情報処理学会第86回全国大会 会期:2024年3月15日~17日 会場:神奈川大学

〜コンピュータパイオニアが語る〜「私の詩と真実」〜

日時:3月15日 12:40-15:10

会場:第2イベント会場

【セッション概要】情報処理学会歴史特別委員会ではオーラルