入力が可能であるという特徴を有している。本稿ではシステムの概要と特徴について簡単に紹介する。

3-066

SEN 3: 温湿度に関する個人の嗜好情報を自動的に取得する扇子

◎野本裕介・岡村雅也・杉村 博（神奈川工科大学）・大和田 茂（ソニーコンピュータサイエンス研究所）

ユーザーが暑さを感じた時に扇子を開く行動をトリガーとして,その時点の周囲の温湿度情報を自動取得し集計することで,ログ取得のための追加行動を必要とすることなくユーザーの嗜好を取得することができるセンサー付き扇子Sen3を提案する.センサーデータはスマートフォンを介してネット上に蓄積される.我々は本デバイスを約1か月間使用した結果得られた70点のデータからユーザーの嗜好を反映する統計パラメータを計算した.

3-067

レーザを用いた距離・速度ディジタル測定

◎柴田慧一・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

工場内でのファクトリーオートメーションの需要とともに、省スペース化及びコスト低減を可能にする、複数の機能を持ったセンサの要求も増している。本研究では、非接触かつ連続的に測定可能なレーザに着目し、製品の形状及びシステム稼働検査を同時に行うセンサ開発を目指し、レーザの自己結合効果を利用した距離及び速度の同時測定可能なセンサ開発を行ってきた。また、同時測定へ向けた取り組みとして、FPGAにA/D変換器を付属しセンサからの信号を取得後、FFTによる周波数解析及びその他演算処理により、ディジタル測定を行った。

3-068

臭いセンサによる設備異常検知の基礎的検討

◎井沼孝慈・堀 貴雅・藤原伸行（明電舎）

熟練技術者の不足、老朽設備の増加により電気設備での異常を早期に発見する必要がある。筆者らは作業者が異臭によって、異常過熱に早期に気付くケースがあることに着目し、臭いセンサでの設備監視ができないか検討することとした。 異臭を検知する手段として市販の半導体ガスセンサ複数個組み合わせて使用し、周囲の臭いの変化を検出することを試みた。システムを試作して室内環境に常設を行ったところ、部屋の臭いの変化以上に温湿度の影響が大きいため、対策する必要があることが分かった。また、ケーブル被覆やプリント版を加熱した際の臭いに半導体ガスセンサが応答することを確認した。

3-069

降雪粒子の立体形状計測機器の開発

◎斎藤佑紀・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）・民田晴也（名古屋大学）

レーダ降雪強度推定の実用化には、降雪粒子のマイクロ波散乱特性の知見深化が必要であり、粒子立体形状と誘電率情報を得る必要がある。本研究では、降雪粒子の立体形状、落下速度および粒径分布を計測するラインスキャナ型のMulti-Angle Snowflake Imager (MSI)を開発している。誘電率は同期観測している降雪強度計と組み合わせて雪密度を算出して見積もる。MSI 立体形状再現には窪み形状が再現できない弱点がある。現在、斜め32 度上方からMSI に同期して落下粒子を撮影するカメラを増設することで形状再現性の向上を行っている。改良型MSI は、昨シーズンは北海道で、今冬は北海道と金沢でシーズンを通した観測を実施している。本報告では、室内実験による形状再現性向上の評価と実際の降雪粒子観測結果の紹介を予定する。

3-070

自動離着岸に向けたステレオビジョンによる船舶の位置姿勢計測の試み

○山本茂広・吉原蓮汰（神戸大学）・橋本 岳（静岡大学）

港湾での自律航行や，自動離着岸システムに応用することを想定して，陸上からステレオビジョンにより船舶の位置姿勢を計測することを試みた。神戸大学海事科学部附属練習船深江丸を対象に約5mの間隔を空けて2台のカメラで画像を撮影した。あらかじめ求めておいたカメラの内部，外部パラメータを用いてステレオ画像を平行化し，それらからBRISKで特徴点を検出，特徴量マッチングによりステレオ対応点を求め，さらに三次元座標を計算した。測量器で測定した結果と比べると，船橋前面部や右舷が正確に検出されており，この結果と船体のデータとのフィッティングを行えば，姿勢も分かると考えられる。

3-071

アプリケーション間通信による情報共有

◎清田 達（関電工）

本研究の目的はアプリケーション間で通信を行い同時に同じファイルを編集することを可能にすることである。通信技術にはオペレーティングシステム（OS）で提供されている共通のネットワークインタフェースを利用する。Microsoft Excelなどのアプリケーションの情報共有は一般的に，共有フォルダに配置されたファイルを共有編集状態にする方法があるが，瞬時に情報を共有したい場合には不便である。そこで，アドイン開発が可能で瞬時の情報共有に対するニーズがあり想定される効果が大きいMicrosoft Excelをターゲットに開発に取組こととした。

3-072

Event Flag on REMONの提案と検証

◎高垣有希・中武教輔・南角茂樹（大阪電気通信大学）

組み込みシステム用割り込みスケジューラREMON(Real-time Embedded Monitor)は、排他制御や同期を行うための機能としてセマフォがある。しかしながら、現実の組み込みシステムでは複数条件での排他制御や同期が必要になるが、セマフォ機能では単独条件での排他制御や同期しか実現できない。そこで複数の条件によるAND条件やOR条件による排他制御や同期が可能なイベントフラグ機能を提案する。これによりリソースの制約などによりRTOSが搭載出来ない場合でも複数条件での排他制御や同期が可能となる。

3-073

SMPマルチコアプロセッサ組込みシステムにおけるパーミッションベース相互排除方式の提案

◎藪田優平・髙橋貴之・山﨑拓也・藤本堅太・南角茂樹（大阪電気通信大学）

組込みシステムにおいて，データ受け渡しが高速な共有メモリを備えるSMPマルチコアプロセッサを採用する場合が増加している．この場合，共有資源にアクセスする処理を一つに制限する相互排除を実現する方式が問題となる．従来のマルチコア組込みシステムにおいては，相互排除にはスピンロックを使用していた．しかしながら，3つ以上のコアで実行される処理の相互排除において，特定のコアの処理のみが排他制御を実行する可能性や，排他制御要求の順番と獲得の順序が無関係であり，処理機会の公平性に欠けるといった問題がある．そこで，従来のマルチコア組込みシステムの相互排除における上記の問題の解決を目的とした，新しい相互排除方式の提案を行う．

