一般講演

3-131

繊維状基材表面へのグルコースセンサの作製

◎金 イエチャン（東京理科大学）・松本壮平（産業技術総合研究所）・早瀬仁則（東京理科大学）

医療分野等ではより迅速かつ正確なモニタリングが求められ、生体に組み込むためのセンサが注目されている。我々の研究チームはできる限り低侵襲で生体に負担が小さいと考えられる繊維上基材への金属パターン形成を研究してきた。本研究では過去の研究(基材表面へのPtパターンの形成)を参考に三電極のパターン形成に加えAg/AgClインクによる参照電極の試作、最終的に酵素(GOD)の修飾によりグルコースセンサを試作した。試作したセンサはグルコースの濃度に応じて電流値が変化しており、グルコース濃度と電流値が直線的な関係になったことからグルコースセンサとして機能していることが確認できた。

3-132

連続的かつ非侵襲的な代謝評価を目的とした医療用汗中乳酸モニタリングシステムの開発

◎鈴木悠亮・河合 望・工藤寛之（明治大学）・細山明子・森澤健一郎・平 泰彦（聖マリアンナ医科大学）

非侵襲的かつ連続的な代謝評価を目的とした汗中乳酸リアルモニタリングシステムを作製し基礎特性評価及び、医療現場における有用性を確認した。ポリエチレンテレフタラート基板上にスクリーン印刷にてカーボングラファイト電極を作製し、オスミウム錯体を用いた反応系と乳酸酸化酵素を固定することで乳酸センサを作製した。汗の主成分である乳酸，グルコース, 尿酸, 尿素, エタノール, アンモニアをそれぞれセンサに導入した時の出力電流を比較した結果、十分な選択性が得られた。このデバイスを用いて集中治療室における循環器疾患患者の汗中乳酸計測を行った結果、血中乳酸濃度に対して一定の相関性が認められ、我々のシステムの臨床現場での利用の可能性が示唆された。

3-133

光電力伝送によるバッテリレス生体埋植光刺激デバイス

○川野裕祐・⽯津岳明・春田牧人・野⽥俊彦・笹川清隆・徳⽥ 崇・太⽥ 淳（奈良先端科学技術⼤学院⼤学）

我々は、体外からエネルギーを供給して生体埋植光刺激デバイスを動作させるための超小型光電力伝送プラットフォームの開発に取り組んでいる。今回、光給電を用いた新しい生体埋植光刺激デバイスを試作、実証した。 試作したデバイスは受光素子であるフォトダイオード（PD）を流用したオンチップ太陽電池・制御回路を搭載したCMOSチップ及び電力蓄積用のキャパシタ、光刺激用の発光ダイオード（LED）から構成される。 CMOSチップを0.35μm標準CMOSプロセスにより試作して評価を行ったところ、370nAという小電流で回路が駆動できることを確認した。今後はこのデバイスの機能評価を行っていく。

3-134

マイクロチャンバを用いたDNAのPCR増幅と微粒子修飾プロセスのワンチップ化

◎堀田博一・山崎達郎・福島光彦・丁 震昊・中野道彦・末廣純也（九州大学）

筆者らの研究グループでは、迅速かつ簡便なDNA検出法として微粒子の誘電泳動現象とインピーダンス計測を組み合わせたDEPIM法を提案してきた。しかしながら現状ではPCRや微粒子とDNAの結合、DEPIM法による検出のプロセス間でピペッティングによる溶液移送操作を行っているため、コンタミネーションやサンプルのロスが生じる恐れがある。そこで一連のプロセスをワンチップ上で連続して行う新たなDNA検出デバイスを検討している。本研究では、その第一歩として、DNAのPCR増幅と微粒子修飾プロセスをワンチップ上で連続して行う手法について検討した。

3-135

DNA Detection Method by Analyzing DNA-labeled Microbead Velocity under Traveling Wave Dielectrophoresis

○Zhenhao Ding・Michihiko Nakano・Junya Suehiro（Kyushu University）

We have developed a rapid DNA detection method based on the dielectrophoresis (DEP) characteristic of DNA labeled microbeads. The surface conductance of microbeads is affected by the DNA labeling and causing the change of Clausius-Mossotti (CM) factor K of DEP. In former studies, we focused on the effect of the real part of K (Re[K]). Recently, we proposed a new DNA detection method based on the traveling wave dielectrophoresis (twDEP), which is a phenomenon mainly effected by the imaginary part of K (Im[K]), because the Im[K] will change more dramatic than Re[K] against DNA attachment on the microbeads. In this study, the velocity of DNA labeled microbeads under twDEP force was measured by computer-based image analysis.

3-136

マイクロ流体デバイスを用いた微粒子誘電泳動によるDNA検出

○松田兼弥・井田健一・丁 震昊・末廣純也・中野道彦（九州大学）

筆者らは、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅したDNAを微粒子に修飾することで生じる微粒子の誘電特性の変化を利用したDNA検出法を開発した。しかし、この手法では大きな誘電特性の変化を利用している事から修飾するDNA量が多くなってしまうという問題がある。そこで、低濃度DNAを検出するために、DNA修飾微粒子に働く負の誘電泳動力がDNA修飾量に応じて変化することに着目し、その変化を検出するためのマイクロ流体デバイスを考案した。このデバイスを用いることで負の誘電泳動力の変化を微粒子の運動軌跡の変化として観察することができる。本研究では種々の誘電泳動条件におけるDNA修飾量と蛍光信号の関係を調べた。

3-137

腫瘍細胞分離デバイスにおける流量と電界の相関検証

◎川村直弘・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）・円城寺隆治・脇坂嘉一（AFIテクノロジー）

腫瘍組織から血中に遊離した循環腫瘍細胞（Circulating Tumor Cells: CTC）の検出は、がんの転移予測及び治療効果の評価において極めて有用である。しかしながら、CTCは極微量しか存在しないため、より高精度な検出には分離濃縮工程の確立が不可欠である。 不均一電界下で誘電体微粒子を操作する誘電泳動(dielectrophoresis: DEP）法は、希少細胞の選択的分離に対する有効な手段の一つである。 著者らは、立体的な微小円柱（ピラー）を電極として用い、DEPの有効領域を増加させることで、細胞の分離効率が向上することを数値的に示してきた。本報では、血中に含まれる正常細胞と粒径が等しいCTCの分離条件を検証するために、デバイス内の流量と電界の相関を精査した。

3-138

生育期間変化時における酵母菌の誘電泳動速度と代謝状態の相関評価

◎高松 聡・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）

現在、飲食料、医薬品やバイオ燃料などの幅広い製造分野において発酵工程が用いられている。ただし、効率的な本工程の実施には、菌の代謝状態を迅速かつ簡便に常時管理できる新たな計測システムの開発が必須である(1)。 当研究グループでは、これまで細胞の誘電特性と代謝状態の直接的な相関を検証するために、加熱処理酵母の誘電泳動(Dielectrophoresis; DEP)速度計測を行った。実験結果から、細胞膜の損傷度に応じて酵母菌のDEP速度が大きく変化することが示された。 本報では、培養時間が異なる酵母菌のDEP速度と細胞内pHを測定することにより、DEP速度と代謝状態の直接的な相関を精査した。

3-139

感光性基板接合材料を用いたX線1分子動態計測用マイクロ流体デバイスの作製

森 保彰・田渕友樹・○平井義和（京都大学）・清水啓史（福井大学）・土屋智由・田畑 修（京都大学）

蛋白質の1分子構造変化と機能の関係を理解する計測手法の1つに金ナノ結晶と白色X線を用いたX線1分子動態計測法がある。これまでに我々はシリコン窒化膜のダイアフラム構造を用いた観測用チャンバを作製し、カリウムイオンチャネル蛋白質の1分子構造変化を高い解像度で測定することに成功した。今後イオンチャネルの機能を計測するためには、観測用チャンバ内の溶液濃度やpHを制御できるマイクロ流体デバイス構造が求められる。そこで本発表では、UVリソグラフィプロセス対応型感光性接着剤を用いたマイクロ流体デバイスの作製方法と動態計測における観測効率や解像度を支配するX線散乱ノイズの測定結果について報告する。

3-140

電気化学的バブル型マイクロポンプの高効率化

◎田畑慶祐・鈴木博章（筑波大学）

当研究室では、白金黒電極上での水素バブルの生成・消滅を利用したマイクロポンプの改良を重ねてきた。しかし、発生した水素バブルによる電極間抵抗の増大による動作不良が課題となっていた。本研究では中央の白金黒作用極と銀／塩化銀参照極および白金対極がジグザグ状に噛み合わさった電極構造をとるデバイスを作製し、課題の解決を試みた。0.5 M HClを電解液として用いた一定電圧印加での動作では、同じ作用極面積を有する従来型デバイスの送液・吸引性能を大きく上回る結果が得られた。また、作用極、対極から生成する反応物の他の電極への悪影響は特に認められなかった。今回作製したマイクロポンプは構造・動作が単純であることから、将来的に他の構成要素との集積化が期待される。

3-141

マイクロ流体デバイスを用いた血管網に対するペリサイトの影響の評価

◎寺岡佑佳子・Ericson Scott・梨本裕司・新宅博文・小寺秀俊・横川隆司（京都大学）・中益朗子・三浦 岳（九州大学）・花田三四郎・西山功一（熊本大学）

ペリサイトは血管網の形態や機能に影響を及ぼすとされており，各種疾患に対して，ペリサイトを標的とした治療が期待される．本研究は，ペリサイトの性質の理解のために，マイクロ流体デバイス内でペリサイトと血管内皮細胞の共培養血管網モデルを構築し，血管網に対するペリサイトの影響の評価することを目的とした．デバイス内での血管網の形成過程について，単体培養とペリサイトの共培養血管網を比較したところ，共培養血管網で血管本数の減少が見られた．共焦点顕微鏡の観察では，ペリサイトが血管内腔周囲を取り巻くように存在する様子が見られた．

3-142

マイクロチャネル内におけるATPSを用いたモータタンパク質のパターニング

◎中川倫宏・新宅博文・小寺秀俊・横川隆司（京都大学）

紡錘体は有糸分裂期の細胞において，染色体を力学的に分離する機能をもつ．紡錘体中では複数のモータタンパク質が局在し微小管を介した相互作用が働いている．In vivoにおけるこの現象をin vitroにおいて単純化した評価系を構築できれば，異種モータタンパク質がどのように力学的な相互作用を生み出しているのかを明らかにすることができる．我々はこのモータタンパク質の局在を再現したアッセイを行うために，ATPS: Aqueous Two-Phase Systemを利用したタンパク質の選択的固定を検討した．結果として，ATPSを利用したモータタンパク質の分配とグライディングアッセイが可能であることを確認した．

3-143

SOI-MEMS技術による共振型加速度センサの感度特性シミュレーション

◎劉 健男・室 英夫（千葉工業大学）

より小型、低価格化を目指して、著者らは変位検出用の櫛型電極にDC電圧を重畳することで、静電ポテンシャル中での振動において見かけ上の負のばね定数が発生することにより共振周波数が変化する共振型加速度センサについて提案を行った。本報告ではこのような共振型加速度センサについて、IntelliSuiteを用いた有限要素法及び、信号処理回路を含む総合的な解析が可能な回路モデルによるシミュレータMEMSpiceにより感度のシミュレーションの結果について述べる。

3-144

塗布型粘土絶縁膜を用いたCr-N薄膜ひずみセンサ

○丹羽英二（電磁材料研究所）・林 晋也・須貝一郎・野口幸紀（イチネンケミカルズ）

高い耐熱性、密着性、ガスバリア性ならびに基材追従性を示す金属用粘土コーティング剤「クレコート」を用いて新規無機系塗布型粘土絶縁膜の開発を行い、良好な絶縁性を確認するとともに、金属起歪体上にその絶縁膜を用いたCr-N薄膜ひずみセンサを試作し、安定なひずみ計測が可能であることを明らかにした。その絶縁膜は、簡便に形成できる低価格な絶縁膜として有望と考えられる。

3-145

モーメント検出能を有する高分解能MEMS触覚センサ

◎濱本晃輝・寺尾京平・下川房男（香川大学）・高尾英邦（JST-CREST）

触覚は定量的な評価がしづらい感覚であるため，これまで様々なデバイスや計測手法が開発されており，触覚の定量化は大きな課題となっている。 現在，当研究室では2軸の力を独立して検出することができる触覚センサが開発されており，人間の手触り感を定量化するための評価実験が行われている。センサに対する平行な力以外の成分として，接触点からのモーメントを計測できれば，力点までの距離が特定される。それにより，様々な先端部を有する触覚センサを構成するなど，設計の自由度を拡げることが可能である。 よって，2軸の力とモーメントを独立して検出可能なMEMS触覚センサを提案し，設計と製作を行った。

