情報処理学会第86回全国大会 会期:2024年3月15日~17日 会場:神奈川大学

PWS Meetup 2024 : パーソナルデータの適切な利活用に向けたオープンコンペと学際的活動

日時:3月16日 12:40-15:10

会場:第3イベント会場

【セッション概要】コンピュータセキュリティ研究会(CSEC)では、データの適切な保護と活用の両立に向けた取り組みとして『プライバシーワークショップ(PWS)』を2015年から開催しています。関連する研究開発の発展や人材育成のため、例えば匿名化技術を攻防戦の形で競うコンペを毎年実施しており、今年は初の国際コンペを実施しました。また毎年3月には当年度の活動の総括と今後に向けた議論の場として、講演やチュートリアルなどを行うPWS Meetupを開催しています。PWSはセキュリティ、プライバシー、統計、機械学習・AI、医療情報、法律など様々な分野の専門家が参加している学際的なコミュニティです。ご興味ありましたら、今回で2度目となるPWS Meetup in 全国大会にぜひお越しください。

司会

黒政 敦史(データ社会推進協議会)

準備中

12:40-13:00 講演(1) 国内初の国際匿名化コンペ iPWS Cup 開催報告

菊池 浩明(明治大学 総合数理学部 教授)

菊池 浩明

【講演概要】2023年8月に,データ匿名化技術を競う国際コンペティション,iPWS Cup 2023を情報セキュリティ大学院大学にて開催した.会議には,スペイン,フランス,台湾,中国などから10チームが参加し,糖尿病に関するヘルスケアデータの有用性を損なわないように安全に加工すること,そして,互いのデータのレコード再識別が試みられた.本コンペティションの規則,主要な加工方法,結果について報告する.

【略歴】1990年明治大学大学院博士前期課程修了.(株)富士通研究所,東海大学を経て,
2013年より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科教授.
2018年一般社団法人 JPCERT コーディネーションセンター代表理事.
2010年度,2017年度情報処理学会JIP Outstanding Paper Award.
情報処理学会フェロー.

13:00-13:40 基調講演(1) データ合成やAIを活用した匿名化と法制度

美馬 正司(日立コンサルティング ディレクター/慶応義塾大学 政策・メディア研究科 特任教授)

美馬 正司

【講演概要】合成データの活用が注目されているが、法的な整理が十分でないことも踏まえ海外と比較して国内での活用が進んでいないように見受けられる。そこで、現状の合成データの生成のスキーム等を踏まえつつ、法制度面での扱いについて検討し、整理を試みる。

【略歴】シンクタンク等を経て、2007年から日立コンサルティングに入社。情報大航海プロジェクト等、国の大規模プロジェクトのプロジェクトマネジメントを経験するとともに、プライバシー、AI倫理、ELSI等に関するコンサルティングを展開。

13:40-14:20 基調講演(2) プライバシー保護合成データの実用に向けた、データ活用の現場から見た課題

波多野 卓磨(日鉄ソリューションズ 技術本部システム研究開発センター 主務研究員)

波多野 卓磨

【講演概要】個人情報の保護と活用を両立するプライバシー強化技術の中でも、特に元の個人データの構造や統計的な特徴を保持して生成される「プライバシー保護合成データ」は、有用性・安全性を高いレベルで実現し得るものとして期待され、海外ではヘルスケア領域での活用事例が報告されている。一方で、合成データの法的な位置づけや利活用シーンが不明瞭であること、合成データ作成の標準的な技術が確立していないこと、などの課題が存在し、これらは国内での普及の阻害要因となっている。本講演ではプライバシー保護合成データの概要と現状課題について調査した結果を報告する。

【略歴】2015年日鉄ソリューションズに入社し、以降プライバシー保護に関する研究開発と実現場適用に従事。医療・製薬領域を中心に、匿名加工業務の設計・実行支援を多数実施。2017年より情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会プライバシーワークショップが主催する匿名加工・再識別コンテストPWS Cupの運営委員を担当中。2023年よりデータ合成技術評価委員会に参画中。

14:20-14:40 講演(2) データ合成技術評価委員会の立ち上げと取り組み

千田 浩司(群馬大学 情報学部 准教授)

千田 浩司

【講演概要】データ合成技術は,有用性の高い匿名化データの生成手段として海外で実用化が進んでいる.国内でもデータ合成技術を利用したパーソナルデータの安全な利活用の促進が期待されるが,健全な技術の普及には安全性の評価が不可欠である.そこでPWS組織委員会は,データ合成技術評価委員会を立ち上げ,合成データの安全性の指標やリスクアセスメント手法,技術と法規制との関係整理,および社会実装に向けた検討等を行っている.本講演では,当委員会のこれまでの取り組みについて紹介し,今後の展望について述べる.

【略歴】2000年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話(株)入社.博士(工学).2022年群馬大学情報学部准教授,2023年より国立情報学研究所客員准教授兼任.データプライバシー,暗号プロトコルの研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,日本医療情報学会,ACM各会員.2023年より情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会主査.

14:40-15:10 チュートリアル データプライバシーコンペ2023&2024の紹介

濱田 浩気(NTT社会情報研究所 准特別研究員)

濱田 浩気

【講演概要】本発表では,データプライバシーに関する2つの技術コンペについて報告する.1つめに,2023年8月から10月に実施した PWS Cup 2023 と呼ばれる技術コンペの概要と結果を紹介する.PWS Cup 2023 では,属性推定と呼ばれるプライバシーを侵害する攻撃に関し,参加チーム間でそれぞれが作成したデータを互いに攻撃し合うことにより攻防の技術を競った.2つめに,2024年の開催を計画中の技術コンペについて,2024年3月時点での計画内容を紹介する.

【略歴】2009年京都大学大学院情報学研究科修士課程修了.同年,日本電信電話株式会社入社.2022年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了.博士(情報学).暗号プロトコル,離散アルゴリズムの研究に従事.