3-074

シングルコアプロセッサによる SMP マルチコアプロセッサシミュレーションの提案

◎髙橋貴之・藪田優平・山﨑拓也・藤本堅太・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年組込みシステムにおいても，性能および省エネルギー性の向上のため，マルチコアプロセッサを採用する場合が増加している．そしてマルチコアに関する研究を行おうとするとき問題となるのが，その開発環境である．特に大学等教育機関においては製品としてのマルチコア CPUボードや開発環境が十分でない場合が多く，ハードウェアシミュレータも使用されてきた．しかしながらハードウェア系の研究をあまり行っていない部署にとってはハードウェアシミュレータも十分でないことが多い．そこで，従来から存在するシングルコアプロセッサ上でマルチコアシミュレータを実現する方式を提案する．

3-075

REMONメールボックスの提案と検証

◎中武教輔・高垣有希・南角茂樹（大阪電気通信大学）

リアルタイム組み込み簡易モニタ(Real-time Embedded MONitor：REMON)は，少ないリソースでリアルタイムOSの同期排他制御に特化した機能が実現できるシステムである．現在REMONにはデータ通信のための機能がない．そこで本研究では，リアルタイムOSであるμITRONで提供されているメールボックス類似機能として新たな機能をREMONに追加し，タスク間データ通信を実現する．タスクはSuperVisor Call(SVC)を介してデータ通信を行う．REMONに対するタスク間データ通信の機能を提案し，動作の検証を行った．

3-076

タスクによるマルチコアプロセッサシミュレーションの提案

◎山﨑拓也・薮田優平・高橋貴之・南角茂樹・藤本堅太（大阪電気通信大学）

近年の組込みシステムでは、性能及び省エネルギー性の向上のため、マルチコアプロセッサの採用が増加している。しかし、マルチコアプロセッサを扱うためのCPUボードや、開発環境が十分でない場合が多く、ハードウェアシミュレータも使用されてきたが、ハードウェア系の研究をあまり行わない部署ではハードウェアシミュレータも十分でないことが多い。 そこで、従来から存在する、シングルコアプロセッサ上でのマルチコアシミュレータを実現する方式を提案する

3-077

マルチコア排他制御機構の提案と検証

◎神谷航輝・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年では組込みシステムにおいてマルチコアの利用が進んでいる。マルチコアを利用する場合、排他制御が重要となる。しかしマルチコアでの排他制御には割込み禁止とロックのタイミングにより問題点がある。本研究では割込み禁止と、ロックの代用としてロックされるべきコアのクロック供給を停止する排他制御を同時に行うハードウェアシステムを提案し、排他制御における問題を解決する。本システムを利用することでマルチコア環境での開発を行う際の排他制御にソフトウェアでのロックなどを利用することなく共有資源にアクセスするコアの競合があった際にハードウェアが自動的にクロック供給を停止することで排他制御を容易に行うことができる。

3-078

「空気覚」創造に向けた空気流発生装置の入出力特性の導出

◎井上洸貴・高橋陽香・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）・石川智治（宇都宮大学）・三井 実（ものづくり大学）

近年, 4DX や MX4D のような 4D 映画が注目されている. これは風や水しぶきなどを用いて, 映像のみの映画に比べて鑑賞者があたかも映画のシーンの中にいるような感覚を高める効果があると言われている. また, VR 分野においても, 聴覚,視覚以外に触覚刺激を与え, よりリアルな感覚を楽しめる技術開発が続けられている. そこで, 空気流刺激による新しい感覚「空気覚 (Air-sensation)」の創造, 開発が行われてきた.空気流刺激による触覚刺激が可能になると, これまで体に装置を装着しないと刺激が与えられなかったものが, 装置の装着時間を短縮でき, さらに装着箇所といった刺激を与える箇所の縛りがなくなる. 先行研究では, インパルス波, および正弦波空気流刺激による認知特性測定, 心理特性測定が行われた. 目的にあった空気流刺激を与えるためには, 入出力関係が明確である必要がある.そこで本研究では, 入出力関係を明らかにするために, 空気流発生装置を非線形システムの導出方法であるVolterra級数展開を用いて入出力特性の導出を行った.

3-079

マルチコアプロセッサを用いた組込みシステム向けLock-free相互排除方式の提案

○藤本堅太（三菱電機）・藪田優平・髙橋貴之・山﨑拓也・南角茂樹・登尾啓史（大阪電気通信大学）

組込みシステムにマルチコアを採用する場合コア間で相互排除を行うための仕組みが重要になる。マルチコア組込みシステムにおいては、自コアの処理とは無関係に他コアの処理が実行されるため、スピンロックを用いた相互排除が用いられているが，リアルタイム性を保証できない問題がある。そこで、上記の問題の解決を目的として、マルチコア向けにLock-free アルゴリズムによる相互排除方式について提案する。本提案は、スタベーションが発生せず、各コアが公平にロックを獲得することができ、最悪時間を決めることが可能といった特徴を持ち、リアルタイム設計が可能となる利点がある。

3-080

Just-In-Timeモデリングによる風向予測

◎圓島健太郎・河合宏之・村尾俊之（金沢工業大学）

並進翼風車は翼迎角を変えることで変化する風向風速に対応する風車であり安定的な発電をおこなうことを期待されている。並進翼風車を効率的に運用するためには風向の予測が必要となるが従来のJust-In-Time(JIT)モデリングを用いた予測では風速の予測のみで風向の予測をおこなうことができない。本研究では風向予測をおこなう前段階としてJITモデリングを用い現在の状況に最も近い過去のデータを探索し、その時の風向の実測データと現在の実測データに関連性があるか比較した。比較の結果、二つのデータが比較的近い関係にあることを確認した。

3-081

炭素回生システム事業価値に対するリアルオプションの提案

◎李 俊・瀬古沢照治（神奈川大学）

本研究では、炭素回生システムに注目し、導入費用の負担を減らす、二酸化炭素を多く吸収するために、海藻吸収二酸化炭素ビジネスモデルを提案する。発電所の利益を得ることとCO2排出量が減少させることを目的とした。通常に対して、拡張オプションと撤退オプションを設定する。日射不足リスクに対して、光射オプションを発案する。内陸で高いコストに対して、成長オプションというアイデアを出す。炭素回生システム効果について考察する。日射時間に対するリスクは光射オプションを導入することにより海藻がさらに成長し、CO2の吸収量も増えた。CO2排出量が削減することができた。大連市の場合は年間約150万トンが減少した。