3-146

打撃による材料の硬さ情報取得を目指したMEMSアクティブ触覚センサ

◎宮澤賢樹・寺尾京平・下川房男（香川大学）・高尾英邦（JST-CREST）

人間は硬い物体を判別する際，指で叩くことによって発生する打撃音から経験的に判別している。この打撃音には物体のヤング率と密度の2つのパラメータが関係している。本研究では人間の指で叩く動作を模したアクチュエータとその衝撃から生じる振動を検出するセンサを集積し，その振動から音速を求め，材料の密度とヤング率といった物体の物性の関係の取得を目指す。本触覚センサは静電アクチュエータを用いた衝突部とピエゾ抵抗を含んだ振動検出部の2つの機構を持つ構成となっている。本稿では，打撃による材料の硬さ情報取得を目指したMEMSアクティブ触覚センサを新たに提案し，その製作結果について報告する。

3-147

触覚熱流センサのための薄膜サーミスタ作製

◎菅沼雄介・大橋祐也（名城大学）・佐々木 実（豊田工業大学）・野々村 裕（名城大学）

アシスタントロボットには触れたものの識別、人間との触れ合いを含めたコミュニケーション能力が求められる。触覚に温熱感を導入することで、接触材料推定が可能となる。温熱感を実現するためには熱流を測定する必要がある。そこで、温度差を能動的に発生させる薄膜ヒータと薄膜サーミスタを合わせた熱流センサを提案する。この熱流センサのためにAl-Ti-N系薄膜サーミスタを反応性スパッタリングにより成膜した。膜厚500nm、N2比率10%、成膜温度250℃で得られた赤褐色膜を熱処理し、B定数500Kのサーミスタ膜が作製できた。薄膜サーミスタの感度と膜の安定性を向上させ、薄膜ヒータと薄膜サーミスタを一体化した薄膜熱流センサの実現を目指す。

3-148

温力感センサスティックの提案と試作

◎土屋駿斗・大島慧斗（名城大学）・室山真徳（東北大学）・野々村 裕（名城大学）

ロボットに人間の神経網を模した触覚センシングシステムを実装するためLSIチップを開発している。このチップと組合せた温力感センサヘッドを提案している。センサヘッドはロボットの指先に装着し、熱流・温度・力の同時測定を可能とする。センサヘッドでの熱流測定の課題として指先と測定対象の接触面積が印加力により変化した場合、測定値に大きな影響を与えることがある。正確な熱流測定のためには接触面積を一定にする必要がある。そこでセンサヘッドの力センサ信号を用いアクチュエータで印加力制御を行う「温力感センサスティック」を新たに提案する。これにより正確な熱流測定を可能にし、熱流値より物体の材質推定を行えるようになる。

3-149

シート型せん断力センサ用測定システムの開発

◎渡辺健太・原 和裕（東京電機大学）・外山 滋（国立障害者リハビリテーションセンター）

我々がこれまでに開発してきた厚さ0.7mm、直径1cmのフレキシブルシート型せん断力センサを複数（最大4個）使用し、同時測定を可能にする測定システムを開発した。まず、測定回路として、140mm×140mm×35mmのマイコンボード搭載装置に1〜4個のせん断力センサを接続し、Bluetooth通信によりPCにデータを転送するものを開発した。センサのマルチ化はアナログマルチプレクサを使用することで実現した。電源はスマートフォン用のモバイルバッテリを使用し、これにより回路の携帯化を図った。さらに、PCのソフトとして、4chのセンサ出力を同時に表示し、ファイルに格納するものを開発した。これにより、最大4点におけるせん断力の同時計測が可能となった。

3-150

高分解能MEMS触覚センサを用いた毛髪表面の手触り感計測

◎中光孝太・綿谷一輝・寺尾京平・下川房男・高尾英邦（香川大学）

近年，触覚情報に対する関心が高まる中で、生体組織表面の手触り感を定量化することに特に高い関心が集まっている。本研究では、毛髪の手触り感に着目した。人は毛髪の手触り感を「さらさら」、「きしむ」などといった言葉でその健康状態を評価する。このような毛髪の手触り感を計測する先例はあるが、微細な構造を有する毛髪表面に対して、大きい面積で接触するため空間解像度が十分でないという問題がある。本研究では、指紋と同程度の空間解像力を有する高分解能MEMS触覚センサを用いて計測を行い、毛髪の手触り感計測について検討した。本稿において、毛髪表面の構造に由来すると考えられる計測結果について報告を行う。

3-151

触覚センサの計測時における微細凹凸表面形状と摩擦力の関係

◎綿谷一輝・寺尾京平・下川房男（香川大学）・高尾英邦（JST-CREST）

我々が開発した微細接触子を有する高分解能2軸触覚センサを用いて，1mm以下の凹凸を有する対象表面を走査し，取得した表面形状信号と摩擦力信号を比較した。その結果，表面形状信号と摩擦力信号は相互に相関があるものの，単純な比例関係ではないことが分かった。これは微細な領域での摩擦が単純に垂直荷重に依存していない可能性を示している。本稿では，微細な接触子と対象表面の相互作用を力学的に解析し，「垂直荷重」に起因する摩擦力に加えて「微細な表面形状」に起因する摩擦力の効果を明確な力学モデルとして表現した。本モデルにより，凹凸形状による影響を考慮した局所的に働く摩擦係数を算出可能となる。

3-152

高分解能触覚センサと深層学習を用いた接触対象の精密判別

◎上田剣政・綿谷一輝・寺尾京平・下川房男（香川大学）・高尾英邦（JST-CREST）

今日，人間が対象に触れた時に感じる手触り感について様々な研究がなされている。しかし，人間が脳内でどのような処理を行い，対象を評価しているかについてのメカニズムについて十分解明されているとはいえない。これまで本研究室では，対象物表面を走査した際の微小な表面凹凸と摩擦力を高解像度の信号波形で取得できる高分解能触覚センサを開発している。そこで本研究では，CNNを用いて高分解能触覚センサの信号に対する教師あり学習を行い，接触対象を高確度で識別可能なセンシング手法を新規に提案する。触覚センサ信号を取得した識別サンプルには布生地10種類を用いる。CNNでの判別を行った結果，サンプルを正しく識別した割合として83%の結果が得られた。現在，触り心地が非常に似ている対象同士の識別も試みており,より高い精度の実現を目標として評価を進めている。

