情報処理学会第87回全国大会 会期:2025年3月13日~15日 会場:立命館大学

革新的アルゴリズム基盤の構築に向けて:研究成果と今後の展望

日時:2025/3/13(木) 12:40-15:10

会場:第6イベント会場

【セッション概要】アルゴリズムの理論と技法の研究分野において、2020年秋から始まった科研費・学術変革領域(A)「社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化」(AFSAプロジェクト)は、4年半にわたり活発な研究活動が展開され、本年3月をもって研究期間が終了する。本シンポジウムでは、同プロジェクトにおけるこれまでの取り組みを報告するとともに、プロジェクトにより得られた特徴的な研究成果、および本プロジェクト関連メンバーを中心に新たに立ち上がったプロジェクトの紹介を行うことにより、関連する研究者・技術者の方々に、これからのアルゴリズム研究の方向性等について議論する場を提供する。

司会

小野 廣隆(名古屋大学大学院情報学研究科 教授)

小野 廣隆

【略歴】2002年京都大学情報学研究科数理工学専攻修了,博士(情報学),九州大学大学院システム情報科学研究院・助教,経済学研究院・准教授を経て,2017年より名古屋大学大学院情報学研究科教授.情報処理学会山下記念研究賞等受賞.2024~025年度アルゴリズム研究会主査.

12:40-12:55 講演(1) 学変(A)「アルゴリズム基盤」(AFSAプロジェクト)の概要とこれまでの取り組み

湊 真一(京都大学 大学院情報学研究科 コンピュータアルゴリズム研究室 教授)

湊 真一

【講演概要】アルゴリズムの理論と技法の研究分野において、2020年秋から始まった科研費・学術変革領域(A)「社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化」(通称・AFSAプロジェクト)は、約4年半にわたり活発な研究活動が展開され、本年3月をもって研究期間が終了する。本講演では、AFSAプロジェクトが目指してきたビジョンや目標、組織体制などの概要を紹介するとともに、これまでの取り組みとその結果として得られた特徴的な研究成果、および本研究領域の今後の展望について述べる。

【略歴】1988年 京大工学部情報工学科卒,1990同大学院 修士,1995同博士(社会人)了.博士(工学).1990~2004年 NTT研究所に勤務.2004年 北大情報科学研究科 助教授,2010年 同教授.2018年 京大情報学研究科 教授(現職).2009~2015年 JST ERATO湊離散構造処理系プロジェクト 研究総括.2020年より科研・学術変革(A)「アルゴリズム基盤」領域代表.情報処理学会フェロー,電子情報通信学会,IEEE 各シニア会員,人工知能学会,日本計算機統計学会 各会員.

12:55-13:20 講演(2) 新規プロジェクト紹介(ASPIRE)(仮)

河原林 健一(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 教授)

河原林 健一

【略歴】1998年慶応大学理工学部卒,2001年慶応大学理工学研究科後記博士課程終了(理学博士).2003年東北大学情報科学研究科助手,2006年国立情報学研究所助教授,2009年より同教授,2019年より同副所長.現在ビッグデータ数理国際センター長,およびJST ACT-X「数理・情報のフロンティア」の総括.離散数学,アルゴリズム,理論計算機科学からAI,データマイニングの研究に従事.2008年度IBM科学賞,2012年度日本学術振興会賞,日本学士院学術奨励賞.SODA’13 Best paper、2021年Fulkerson Prize.JST GSC「情報科学の達人」コーディネータ

13:20-13:45 講演(3) 新規プロジェクト紹介(基盤S)

ルガル フランソワ(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)

ルガル フランソワ

【講演概要】本講演では、新規プロジェクト「基盤研究S:中規模量子コンピュータによるセキュアな分散型量子計算の基盤創出(研究期間:2024年度~2028年度)」を紹介する。近年の量子デバイスの開発における劇的な進歩の結果として、中規模の誤り耐性型量子コンピュータ(以下、中規模量子コンピュータと呼ぶ)は次の10~15年で利用可能になると期待される。計算資源(量子ビット数など)が限られているため、量子コンピュータを通常のコンピュータで補助するシステム、あるいは複数台の量子コンピュータを接続した分散型システムの導入が不可欠となるが、その構築方法と活用方法はほとんど未開拓である。この新規プロジェクトでは、中規模量子コンピュータの潜在的能力を最大限に活かすため、中規模量子コンピュータによる分散型量子計算の基盤を創出する。中規模量子コンピュータで実現可能な、量子的にセキュアなプロトコルを設計し、量子優位性(すなわち、量子コンピュータがスーパーコンピュータよりも速く問題を解決できること)を厳密に裏付けることにより、中規模量子コンピュータの活用方法を開拓し、10~15年後で利用可能な量子アルゴリズムの開発を先駆する。

【略歴】2006年東京大学大学院情報理工学系研究科博士後期課程修了。2006年JST ERATO-SORST量子情報システムアーキテクチャ研究員。2009年東京大学大学院情報理工学系研究科特任講師。2012年東京大学大学院情報理工学系研究科特任准教授。2016年京都大学大学院情報学研究科特定准教授。2019年名古屋大学大学院多元数理科学研究科准教授、2022年教授。理論計算機科学、特に量子アルゴリズムの研究に従事。

13:45-14:00 休憩

14:00-14:25 講演(4) 量子計算機と古典計算機の協調利用の枠組みを開発するCRESTの研究プロジェクトの紹介

山下 茂(立命館大学情報理工学部 情報理工学部 教授)

山下 茂

【講演概要】JST・戦略的創造研究推進事業(CREST)の[量子フロンティア] 量⼦・古典の異分野融合による共創型フロンティアの開拓の領域で,2024年に採択された「古典計算との協調利用による誤り耐性量子計算機の利用方法の開拓」という課題名の研究プロジェクトの内容について紹介する.

【略歴】1995年京都大学大学院修士課程修了.情報学博士(京大).日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所・研究員,2000年科学技術振興事業団今井量子計算機構プロジェクト研究員(兼務), 奈良先端大・情報科学研究科・助教授を経て2009年より立命館大学教授.2020年 ミュンヘン工科大Global Visiting Professor,2012年国立情報学研究所・客員教授等.IEEE Transactions on CAD Best Paper Award,丸文学術賞,情報処理学会山下記念研究賞等受賞.

14:25-14:50 講演(5) 新規プロジェクト紹介(CRONOS)

泉 泰介(大阪大学大学院情報科学研究科 大学院情報科学研究科 准教授)

泉 泰介

【講演概要】2024年度より開始されたJSTの新たなファンディングプログラム「情報通信科学・イノベーション基盤創出(CRONOS)」において採択された研究課題である「公正な割り当て・合意を自律分散的に達成する計算技法の開発」について,その研究の目指すところを説明する.また,本計画がターゲットとする2つのテーマ「公正な計算」「自律分散系」について,どのような課題があり,またそれらに対してどのような技術的アプローチが可能であるかを,アルゴリズム理論の観点およびAFSAに連なる研究計画の一つとしての立場から述べる.

【略歴】大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻准教授.2006年3月大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了(情報科学).2006年10月~2009年3月名古屋工業大学助教,2009年4月~2020年9月准教授,2020年10月より現職.専門は理論計算機科学,特に分散システムのためのアルゴリズム理論.

14:50-15:10 クロージング