3-082

構文解析Web APIを持つECHONET Lite規格データベース

○竹内陽祐・吉田雅規・志田 匠・一色正男・杉村 博（神奈川工科大学）

ECHONET Lite(以下EL)アプリケーション開発をするにあたり、EL開発者には膨大なページ数の規格書から必要な情報の抜き出しと、16進数のEL電文コードを見て、何の機器からどのような応答なのかを解析すること求められる。しかし必要な情報の抜き出しや16進数のEL電文コードを解析する作業はEL開発初心者にとって困難である。この問題の解決手法として従来研究でEL対応機器情報の閲覧ができるELデータベースと、EL電文コードの解析ができるEL構文解析が存在するが、それぞれ単体では上記の問題を解決できない。そこで本研究ではEL開発初心者の支援を目的として、EL構文解析器をWeb API化し機能を共有することでEL対応機器情報の閲覧とEL構文解析の両方を可能にする。

3-083

停電復電操作シミュレーションソフトウェアの開発

○松村康宏（関電工）

電気設備の更新，増設工事，点検では安全確保のため，作業箇所を停電後に作業実施している。この準備段階で，担当者は，単線結線図（以下単線図）を用いて開閉器操作手順の検討を行うが，操作と連動して充電部が変化する毎に，充電部を反映した結線図を多数作成している。そこで，単線図から結線図を自動作成し，結線図上で開閉器操作を動的に行えるシミュレーションソフトウェアを開発した。今回は，単線図から結線図の自動作成について報告する。

3-084

家庭用エアコンを対象とした熱処理量推定システム

○近藤修平・上野 剛・宮永俊之（電力中央研究所）・北原博幸（トータルシステム研究所）

わが国では，住宅分野では省エネ基準の改定に基づき，建物の断熱性能が向上しており，ストックとしての住宅の断熱性能には，ばらつきがある．また家電機器のトップランナー制度により，空調機の高性能化も年々進んでいる．このため，空調熱の熱処理の能力と実際の処理すべき住宅の熱負荷が整合していない可能性があり，現場実測による空調機の性能評価が重要である．上野らは室内外の温度・湿度データ及び熱処理量から消費電力量を推定する家庭用エアコンを対象としたモデルを活用して，利用条件と消費電力量が既知の場合に空調機の熱処理量を推定する手法を提案している．本報告では，この知見と近年低廉化が進む各種センサー・無線通信デバイス・マイコンシステムにより測定システムを具現した現場向け熱処理量測定システムについて報告する．

3-085

電力市場用通信に関する国際標準の最新動向

○大谷哲夫（電力中央研究所）

本論文では，電力市場用通信の国際標準であるIEC 62325 に関する調査結果について述べる。IEC 62325 は，電力市場用通信に用いるメッセージフォーマットの制定を主な目的とした規格である。メッセージフォーマットは，電力市場向けの共通情報モデル（Common Information Model，以下CIM）から導出する方法により定義される。CIMは欧州型と北米型に分けて定義されており，メッセージフォーマットは欧州型の規定が進んでいる。今後，需給調整市場に対するメッセージフォーマットが定められる予定であり，我が国からも標準化提案を行う予定である。

3-086

ウェアラブル端末を用いた山岳地歩行用ナビゲーションシステムに関する基礎検討

○八尾健一朗・中司賢一・牛本卓二（中部電力）・田邉泰祐（日本電気）・坂下尚久（写真化学）・渡辺泳樹（NECソリューションイノベータ）

電力会社の設備のうち送電鉄塔は山岳地に建設されていることが多く，巡視や現場作業時は紙面の巡視路図を参考に徒歩で移動する。送電鉄塔までの巡視路は一般的な登山道と異なり整備が不十分な森林を歩くことから経路を迷いやすく，歩行を支援するナビゲーションが望まれている。そのツールとしては近年開発が盛んなウェアラブル端末がハンズフリーで操作でき，電力会社の現場業務に適している。ウェアラブル端末を用いて巡視路を映像やAR（拡張現実）画像で表示することにより直接的で迷うことのないナビゲーションができると考えられる。今回，スマートグラスを用いて山岳地の歩行を支援するナビゲーションシステムについて検討した。

3-087

リヨン市オフィスでの夏季実験に基づく許容可能な設定温度の推定方式の検証

○矢野 亨（東芝）

東芝はフランスリヨン市においてスマートコミュニティプロジェクトを実施し、その中で新築ビルのPEB（Positive Energy Buildingビル内の生産エネルギーが消費エネルギーよりも多いビル）化を主要な課題として取り組んできた。本実証ではPEB化を進めた新設ビルに省エネ技術を導入してその評価を行っており、筆者は、この評価の一つのアイテムとして、許容可能な温度の推定方式に関する実験を対象ビル内のオフィスにて実施した。本稿では、この実験の中で夏季に行ったものについて報告をする。

3-088

空調熱負荷モデルのパラメータ推定手法の開発

◎中村亮介・河村 勉（日立製作所）

人流情報による予測熱負荷を用いた空調機制御手法の開発に関連して、必要となる空調熱負荷モデルを、壁などの材質・厚さに関するデータ入力を伴わずに基本的な計測データのみから推定する手法を開発した。本手法では、非線形カルマンフィルタの1種であるUKF(Unscented Kalman Filter)を採用している。解析により作成した室温模擬データを用いて試算をした結果、壁熱抵抗を誤差1%以下、壁熱容量を誤差4%以下で推定できることを確認した。得られた推定値を元に、真値を用いた場合との室温の演算値を比較すると、差分は1℃以内となり、手法の有効性を確認できた。

3-089

ハニーポットを用いたIoTデバイスに対するサイバー攻撃の分析

○房安良和・小寺建輝・泉 隆（日本大学）

IoT(Internet of Things)は、様々なデバイスをインターネットに接続する技術を指す。IoT関連の市場規模が拡大している一方，多くのIoTデバイスが脆弱性に起因する不正アクセス等のサイバー攻撃の被害に遭っている． IoTデバイスに対するサイバー攻撃は今後も増加・多様化していくと考えられる．この様なサイバー攻撃への対策を講じるためには，IoTデバイスに対する攻撃手法の分析を行う必要がある．以上を踏まえて本研究では，Telnet，SSH，FTP，FTPSのサービスを稼働しているIoTデバイスに対するサイバー攻撃の分析を行うためのサーバ型ハニーポットの構築を行う．本稿では，上述したハニーポットの構築を行い，観測データを分析した結果について述べる．