3-153

ゾル・ゲルPZT薄膜の製膜熱処理工程が圧電MEMS超音波センサの感度に与える影響

◎中島将太・塩見 丈・山下 馨・野田 実（京都工芸繊維大学）

我々は空中超音波での3次元計測を目指して圧電MEMSダイアフラム型超音波センサを開発している。これまでに静的撓みをもつダイアフラムの撓み量が大きいほど高感度となることを明らかにし，ゾル・ゲルPZTの熱処理条件によってダイアフラムの撓みが変化することを報告してきた。今回はゾル・ゲルPZT製膜時の熱処理条件がセンサ感度に与える影響を評価した。その結果，仮焼成温度によりPZT膜の配向性が変化し，これによりダイアフラムの撓み量が変化することによって高感度化が可能であることが示された。

3-154

圧電マイクロ超音波センサ高感度化のための座屈ダイアフラムが出力波形に与える影響

◎西岡知記・中島将太・山下 馨・野田 実（京都工芸繊維大学）

圧電ダイアフラム型超音波センサを高感度化するために導入している座屈による静的撓みがセンサ出力に与える影響を評価した。正方形ダイアフラム，円形ダイアフラムともに撓み量が大きくなると単一の振動モードが支配的に現れた。しかし撓みの大きい正方形センサでは出力スペクトルにおいて，2つの大きなピークが現れ出力波形にうなりが生じた。一方，撓みの大きな円形センサでは出力スペクトルにおいて，単一のピークのみが出現した。以上より，撓み量の大きい円形センサでは単一の振動モードのみが出力に寄与するため出力電圧波形のうなりが消失しセンサ特性が向上する可能性が示唆された。

3-155

偏波保持ファイバの軸ずらし融着を利用した光プローブ電流センサ用光学系

◎藤城佑太・塩田健太・岩見晃希（信州大学）・久保利哉・宮本光教（シチズンファインデバイス）・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

パワーエレクトロニクスにおいて「監視」「管理」「制御」は重要技術であり，その役割を担っているのが電流センサである．現在主流な電流センサであるホール素子式電流センサは，センサ信号の伝送を電気信号で行なうため，劣悪な電磁雑音環境下では電磁ノイズが検出信号に重畳することが危惧される．筆者らは，電磁ノイズに強く，かつ温度特性の優れた電流センサの実現を目指し，強磁性薄膜のFaraday効果を利用した光プローブ電流センサを提案し，研究している．本発表では，光学系伝送経路に用いる偏波保持ファイバの軸ずらし融着を利用することで，従来よりも簡素な光学系を考案したので，その構成及び特性について報告する．

3-156

ファラデー効果光プローブ電流センサ用磁気ヨーク付きセンサヘッドの検討

◎塩田健太・藤城佑太・山崎健太（信州大学）・久保利哉・宮本光教（シチズンファインデバイス）・佐藤敏郎・曽根原 誠（信州大学）

現在，電流センサはホール素子式電流センサが主流であるが，電気ケーブルを介し信号を伝送するため伝送経路において電磁ノイズの影響を受けやすいという欠点がある．筆者らは電磁ノイズの影響を受けない電流センサとして面内磁化グラニュラー磁性薄膜のFaraday効果を利用した光プローブ電流センサの開発を進めている．面内磁化グラニュラー磁性膜に対して膜面垂直方向の電流磁界による磁化回転で発生するFaraday効果を利用するため膜面垂直方向反磁界の効果によって大電流測定に適する特徴を有する．本発表では，電流測定領域を小電流範囲に拡張することを目的に，センサヘッド部に開磁路型磁気ヨークを付与した場合の効果を実験的に検討したので報告する．

3-157

アクリル製平板型腸音センサの製作と評価

○村上裕二・谷 颯也・田村 想・磯貝優生（静岡理工科大学）

生活習慣病対策のための、食事記録補助を目的として、連続的な腸音モニタリング装置の開発を行っている。装着しやすい平板型聴診器を製作し、実際に腸音を取得することでその特性確認を進めている。アクリル板を3枚の部材に切り分け積み重ねてPETフィルムを挟み込み、マイクを装着することで平板型聴診器を得た。これとICレコーダーを合わせて食事前後の腸音を取得して評価した。とくにMATLABを用いた周波数特性から、当面の対象とすべき周波数帯域を20-500 Hz付近とみた。

3-158

単一Au錘3軸差動MEMS加速度センサの検討

◎新島宏文・乙部翔太・高安基大・山根大輔・伊藤浩之・道正志郎・石原 昇・町田克之・益 一哉（東京工業大学）・小西敏文（NTTアドバンステクノロジ）

Microelectromechanical Systems（MEMS）加速度センサの高感度化により、難病の早期発見や宇宙環境における加速度検出などの新規分野への応用が期待されている。 今回、MEMS加速度センサの更なる高感度化のため、単一Au錘を用いた3軸差動MEMS加速度センサを提案した。 提案したデバイス構造は、積層メタル構造により、X、Y、Z全軸で差動検出を可能とした。 また、提案したデバイス構造のBrownian Noise（B_N）を実験的に評価した結果、X、Y、Z全軸で100 nG/√Hz以下であり、従来のMEMS加速度センサと比較し、3桁のノイズ低減を確認した。 以上より、3軸MEMS加速度センサ高感度化の実現見通しを得た。

3-159

ランダム振動試験による圧電MEMS振動発電素子の特性評価

○村上修一（大阪産業技術研究所）・吉村 武（大阪府立大学）・金岡祐介・津田和城・佐藤和郎（大阪産業技術研究所）・神田健介（兵庫県立大学）・藤村紀文（大阪府立大学）

我々はBiFeO3(BFO)などの強誘電体薄膜を搭載した片持ち梁構造の圧電型振動発電素子を試作し、評価を行ってきた。さらに、MEMS微細加工技術を活用することにより、素子の小型化と共振周波数の低減化の両立を図ってきた。これまでは発電特性を評価する際、正弦波振動を用いて掃引振動試験を実施してきたが、本研究では、Pb(Zr,Ti)O3 (PZT)圧電体薄膜を搭載した片持ち梁構造のユニモルフ型振動発電素子を使って、ランダム振動試験を行った。片持ち梁の振動特性や出力電圧のパワースペクトル密度(PSD)から、ソフトスプリング型の非線形共振現象が見出されるなど、新しい知見が得られたので報告する。