3-090

プログラマブルデバイス PSoCへのストリーム暗号の実装検討

○岡部 忠（東京都立産業技術研究センター）

本稿では、CPS/IoT向けCypress製プログラマブルデバイスPSoCを実装対象として、eSTREAMで標準化されたストリ－ム暗号規格 TriviumのHW実装とHC-128のSW実装を検討した。PSoCを実装対象とした場合、これらのストリーム暗号では実装面で厳しく、軽量デバイス向けのストリーム暗号が必要であることがわかった。

3-091

ヒストグラムの櫛型移動による音声データの改ざん検知方式

◎中山雄也・木許雅則（日本工業大学）

裁判などの証拠物として音声データがしばしば用いられる．音声データはソフトウェアによる編集が容易であり，その信憑性を高めるために音声鑑定がおこなわれる．しかし近年では人工知能や機械学習の発達により，その編集品質は著しく向上している．そのため，音声データの証拠的価値の低下が不安視されている．本報告では，音声データの改ざんを検出し，その箇所を特定する手法を提案する．データを時間軸でブロック分割し，そのブロックごとの振幅ヒストグラムへフラグの埋め込みをおこなうことで，改ざんされたデータをフラグの有無で識別することが可能となる．

3-092

920MHz帯特定小電力無線の移動体適用に向けた通信品質改善の一検討

○朝比奈 努・辻田 亘・森井 明・若菜理枝・山形卓矢・澤 良次・鹿井正博（三菱電機）

近年、IoT向けに特定小電力無線を活用した無線ネットワークの構築が進んでいる。特に、注目されている無線通信技術の1つであるLoRaWANの通信性能は、通信速度が数kbps、伝送距離が10km程度との報告がある。本報では移動体に適用すべく、移動時においても有効となる通信品質改善手法を提案し、計算機シミュレーションでの評価結果について報告する。改善手法には、ユーザ変更可能な部分への誤り訂正符号化の採用を提案する。提案手法を評価すべくフィールド試験を実施し、試験データの統計分布に基づいた伝送路モデルを構築した。計算機シミュレーション結果、提案手法を適用することで、従来手法に比べビット誤り率が6×10-5で約15dBの通信性能改善を確認した。

3-093

920MHz帯特定小電力無線の市街地向け移動体IoT適用に関する一検討

○辻田 亘・朝比奈 努・森井 明・若菜理枝・山形卓矢・澤 良次・鹿井正博（三菱電機）

近年、IoT（Internet of Things）は様々な分野へ広がり、適用に向けた研究開発が盛んに行われている。本報では920MHz帯の特定小電力無線を移動体IoTに適用すべく、移動時における特定小電力無線機の通信品質の改善手法を提案し、フィールド実験の実施結果について述べる。東京都内の一般道でフィールド試験を実施した。アンテナダイバーシティとユーザが変更可能なデータ部分への誤り訂正符号化を適用することでパケットロスを大幅に削減でき、長さ0.9kmの直線道路区間でパケットロスがほぼゼロとなる結果を得た。

3-094

ジオフェンシングを用いた不完全情報提示によるコミュニケーション支援の検討

◎山脇拓哉・北村尊義・仲谷善雄（立命館大学）・坂入威郎・渡辺昌志・島崎 謙（三菱電機）

近年，社内や学内など組織におけるインフォーマルコミュニケーションの重要性が注目を集めており，これらを支援する多くのシステムが提案されている．しかし，組織内には普段の活動において全員が接点を持っているとは限らず，こうした接点のない者同士のコミュニケーションを支援する研究は見当たらない．本研究では、ツァイガルニク効果と呼ばれる心理的効果を利用した，接点の少ない者同士のコミュニケーション支援システムを提案する．本システムでは、ジオフェンシング技術と、意図的に創出した不完全な情報提示により，システム利用範囲内のユーザに対して興味を引く課題の提示を行うことで支援を行う．

3-095

データ分散配置アーキテクチャにおけるリアルタイムデータ格納方式の検討

◎松山拓紀・金井 遵・大西直哉・高仲 徹（東芝）

広域に分散した監視制御システムにおいて，リアルタイムに生成されるセンサデータをエッジとクラウドで分散して格納する構成を検討し，分散して配置するDBを選定し，センサデータをクラウドサーバへ保存するまでのソフトウェアアーキテクチャを提案する．

3-096

解釈性可視化に向けた因果探索手法の提案

◎秋山早弥香（東芝）

近年、特異点検知技術の発展に伴い、特異点検知した際の解釈性や説明性の向上が求められてきており、これらのニーズに応える技術の1つとして、因果探索技術が注目されている。本報告では、因果探索対象と要因候補から成る取得データとユーザが指定する要因を入力とし、因果探索対象と指定要因との因果関係を抽出する手法を提案する。これにより、抽出結果において因果探索対象と抽出された要因とユーザが想定する要因との関係を確認することが可能になる。

3-097

植物工場運用データの統計的非線形因果構造解析アプローチの一検討

◎村上紗彩・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・渕上英紀・服部敏朗（前川製作所）

近年、植物工場での植物の生産が注目を集めている。しかし、多くの植物工場では空調機器や自動生産実現のための栽培システムの消費電力による電力エネルギーコストが大きく、得られる利益とのバランスをとることが難しいというのが現状である。そのため、生育に要する電力エネルギーコストをなるべく抑えることが大きな課題となっている。これまでにadditive Bayesian network（ABN）を用いて生育環境制御が電力エネルギーと生産物の品質に及ぼす影響を実データに基づき解析してきた。しかし、植物工場で計測されるデータにはABNが前提とする一般化線形モデルの枠組みが必ずしも適切に働かない変量関係が多数存在する。本報告では、このようなデータに対する統計的非線形因果構造の解析手法を検討する。

3-098

ラフ集合を利用したビル空調システム異常検知のためのクライテリア作成方法

○湯本真樹（近畿大学）

ビル空調システムにおいて異常検知を行うにあたり、観測される測定値時系列データから異常を検知する方法が考えられる。従来の方法では異常検知のために専門家知識が必要となる。本研究では測定値時系列データの因果関係にもとづき、ラフ集合を利用してデータの特徴を大まかに捉える方法によりビル空調システムの異常状態検知を行うための判断基準（クライテリア）を自動的に求める方法を提案する。実証実験では、提案方法により実際に観測された測定値時系列データから決定ルールを抽出し、その結果が異常状態を検知するために専門家の知識として用意するクライテリアと同等であることを確認した。

3-099

ガスセンサによる知的匂い識別

○大松 繁（大阪工業大学）

本論文は匂いデータを半導体ガスセンサを用いて計測し、そのデータから特徴量を抽出する。つぎに、ニューラルネットワークを用いて、匂い識別を行い、その識別精度について考察する。

3-100

人間の動作再現のための変分オートエンコーダを用いた動作データ生成

◎高橋大輔・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

ロボットに動作を教示する方法としてデモンストレーションによる方法がある。これにより，人間の動作をロボットに直接教示することが可能である。また，環境情報および動作データを保存し，それらのデータを用いることで，環境を考慮した動作生成を行うことが可能である。しかしながら，動作生成を行う場合，十分なデータが必要であるが，全ての環境に対してデモンストレーションを行い，動作データを取得することは困難である。そこで本稿では，変分オートエンコーダを用いることで，デモンストレーションを行っていない環境に対して動作データを生成する手法を提案する。デモンストレーションによって得られたデータ間の生成が可能であることを実験により確認した。

3-101

NEATを用いた翌日最大電力需要予測

○田村謙次（中央学院大学）

社会の情報化やスマート化の進展に伴い、エネルギーを効果的に活用することが求められており、電力需要を高精度に予測し、無駄のない供給をすることが望まれている。そのような背景において、回帰分析、ニューラルネットワークなどを用いた電力需要予測手法が提案されているが、回帰分析では非線形が容易に扱えないなどの課題や、ニューラルネットワークでは各ニューロの構造の意味合いが希薄であるという課題がある。本研究では、構造とパラメータを最適化するニューロエボリューションの一つであるNeatを用いた翌日の最大電力需要予測手法を提案する。

3-102

ハイブリッド最適化法を用いた肺エラスタンスRBFネットワーク表現形モデルの推定

◎渡瀬翔悟・中道正紀（福井工業大学）・金江春植（純真学園大学）

人間の肺特性は個々に異なるものであり，人工呼吸を行うに当たっては患者の特徴に適合した換気条件を設定することが望ましいが，人工呼吸器のパラメータ設定は医師の経験と勘によって行われているのが現状である．本研究では，推定する肺エラスタンスの表現形式としてRBFネットワークモデルを採用し，そのモデルのノード数・中心・広がりの決定には遺伝的アルゴリズムと焼鈍し法を組み合わせたハイブリッドの最適化法を用いる方法を提案する．また，実患者データを用いて推定実験を行い，人工呼吸器のパラメータ設定に必要とされる静的P-V曲線を求める事で提案手法の有効性を検証する．

3-103

重回帰モデルとANNを用いた経済指標予測

◎荻原航大・浦野昌一（明治大学）

近年、経済情勢が世界的に目まぐるしく変化する中、企業の経営戦略の決定やリスク回避のために、経済状況の動向を追うことが必要となってきている。そこで本研究では、経済動向の分析に役立てるために株価の高値、安値などといった経済指標を高精度に予測することを目的とする。

3-104

ディープラーニングを活用した個別株上昇予測

◎小室権枝・志田 匠・杉村 博（神奈川工科大学）

近年、ディープラーニングを活用した画像識別や音声認識等の研究が盛んであり、他の分野でも応用されつつある。その中で株価の予測研究が行われており、膨大な時系列データから頻出する過去の株価の変動パターンを抽出することによって予測を行う。しかし、個別株では変動パターンの膨大さや規則性の低さなどで予測精度が高まらず利益化が難しい。そこで本研究では株価の分析手法であるテクニカル分析を用いて機械学習を行い、多面的な判定で高確率に上昇する銘柄を狙って取引して利益に結び付ける手法を提案し検証する。株価の変動に対応させたニューラルネットワークを構築して予測を行い、株式の売買手数料を含めた仮想的な取引によって有効性を評価する。

3-105

Deep Learningの構造最適化と出力の根拠説明

◎関段友哉・石橋直人・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

近年，Deep Learningの研究が進み，様々な分野への応用が増えてきている。一方，Deep Learningで用いられる多層のニューラルネットワーク(NN)は，中間層素子数などの構造を決定する方法がなく，また出力の根拠説明ができない問題がある。 著者等は，従来型の3層の階層型NNの構造の最適化や，出力の説明方法を提案し，実システムに適用してきた。今回，その方法を，ReLU関数を用いた中間層が2層以上の多層NNに拡張し，モデルの構造自動決定，及び出力の根拠説明について検証した。 本稿では，4層NNを用いたシミュレーションの結果，中間層素子数を自動的に決定でき，また学習済みモデルから各々の関数を正確に抽出することに成功したので報告する。

3-106

ニューラルネットにおける不均衡画像データの学習精度向上手法

○大塚恵介・熊野照久（明治大学）

ニューラルネットワークは画像認識を始めとしてさまざまな分野ですでに実用化されている。実生活の中でニューラルネットを応用する際、学習データはクラスごとのデータ数に偏りがある不均衡データである場合がある。不均衡データに対してとくに対策せずクラス分類したとき学習データ数が少ないクラスについてほどんど学習することなく、他のクラスのみ学習の対象になってしまうことがあり、解決が望まれている。不均衡データの対処方法は主に二つで学習データ数そのものを調整する方法と少数派クラスに対して学習時の重み付けをする方法がある。本研究では学習時に重み付けをする方法で手書き数字画像認識の学習精度の向上を試みた成果を報告する。

3-107

Leap motionを用いたCNNによる空中入力数字の認識

◎山本 駿・伊藤伸一・伊藤桃代・福見 稔（徳島大学）・Binti Kamat Seri Rahayu（UTeM）

Leap motionを用いてアラビア数字の入力を行い、その入力に対し数字の識別と個人認証を同時に行うシステムを提案した。今回はそのうち数字の識別に取り組んでいる。 20代男性一名に対しLeap motionを用いてアラビア数字の空中入力での計測を行い、それらのデータに対しデータ長統一、ベクトルへの変換の2つの前処理を行った後、深層学習の一手法であるCNNを用いて0〜9の10クラス分類の学習・識別を行った。結果、平均識別率は61.9％となり、考察により改善案はいくつか考えられた。