3-160

結晶Seを用いたヘテロ接合フォトダイオードの光応答性へのデバイス作製条件の影響

◎足立悠輔・小林大造（立命館大学）

結晶セレン(Se)は可視光波長域で高い光吸収係数を示すp形半導体であり、比較的低い外部電圧（約3V）の印加により電子なだれ増倍現象を利用した高い光信号電流が得られることからカラーセンサやイメージセンサ応用のための有望材料の一つである。また、200℃以下の薄膜形成プロセスでデバイス作製が可能であることと、原料が安価なこともセンサ材料として魅力である。将来的には、面内光分布の計測や分光技術と組み合わせた多波長の一括計測などの応用展開も期待できる。本稿ではSe光吸収層膜厚およびn形層材料の変化による結晶Seフォトダイオードの光応答改善の効果を調べた。

3-161

圧電バイモルフ・アレイを用いた自立式振動センサの特性検討

◎林 数馬・室 英夫（千葉工業大学）

過去に著者らは振動を発電に活かす共振周波数の異なる片持ち梁構造の圧電バイモルフ・アレイを用いた振動センサについての研究を行い、その有効性を検討した。但し、電源となる整流電圧は共振ピークによる変動が大きく、用途によってはより平均な電源電圧が要求される。そこで本研究では、この振動センサについて回路シミュレータをベースとしたMEMSpiceを用いて特性のシミュレーション検討を行った。その結果、結合子をつけることで共振において隣接する素子も駆動され、共振ピークが低減する特性が得られた。また、結合子を厚くすることにより整流電圧Vdの共振によるピークは高周波側に徐々にシフトし低下していく結果となった。

3-162

温感センシングシステムによる睡眠時の体表面温度測定

◎柴尾 純・菅沼雄介（名城大学）・室山真徳（東北大学）・野々村 裕（名城大学）

神経網型センシングシステムを用いた睡眠状態測定法を提案する。生活リズムの乱れ、ストレスによる睡眠障害が問題となっているため、初期段階において睡眠状態を把握することが求められている。睡眠の状態を見る方法として深部体温と末端皮膚温度の測定がある。末端皮膚温度として、手の温度を測定する。基礎研究として、熱電対を用いた睡眠時の体表面温度を測定した。その結果、入眠してから深部温度が低下し末端温度が上昇するという、末端皮膚温度と深部温度の相対的な温度変化が取得できた。これにより、入眠推定が可能であると考えられる。提案する神経網型センシングシステムを用い睡眠時の体表面温度を測定し、有効性を求めてゆく。

3-163

ポリビニルアルコールを用いた逆オパール型フォトニック結晶

◎木村大樹・村上弘明・小森雄仁・小野寺 武（九州大学）

近年, 化学物質の検出を視覚的に行う手法として, 安価で作成可能なフォトニック結晶を用いた方法が検討されている。なかでも逆オパール型フォトニック結晶(IOPC)は, 高空隙かつ高比表面積であるため, 気体が吸着しやすい。この結晶中に水蒸気が浸透することでおこる屈折率や構造の変化によるスペクトルの変化を読み取ることで検出する。本研究では, co-assembly methodによるIOPCをポリビニルアルコール(PVA)で作製する際の適切なPVA濃度を決定し, 作製したIOPCに水蒸気を暴露することで発生する反射スペクトルの推移を分光器で読み取り水蒸気の検出を行った。

3-164

分子インプリントゾルゲル法による爆薬マーカー認識膜の開発

◎陳 燦思・杉 麟太郎・矢田部 塁・小野寺 武・都甲 潔（九州大学）

当研究が目指しているのは，分子インプリント法を基づいて，高感度的迅速な爆薬マーカージメチルジニトロブタン（DMNB）の認識膜を開発することである．このような膜を備えた匂いセンサが実用化されれば，低コストで小型な爆発物探知装置に応用されることが期待される．分子インプリント法とは鋳型分子を可逆的な化学相互作用可能な機能性モノマーと複合体を形成し，架橋剤存在下で重合することで，複合体を取り込んだ状態で架橋高分子が合成される，最後に，鋳型分子を抽出すれば，特異的に目的分子を捕捉できる認識サイトが得られる．本研究では，分子インプリントゾルゲル法により，DMNB認識膜の開発を行った．

3-165

匂い強度を短時間で増幅する装置の基礎的研究―流量調整による匂い濃縮倍率の向上―

◎塚田鷹介・河合拓実（東京農工大学）・松倉 悠（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）

本研究では周囲に漂っている匂いを濃縮して人間の鼻に提示し、嗅覚の感度を疑似的に増幅する装置を開発する。匂い物質を吸着剤に通すことで匂いを吸着して蓄え、ヒータにより吸着剤を加熱し、蓄えられた匂い物質を一気に脱着して高濃度の匂いを得る。匂い物質の吸着時は、装置内に吸引する空気の流量が大きいほど、短時間で匂い物質を吸着できる。一方で、脱着時は空気流の流量が小さいほど、脱着された匂い物質の希釈を抑えられる。これまではそれぞれに適した流量を設定できなかったため、吸着時と脱着時で流量を切り替えられるように流路を改良した。脱着時の流量を減らして匂い濃縮倍率の向上を図った結果、4.0倍から9.2倍に向上した。

3-166

濾紙による簡便な唾液採取を特徴とした唾液中尿酸計測システム

◎池本有輝・高木優樹・工藤寛之（明治大学）

濾紙による簡便な唾液採取を特徴とした唾液中尿酸計測システムを開発し、基礎特性評価を行った。ポリエチレンテレフタラート上にカーボングラファイト電極をパターン形成し、オスミウム錯体を用いた反応系と尿酸酸化酵素のウリカーゼを固定化することで尿酸センサを作製した。唾液の主成分である尿酸、グルコース、クレアチニン、乳酸をセンサに導入した際の出力応答を比較した結果、十分な選択性が得られた。また尿酸溶液に濾紙を浸漬しデバイスに挿入した結果、10µMから400µMの尿酸濃度に応じた出力電流が得られた。このデバイスを用いて唾液中尿酸量を計測したところ130µMであると推定されたため、本システムでの健常者の簡便な唾液中尿酸値の評価が可能であると考えられる。

3-167

傾斜を用いた1mG MEMS加速度センサの分解能評価の検討

◎高安基大・古賀達也・辻 一平・伊藤浩之・山根大輔・道正志郎（東京工業大学）・小西敏文（NTTアドバンステクノロジ）・石原 昇・町田克之・益 一哉（東京工業大学）