3-108

多層ニューラルネットワークを用いた印刷画像への情報埋め込み手法の一検討

◎折居英章・江田孝治（福岡大学）・河野英昭（九州工業大学）

近年，従来の電子透かし技術を印刷画像へ応用し，印刷物の見た目を損ねず情報を埋め込むための手法が様々提案されている．本論文では，対象画像の見た目を保持したまま印刷物に対して情報を埋め込むための新しい手法を提案する．提案手法では，ニューラルネットワーク（NN）モデルの中に「情報埋め込み・抽出」処理と印刷取り込みで生じる「画像幾何変換」をネットワークの重みパラメータとして明示的に表現し，学習の過程で埋め込み・抽出のパラメータが最適化されるよう工夫した．実験では，種々のテクスチャを持つ画像に提案手法を適用し，その有効性を確認した．

3-109

物体検出アルゴリズムYOLOv2を用いた交通量と車両走行軌跡の自動計測

岩崎洋一郎・◎竹原洋志（東海大学）・岩本祥二郎・宮田俊彦・倉本俊昌・北島俊孝・瀬戸口 恵（三球電機）

交通量調査は、一般的に人手による目視で行われており、人員確保の手間と費用が掛かり、さらに計測精度も不明確である。また、交差点内での交通錯綜の危険性などの分析に有効な車両走行軌跡の計測は、交通管制の中で実行されてはいない。Deep Learningのアルゴリズムの一つであるYOLOv2は、高速な物体検出が可能で、動画像処理にも利用できる。本稿では、YOLOv2を用いた車種別交通量と車両の走行軌跡を自動計測する手法を提案し、実験により提案手法の有効性を示す。

3-110

触覚ディスプレイによる指先への文字呈示法に関する研究

◎冨澤 晶・水戸和幸・板倉直明・水野統太（電気通信大学）

視覚障害者への新たな情報伝達手段として振動子を浮き出させることによる凹凸で文字を呈示する浮き出し文字が研究されている。先行研究によると、「×」「＝」などの簡単な算術記号を浮き出し文字として手指部に呈示しところ、文字全体を同時に呈示するより筆順通りに1ドットずつ呈示するほうが正答率が高いという傾向がみられた。また、先にカタカナ文字を呈示した場合に同様の結果が得られた。しかし、1文字を識別するのに約20秒かかるという課題があり、より識別時間の短い呈示方法が必要となる。先行研究では文字の要素数が少ない場合は呈示方法の違いによる正答率や識別時間に差がないことが示されており、本研究では1ドットずつではなく画数ごとに呈示する画数呈示法を新たに提案し、その有効性を検証した。

3-111

物質から人間までの進化を実現した生化学ソフトウェアモデルⅢ

◎吉井清明（セイフティーワールド）

生物は様々な循環で構成されており、優れた循環形成を評価・選択出来れば高度化への進化が可能になる。この想定で2003年からESCL（Evaluation System of Circulation Logic：循環論理の評価システム）をコアとした「物質から人間までの進化仮説（戦略的進化説）」を発表してきた。 特に、前々回から「生化学ソフトが、要素（分子、器官）のセンシング情報を記憶。記憶内の要素連結で形成した循環のうち、優れた循環記憶が高頻度上書きで準固定化しESCLとなったとする仮説」を加えた。 今回は量子力学が進化に果たす機能、重要なキーである分子検知センサー確認など新たな裏付け材料を報告する。

3-112

二極式乾式電極を用いた口唇筋電解析による日本語母音識別のためのデータセット作成

◎髙畠亮介・福見 稔・伊藤桃代・伊藤伸一（徳島大学）・Seri Rahayu（マレーシアマラッカ技術大学）

本稿は後天的に発声機能障害に陥った患者を対象とした口唇付近の表面筋電を用いた母音識別システムについての報告である。乾式電極はコスト的に良好ではあるが、多大なノイズが混入するといった問題がある。そのため、本稿ではその影響を受けにくいデータセットについての報告を行う。計測されたデータを5種類の分解能で周波数解析を行い、識別率の比較を行う。結果として、分解能が最も高いデータセットが最良であると判明したが、データ数を増加させる方法の考案が今後の課題となってくると考察した。

3-113

Mental State Estimation Using Emotional Muscle Activity by Wearable Sensors

◎Jingwen Lu・Chenhui Huang・Hiroshi Kajitani（NEC）

Mental states are conventionally evaluated by questionnaire, whereas the reliability of questionnaire is also queried. Nowadays, it is investigated emotional muscle movement is related to mental state. However, relevance of mental state to emotional muscle is not clear, much less the evaluation and estimation of mental state by emotional muscle. In this research, a new method is proposed to evaluate and estimate the mental state effectively using various emotional muscle activity (MA). Emotional MA is highly related to mental state. Evaluation of mental state by MA of Frontalis, an emotional muscle, has been proved to be more precise and effective

3-114

精神状態推定のためのボリンジャーバンド法による筋電信号処理方法

◎黄 晨暉・盧 驚文・梶谷浩司（NEC）

Mental health care and mental state assessment have been increasing paid attention recently. Nowadays mental state estimation by biosignals of automatic nerves has come out. Electromyography (EMG) were used and integrated with traditional biosignals to assess and predict mental states effectively by wearable sensors. However, EMG is a kind of instant signal that has to be detect at a high sampling rate, therefore a feature precision decreasing will be induced by low sampling rate due to some reason for example saving energy for wearable device. In this report, we propose a new data processing method for EMG that precision of feature will be maintained although sampling rate is low. In order to evaluate the effect of this method, first, we use Stroop Test and some relax video to stimulus the mental state and then calculate the EMG feature by the new method, and finally we use machine learning method to evaluate the precision of mental status prediction and compare the results of prediction which use traditional method. For the conclusion, the results using new method is better than that the effect of the traditional method is confirmed.