Microelectromechanical systems (MEMS) 加速度センサの分解能は、加振機を用いて評価される。加振機が印加できる加速度は通常10 mG (1 G = 9.8 m/s²)以上であるため、1 mG以下の加速度による評価は困難である。そこで本研究では、傾斜による評価に着目し、1 mG以下の分解能を有するMEMS加速度センサに対して本方法により性能を評価した。傾斜による評価系を提案し、1 mG以下の加速度を印加できることを理論的に解析した。提案した評価系にMEMS加速度センサを設置して1 mG以下の加速度を印加し測定した時、MEMS加速度センサの容量が変化し、加速度を検知していることを確認した。傾斜を用いた評価系により、MEMS加速度センサに1 mG以下の加速度を印加し、分解能を評価できることを示した。

3-168

金ナノ粒子の三次元アセンブリにおける交流電気浸透流の影響

◎中河原僚介・内田 諭（首都大学東京）・澁谷泰一・西川宏之（芝浦工業大学）

近年、ナノ粒子アセンブリによる新規デバイスの開発が注目されている。金ナノ粒子を二次元的に集積した構造は温度センサ、三次元的に積層した構造はバイオセンサとして利用される。 著者らはアセンブリ技術の確立を目途として、ピット型誘電泳動デバイスを利用した金ナノ粒子アセンブリにおける粒子の挙動解析を行ってきた。しかしながら、本解析では実験で確認されたピット底への粒子積層が生じなかった。本積層の詳細なメカニズムは解明されていないが、未考慮だった交流電気浸透による粒子輸送の可能性が考えられる。 そこで本報では、デバイス内の交流電気浸透流を考慮した粒子挙動の解析を行った。

3-169

相乗動電効果による金ナノ粒子の効率的三次元アセンブリ

◎丸山大貴・内田 諭（首都大学東京）・澁谷泰一・西川宏之（芝浦工業大学）

金属ナノ粒子は高い反応性や活性度を有するため、触媒として利用できる。そのため、ナノ粒子を用いた機能性デバイスの開発が期待されている。しかしながら、デバイスへの実装には、ナノ粒子の精密操作方法の確立が必要不可欠である。 近年、上記操作方法の一つとして誘電泳動法 (dielectrophoresis: DEP)が注目されている。本研究グループでは、金属ナノ粒子をマイクロアレイ状に集積可能な三次元ピット型DEPデバイスを試作している。本報では、同デバイスにおいて、DCオフセットによる電気泳動(electrophoresis: EP)を併用した、効果的な金コロイド粒子の堆積を検証した。

3-170

PM2.5センサー向けレーザーのオートパワーコントロール用フロントモニタの検討

◎中原彰太・岡垣 覚・中井賢也・榎 望・竹下伸夫（三菱電機）

PM2.5を高精度に測定可能な光散乱方式のPM2.5センサーを開発した。センサーの安定動作と長期観測の実現のため、レーザー光源のAPCを行うフロントモニタ用受光素子を搭載した光吸収部に汚れが付着しても、不要な迷光が増加しない構造を考案し、検証を行った。フロントモニタ用受光素子を傾けて配置することで、迷光を光吸収部内で減衰させる構造を考案した。PM2.5濃度を変化させた場合のフロントモニタの出力値を測定し、APC駆動が可能であることを確認した。また、考案した光吸収部により、汚れが付着した場合でも迷光の増加を抑制できることを確認した。

3-171

P(VDF/TrFE)薄膜を用いた高周波型MEMS超音波センサの開発

○田中恒久・村上修一・宇野真由美・佐藤和郎（大阪産業技術研究所）

空中超音波センサを用いれば物体形状の非破壊測定が可能である。物体計測時に空間分解能を向上させるために超音波センサの高周波化が求められている。今回は超音波センサの高周波化の課題に対応するために、超音波センサ構造の改良を行い、共振周波数200kHz級の超音波センサの開発を行ったので報告する。異なるダイアフラム構造のセンサを3種類設計し、受信感度と共振周波数を測定し、最適な構造を探索した。試作実験の結果、共振周波数が200kHz付近にあり、かつ受信感度が良好なMEMS超音波センサの作製に成功した。

3-172

光学式センサによる軟性内視鏡手術下での腹腔内圧力モニタリングに向けた動物実験

◎前田祐作・森 宏仁・中川智明・高尾英邦（香川大学）

近年，医療分野において，手術や検査などの低侵襲化が進められている。その中で，軟性内視鏡を口などの開口部から挿入し腹腔内で治療および検査を行う手法であるNOTESに関して有効性が高まりつつある。NOTESでは，視界確保を目的とした送気を腹腔内へ行うが，その圧力の定量的な測定は実現されていないため，腫瘍サイズ診断における誤診や，過送気による術後の裂傷などが発生する問題がある。これまで我々は電気式のMEMS圧力センサの内視鏡応用に向けて，動物実験などによる検証を行ってきた。さらに，内視鏡に既存である高解像度カメラを利用することで，一切の配線を不要とする光学式圧力センサを開発してきた。本研究では，光学式センサの有効性検証のため，豚切除胃内の圧力計測を実施した結果について報告する。

3-173

針状接触子を有する2軸触覚センサによるサブミクロン領域の手触り感計測

◎中島 翼・綿谷一輝・寺尾京平・下川房男（香川大学）・高尾英邦（JST-CREST）

人間の指先は1ミクロンほどの表面粗さを識別できると言われている。熟練した職人は部品の接合部や金型のようなサブミクロンレベルの表面仕上げの評価を実際に自分の指先で触ることで行っている。光学計測では接触面の摩擦情報を取得することができないため，職人同様の手触り感を取得するには，空間解像力の高い触覚センサで表面を直接計測する必要がある。そこで，我々が製作している針状接触子を有する2軸触覚センサを用いて，表面仕上げの施された金属表面の計測実験を行い，サブミクロン領域における手触り感計測の可能性を検討した。本稿ではその結果について報告する。

3-174

フッ素エラストマを用いたMEMS触覚センサの耐水性向上

◎佐藤周平・安部 隆・寒川雅之（新潟大学）

本研究では、MEMS触覚センサの液中および湿潤状態での使用へ向けてセンサの耐水性の向上を目指した。従来から用いていたPDMSと耐水性に優れるフッ素エラストマを用いたセンサをそれぞれ作製し、浸漬時における荷重印加試験を行い、結果を比較した。その結果、PDMSでは浸漬時に大きなノイズが見られたのに対して、フッ素エラストマでは浸漬前後でのセンサ応答に大きな変化が見られなかった。PDMSで見られたノイズは水の透過によって起った短絡が原因と考えられるがフッ素エラストマを用いた場合ではこのようなノイズが一切見られず、センサの耐水性が向上したといえる。これにより液中や湿潤環境での本センサでの測定が可能となり、本センサの様々な環境での応用が期待できる。

3-175

バイオセンサの高度集積化技術に関する基礎研究

◎浜地凌平・刀根健冴・渡邊裕樹・吉田雄貴・市原勲己・龍神康大・礒田隆聡（北九州市立大学）

本研究では、基板上に複数集積化したケミカルセンサを連続的に計測できる集積化センサの開発を目的としている。そこで基板上の電極を可能な限り最小にし、かつその電極群がどれも同じ応答を示すようにするため、設計法、作製方法の検討を行った。このような集積化により、極少量の試料で、かつ1度の測定から大量のデータの収集が可能となる。

3-176

バイオセンサの集積化法の開発と多項目検査技術への応用

○龍神康大・浜地遼平・渡邊裕樹・刀根健冴・吉田雄貴・市原勲己・礒田隆聡（北九州市立大学）

筆者はこれまでに、錯体の電気化学特性を利用したタンパクの高感度検出法を開発している。これは電極表面にタンパク分子が吸着すると電気抵抗となって電極間の導電率が減少する性質を利用したものである。本研究では、このようなバイオセンサを微小化して基板上に多数配置するためMEMS技術と、これに酵素を集積化する方法を開発した。

3-177

抗原抗体シートによる腫瘍マーカーのセンシングとモバイルセンサへの利用

◎市原勲己・刀根健冴・浜地凌平・渡邊裕樹・吉田雄貴・龍神康大・礒田隆聡（北九州市立大学）

抗原抗体反応検査は、医療検査やバイオ研究で日常的に使用されている。既存の方法である酵素結合免疫測定（ELISA法）は、特定のタンパクに特定の抗体が反応する性質を利用して、混合物試料中の抗原量を正確に分析する方法である。これは検査対象の抗原がpg/mlからng/mlの濃度レベルで検査できる。このようにELISA法は検出感度の高い生体検出系である。一方、結果を得るまでに数時間以上必要であり、また検出器が据え置き型のため、持ち運びできないという課題点がある。そこで本研究では、モバイルセンサを用いて、短時間で検出可能な抗原抗体反応のスクリーニング検査法を開発した。

3-178

酵素センサ測定法の開発と食品鮮度検査への応用

○渡邊裕樹・刀根健冴・浜地凌平・吉田雄貴・市原勲己・龍神康大・礒田隆聡（北九州市立大学）

本研究では酵素を吸着させたシートを用いて、これを化学反応で発色させて溶液の吸光度を測定する既存法と、センサ電極上で酸化還元反応で検出を行うセンサ測定法の2つの方法を比較し、センサ測定法の優位点について調査研究を行った。

3-179

MIP蛍光マイクロビーズフィルムによる匂い可視化とガス応答特性評価

◎呉 双宏・上野翔太・吉岡大貴・佐々文洋・林 健司（九州大学）

人間の5感の1つとして嗅覚は重要な情報源ではあるが、視覚と聴覚センサー技術と比べ、匂いセンサーの開発は未だ発展の途上にある。匂い物質の空間分布を直接検出する匂い可視化は、匂いを目に見えないガスの広がりや、匂い痕跡の形状を取得する技術である。本研究では蛍光色素含有MIPマイクロビーズを用いた、匂い可視化フィルムを開発した。フィルムはガス暴露後の最初の10秒間で、著しい蛍光増光を示した。その後、ガス暴露時間の経過に伴って、フィルムの蛍光はすぐ増加し一定値に達した。フィルム上のMIP蛍光マイクロビーズが鋳型分子に対しての匂いガスに応答し、結果特異的ガス可視化センサフィルムとして用いることを確認した。

3-180

分子フィルタを用いたSERSガスセンサの開発

◎下見慶太・李 景韶・佐々文洋・林 健司（九州大学）

SERSやLSPRなどのプラズモン現象を用いるガスセンサは高速な応答性を示すが、分子選択性を持たない。そこでセンサ基板上に分子認識ポリマー薄膜を形成し、ガス応答測定によるフィルタ機構の分析を行った。LSPRとSERSでの検知領域の違いによってポリマー薄膜内にガス分子が拡散していくことを確認した。このことにより分子フィルタを用いたSERS基板への選択性の付与が可能であることが示唆された。

3-181

色素・有機薄膜を持つLSPRガスセンサの開発

○中井雄太郎・佐々文洋・林 健司（九州大学）

現在の主流なガスセンサは半導体ガスセンサであるがこのセンサの応答に要する時間は数十秒程度でありリアルタイムな測定には不向きである．そこで我々は金ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴を用いたガスセンサに着目した．このセンサは応答に要する時間が一秒程度と非常に高速であるが感度とガスの選択性が実用化には不十分である．そこで今回この二つを向上させるために色素とのカップリングをセンサ原理に組み込んだ．またガス流入による応答の更なる向上のために金ナノ粒子と色素との距離を変化させる有機層を挿入した．その結果エタノールに対する応答は従来の金ナノ粒子を用いたガスセンサの十倍以上の感度を示した．

3-182

移動ロボット用LSPR高速ガスセンサの開発

◎楊 中元・佐々文洋・林 健司（九州大学）

従来の半導体ガスセンサは数十秒程度と反応速度が遅く、これが匂い源追跡ロボットの動作速度を制限する主な要因となっている。一方、Auナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴を利用したLSPRガスセンサは、周囲媒質(匂い分子)の誘電特性の変化に対してミリ秒オーダーの迅速な応答を示す。試作したAuNPs-LSPRフィルムから作製されたセンサはのエタノールガスと空気の切り替え暴露実験において8Hzまで追従した。更に、上記のセンサをモジュール化しロボットに搭載したところ、地面に敷設したガス源を150 mm/sで通過した時、市販品の半導体ガスセンサと比べ、正確にガス源の位置を検知した。

3-183

能動化学センシングシステム開発に向けた噴流による化学物質の引き寄せ効果の調査

◎石田華子・竹村龍一（東京農工大学）・松倉 悠（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）

化学物質を辿って発生源を探索するロボットの開発を目指し、匂いを辿って餌を探すザリガニの行動に着目している。ザリガニは顎脚を振って噴流を作り、匂いを引き寄せて感知できると言われている。また、餌を探索して自由に歩行している際には、適応的に噴流の方向を変え、効率良く匂いを集めている可能性がある。ザリガニをモデル化した装置を転回させ、転回中も両側に噴流を放出した場合と、転回方向とは逆側のみに放出した場合で、転回先にある化学物質の検出時刻を測定した。その結果、ザリガニと同様に、転回中に転回方向とは逆側のみに噴流を放出することで、転回先にある化学物質を撒き散らすことなく、早く引き寄せられることが示された。