3-115

スペクトル推定による嚥下時特徴音の検出

○鈴木 裕・丸山 駿・大木英俊（山梨大学）・阪田 治（東京理科大学）・森澤正之（山梨大学）

嚥下時特徴音の発生タイミングに関してはⅠ音，Ⅱ音，Ⅲ音に分類する方法が試みられている(2)。そこでは，喉頭挙上と咽頭によって発生する音(Ⅰ音)，下咽頭の食塊流入と食道部の開大によって発生する音(Ⅱ音)，嚥下終了後の咽頭の下降によって発生する音(Ⅲ音)の構成としている。今回我々はⅠ音，Ⅱ音，Ⅲ音の検出をスペクトル推定によって試みた結果について報告する。

3-116

乾式電極による口唇EMGを用いた個人認証

◎森川詩音・福見 稔・伊藤伸一・伊藤桃代（徳島大学）・Binti Kamat Seri Rahayu（マレーシアマラッカ技術大学）

本稿ではEMGを用いた乾式電極による日本語母音発声時における個人認証を行う．電極は2極で小型の乾式電極とし，口輪筋，大頬骨筋，口角下制筋に設置，P-EMG plusを用いて計測する．ノイズを排除するために，生データを切り取り，特徴抽出を行いDataⅠとした．これにさらにノイズ除去を行ったものをDataⅡとし，それぞれでSVMを用いて学習識別を行った．識別データⅡを識別データⅠと比べると「う」「え」「お」では識別率は向上したが，「あ」「い」における識別率は低下し，平均識別率は低下した．局所的ノイズを取り除く必要はあると考えられるので今後はさらにノイズ除去の方法を検討する予定である．

3-117

ウェアラブルデバイスによる心拍数計測に基づく食事時間検出の試み

◎加藤優侑・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）

本研究ではウェアラブルデバイスを用いて自動で食生活のリズムを記録するシステムの開発を目的とした。ウェアラブルデバイスで食事中および食事後の心拍数を測定し、隠れマルコフモデルを適用して、食事時間の検出を試みた。Viterbiアルゴリズムを基にそれぞれの状態の確率を求め、状態推定を行い食事時間の検出を行なった。 測定した心拍数で、それぞれの区間におけるステートの確率を求めたところ、食事時の状態の確率は高い確率が得られた。また、食事以外でも中程度の確率が得られた。このことから心拍数を食事中と食事中以外に分類できていることがわかった。測定した心拍数の時系列変化が食事時の心拍数の特徴が捉えていたため、分類することができたのではないかと考えられる。

3-118

多チャンネル計測による視覚性注意課題遂行時に対する事象関連電位の特徴

◎三上可菜子・大浦邦彦（国士舘大学）

ヒトの注意機能に関する研究は古く，脳波が発見されて以来様々なことが明らかにされている。しかし注意メカニズムには未解明な点も多く，多くの研究者が取り組んでいるテーマである。著者らの先行研究では，聴覚性注意課題のPASAT を実施し近赤外分光装置(NIRS)を用いて酸化ヘモグロビン濃度変化を測定，血中グルコース濃度との関連と課題難易度における脳活動領域の変化を示した。また，視覚性注意課題としてPVSATを作成し，脳血流変化と事象関連電位の特性把握を試みたが用いた脳波計は単チャネルであり，信号発生源の推定やその遷移を把握できなかった。よって本報告では先行研究により得られた知見ともに，脳波の多チャネル計測により信号の発生機序を検討して注意機能の特性を明らかにすることを目的とする。

3-119

決定木に基づくリハビリフォーム正誤判定技術の検討

◎高 明淑・福島亜梨花・矢野 亨（東芝研究開発センター）

脳卒中等によって四肢の動作が不自由になった場合、その後の状態回復を促進するためのリハビリテーション(以下リハビリ)は不可欠であり、在宅復帰後もリハビリを正しいフォームで実施し続けることは重要である。在宅復帰後にリハビリ実施者のリハビリ動作への正誤判定結果を療法士等の専門家から得ることを想定し、それを利用したリハビリフォーム正誤判定エンジンを提案する。健常者によるリハビリ模擬動作中に実施者の身体に取り付けたセンサーから取得した動作波形データと、その正誤判定結果を用いて、決定木に基づくリハビリフォーム正誤判定エンジンの検討を行った。本稿では誤りフォームの数によって変化する正誤判定精度について報告する。

3-120

超高感度静電誘導電流検出技術を用いた人体動作の検出技術とその応用

◎森永将太・栗田耕一（近畿大学）

私たちが普段日常的に行っている動作には各個人の特徴や癖のようなものが存在している。これは人体の成長過程で自然と身についた動作パターンであり、個々の生体を特徴づける特徴量と考えることもできる。そこで、部屋への入退室動作に着目し、人体動作を非接触で検出することを試みた。人体動作を非接触で検出する方法として、筆者らが開発した人体動作の際に生じる人体電位の変動を静電誘導により検出する方法を用いた。これにより人体にセンサ等を装着することなく完全非接触で入退室や歩行運動等の人体動作の検出が可能であることを示した。また、同時に加速度計とビデオカメラによる計測を行い、個人固有の特徴の原因を明らかにした。

3-121

圧力センサを用いた高齢者の嚥下動作の検出

◎高松優子・鎌田庸平・福田博也（神戸大学）

介護現場の食事介助では、誤嚥や食べ物を喉に詰まらせないように飲み込みを見守ることが必要であるが、実際は食事時間の制限や他業務のため食事介助だけに付きっきりになれない。また、食事介助が必要な人に付きっきりではその人ばかりに目がいってしまい、自力で食べられる人を見られない。食事介助において被介護者が飲み込んだことがわかれば、その人の食事ペースがつかめる、他の人への配慮がし易くなる等の利点が生まれる。本研究では、介護現場で日常的かつ容易に用いられる構造として空気袋を咽頭に接するように装着し、飲み込みの際に大きく動く甲状軟骨の動きを空気袋の内圧変化として捉え、気圧センサによる嚥下動作の検出を提案する。

3-122

手の接触動作を用いた人間の情動推定の検討

◎星島駿貴・泉 隆（日本大学）

将来，人間と機械が共生していくことが予想される。その上で，機械が人間を支援する際に，人間の感情を推定し，その場に合った対応を行うことが重要であると考えられる。人間の感情を推定する研究として，顔表情や身体動作を用いる方法がある。その中でも，身体動作による感情推定は動作解析により感情だけではなく，行動理由やその時の心理状態の認識が可能であると考えられている。 そこで，本研究では人の身体動作に着目し，手の動作における情動推定を行う。本稿では，手の接触動作を用いた情動推定の検討を行う。

3-123

異常検出のための屋内生活音の特徴量に関する一検討

◎髙田 鳴・入江健悟・田中元志（秋田大学）

独居生活者を対象とし，屋内生活活動音の発生確率に着目した異常（事故など）検出方法を検討している。発生確率を求めるための特徴量として，広周波数帯域で録音した音の周波数スペクトル（帯域80 kHz）を15個のサブバンドに分割し，各バンド内の合計電力を求めた（Case A）。また，12次MFCCs（Case B），それらを組合せた場合（Case C）での発生確率を各々求め，異常検出について比較した。異常を模擬した音として，転倒後数分間動かない場合10音と悲鳴後に活動がある場合4音を用意した。試験数が少ないが，Case Aの成績がよく，広帯域周波数解析から求めた特徴量を用いるとよい可能性が示された。

3-124

巡回ロボットによる環境測定システム

◎熊本 光・飯田賢一（奈良工業高等専門学校）・上田悦子（大阪工業大学）

21世紀型農業では，農作物の生産管理を経験や勘に頼らず，農地の環境情報に基づいて行うことが求められている．農地の環境情報を収集する手法として，フィールドサーバを使用した圃場モニタリングシステムや，センサノードを使用したセンサネットワークによるビニールハウス環境センシングなどがあり，農地環境測定に関する研究が多数行われている．本研究では，農地としてビニールハウスを想定し，ハウス内の環境情報をより詳細に測定する手法として，センサユニットを搭載した移動ロボットを用いた自動巡回による環境測定システムを提案する．本稿では，試作した実機を用いた模擬実験により，提案システムの有用性を確かめたので，報告する．

3-125

首振り機構を有する草刈ロボットの消費電力量の検討

◎鈴木涼汰・内田敬久（愛知工業大学）

筆者らは，刈幅増加を目的として草刈ロボット用の首振り草刈装置を提案してきた．本論文では，草刈ロボットをモデル化することでシミュレーションにより，単位面積当たりの消費電力量を，首振りありの提案するロボットと首振りなしの従来のロボットで比較検討する．機体速度が低速の場合，提案するロボットは従来型と比べて低消費電力量で草刈作業を行えることがわかった．低速移動のため，安全性にも寄与するといえる．しかし，機体速度が高速なると，それに合わせて首振り動作が高速になるため消費電力量が上昇することがわかった．

3-126

車輪型汎用モジュールシステム(MMS-V02)の移動シミュレーション

○齊藤多聞・加藤久弥・内田敬久（愛知工業大学）

著者らは，様々な環境でも作業をすることが可能なロボットが必要であると考え，目的に応じて必要なモジュールを組み替えてロボットを構成するシステムを汎用モジュールシステム(MMS:Multi-purpose Module System)と名付けて研究を行っている．これまで，MMSでは全方向移動を行うことが可能なメカナムホイールで駆動するWM11-01モジュールを用いた直列車輪連結形態を開発してきた．本論文では安定走行と狭隘空間走行を目的としてWM11-01モジュールに関節モジュールを追加した車輪関節連結形態MMS-V02を提案し，各モジュールの駆動輪の速度及び関節角とMMS-V02の移動速度及び方向の関係を導出した．そして，計算式を用いたシミュレーションにより全方向への平地移動を実現した．

3-127

ケーブルを搭載した自律移動ロボット経路計画 -時間制約付きヒューリスティック探索におけるパラメータの検討

道木加絵・◎大浦与輝・鳥井昭宏・元谷 卓（愛知工業大学）・舟洞佑記・道木慎二（名古屋大学）

近年需要が高まるEVやPHEVの充電方式には接触充電と非接触充電があり、本研究では家庭に導入が容易でケーブル差し替えで複数台充電が行える接触充電に着目する。これまで筆者らは、ケーブルを搭載した自律移動ロボットを用いたEVやPHEVの自動充電システムの構築を目指し、時間制約付きヒューリスティック探索を適用し、ケーブルの曲率を考慮した自律移動ロボットの経路計画手法を提案してきた。しかしながら、評価関数内の重みや時間制約付きヒューリスティック探索での設定変数について、生成される経路への影響を検証してこなかった。そこで、本稿ではシミュレーションによる経路生成実験を通して、各パラメータの生成経路への影響を検証する。

3-128

手モーションキャプチャ装置 Leap Motion を用いた拡張仮想手のモーション制御に関する研究

◎青木亮磨・浅井唯貴・松倉 悠・岩井大輔・佐藤宏介（大阪大学）

実空間に投影したバーチャルハンドを介して, 手の届かない遠隔対象に働きかけることができるシステム ExtendedHand がある. ExtendedHand では, タッチパネルを用いてバーチャルハンドを操作するが, より自然なインタフェースを提供するために, 入力デバイスを Leap Motion に置き換える. その際, 限られたワークスペース内で, 広大な投影領域内をバーチャルハンドが効率良く正確に移動できるような入出力関係を構築する必要がある. 本研究では, 手の速度によりゲインを変化させる入出力関係がバーチャルハンドの移動の正確性の向上, バーチャルハンドを遠くに移動する際の効率性の向上に有効であることを確かめた.

3-129

テレプレゼンスロボットにおける会話参入補助システムの開発

◎川合隆泰・本田幸夫（大阪工業大学）

近年テレワーカの増加等により, 自立移動式のテレプレゼンスロボットが活用されている. しかし, このロボットを用いて遠隔地で行われている会話に参入する際, その場の雰囲気をスマートフォン等のユーザデバイスからでは, 認知することが困難である. また操作時の距離感の掴みづらさもあり, スムーズなコミュニケーションが開始できない問題がある. よって, この問題を解決するためにF陣形を考慮した, テレプレゼンスロボットの会話開始位置までの移動補助を行うシステムを開発した. 移動補助を行うために, BLEビーコンを用いた位置測位行った. 本システムを実装することにより, 円滑なコミュニケーションを実現することができた.

3-130

ポテンシャル法を用いた動的障害物との衝突回避

◎皆川 凌・曹 梅芬（東京都立産業技術高等専門学校）

自律移動ロボットの安全な経路計画のためには，壁や家具等の静的障害物のみでなく，歩行者などの動的障害物をリアルタイムで考慮する必要がある．これまでの先行研究では，ポテンシャル関数に動的障害物の移動速度が含まれていないため，ロボットが動的障害物と衝突回避できない可能性がある．本研究は，先行研究によって提案されたポテンシャル関数を基に，動的障害物とロボットの相対速度を考慮したポテンシャル関数を提案する．さらに目標地と動的障害物の相対位置に基づいてパラメータを設定することで，動的障害物との衝突回避ができる経路計画法を提案する．