3-184

自由対流圏における水銀挙動測定システム（Ⅱ）

○野田和俊・兼保直樹（産業技術総合研究所）

主に大陸からの影響を測定するため、近傍のローカル発生源の影響を受けにくい2000m以上の自由対流圏高度での水銀汚染状況の通年観測を2016年から開始した。その結果、旧富士山測候所において通年観測可能な金電極素子QCMによるセンサユニットを活用した水銀測定システムの正常測定が確認できた。

3-185

常温動作可能なH₂ガスセンサ

○高橋拓也・山口富治・原 和裕（東京電機大学）

本研究では、光触媒作用を用いた金属酸化物半導体ガスセンサを作製し、ヒーターの代わりに、安価な光源である市販のLEDを用いて、室温で水素(H ₂)ガスを検出するセンサの開発を行なった。センサ膜の材料として光触媒作用を有し、H ₂に対して感度が高いことが報告されている酸化タングステン(WO ₃)を採用し、触媒として同じくH ₂ガスに対して増感作用が報告されている白金(Pt)およびパラジウム(Pd)、銀(Ag)を添加した。その結果、センサに照射する光源が赤色、青色、紫色の3色のとき、アンモニア(NH ₃)等の工業用途で使用されるガスに対して感度を示さず、室温でH ₂に対して高い選択性を有し、1000[ppm]の濃度で検知可能なセンサの開発に成功した。

3-186

スパッタ成長ZnO単結晶層の水素ガス応答に関する検討

○藤川明日香・安藤 毅・信太智貴・小倉康平・久米井俊哉・水野 愛・篠田宏之・六倉信喜（東京電機大学）

本研究では，高感度なH2ガスセンシングを目的として，ZnO単結晶層を用いた半導体式ガスセンサを作製し，H2ガス濃度や動作温度に対する感度特性の検討を行った。センサ材料には，超高真空マグネトロンスパッタリング法により，Al2O3基板上にエピタキシャル成長したZnO単結晶層を用いた。その結果，動作温度300 ℃，H2ガス濃度0.1 %で充分な感度が確認できた。また，高温条件ほど感度の向上が見られたため，今後さらに高温での検討を行うことにより，10 ppm程度における応答も可能であると考えられる。

3-187

弾性表面波霧化器を用いた嗅覚ディスプレイによる仮想匂い源の探知

◎長坂 亮・中本高道（東京工業大学）

近年バーチャルリアリティ(VR)に嗅覚情報を利用する研究がなされてきた。筆者らは弾性表面波(Surface Acoustic Wave: SAW)デバイスを用いた嗅覚ディスプレイの開発を行ってきたが、VRへの応用事例はまだ数少ない。 そこで本研究では、嗅覚ディスプレイの制御方法を検討し、VR空間内における匂い源探知への応用を目指した。特に、VRでの嗅覚提示において重要の要素の一つである匂いの強弱の表現について検討した。 結果、5人中4人がVR上での仮想的な匂い源の探知に成功し、VR上での匂い源探知の可能性が示唆された。

3-188

SAW霧化器を用いた嗅覚ディスプレイの残香低減手法

◎セキケイヘイ・中本高道（東京工業大学）

嗅覚情報と視覚、聴覚情報との融合は、現在、ゲーム、映画、特にVRコンテンツの発展により期待されている。我々は弾性表面波（Surface Acoustic Wave: SAW）霧化器によって香りの提示を行う嗅覚ディスプレイを提案した。本研究では、SAW霧化器における残香の低減手法を提案する。残香の原因の一つは霧化の不完全性にあると考えられる。そこで、霧化効率を向上させることにより、残香問題の改善を図る。そこで、均一な撥油撥水性膜をSAWデバイスに塗布し、その表面特性を改善させることで、霧化の効率を向上させることができた。しかも、官能実験を行い、実際に残香を低減させることが確認した。

3-189

細胞蛍光画像解析による匂い識別の検討

◎祐川侑司・中本高道（東京工業大学）

匂い濃度変化に対し蛍光強度変化として応答する細胞センサを複数種類，多数配置したセンサアレイ蛍光画像の時間変化を観測し，その応答パターンから匂い分子の識別可能性を検討した。応答パターンの解析には主成分分析を利用し，匂い分子ごとのパターンの差異が主成分軸にデータの分散として現れることを確認した。さらにその主成分軸に対応する因子負荷量と，各画素の応答強度変化の関係を調べることで，画像内における嗅覚受容体の分布に起因する応答パターンが主成分分析により確かに抽出されていることを確認した。適切な識別アルゴリズムを実現できれば画像パターンによる匂い識別が可能であると示唆された。

3-190

液滴射出型電磁弁とヒーターを用いた匂い発生装置の開発

◎横式康史・伊藤史織・Ha Nguyen・中本高道（東京工業大学）

筆者らが提案した匂いの記録再生システムでは， i)匂いを任意の濃度で供給することができ， ii)圧力をかけてもリークしない装置が必要となる．匂いの供給方法として，瓶のヘッドスペースを利用する方法があるが，匂い濃度の調整が難しい．そこで本研究では，パルス印加で液滴を射出可能な高速電磁弁とヒーターを組み合わせ，加圧可能な匂い発生装置を提案する．発生させる匂いの濃度は液滴の数と射出周期を変更することで，制御可能であり，PCから設定可能である．本装置を用いてエタノールの出力濃度を計測する実験を行ったところ，11000ppmの濃度であることが分かった．将来的には，複数の匂いを調合できるようにする他，匂いセンシングシステムによる混合臭の計測に使用する予定である．

3-191

Comparison of Autoencoder with NMF to Explore Odor Components for Odor Reproduction Using Mass Spectrometry

◎DANI PRASETYAWAN・Takamichi Nakamoto（Tokyo Institute of Technology）

Odor reproduction enables us to create odor based on sensed odor. It could be done by blending odor components to approximate target odor with the created one as close as possible. Therefore, it is essential to find an appropriate set of odor components for reproducing odor with the minimum number of odor to cover wide range of odors. Mass spectrometry data of 185 essential oils were collected. NMF and autoencoder were used to extract odor component. Increasing number of basis vectors in NMF and hidden neurons in autoencoder affects in increasing similarity between original data and reconstructed data.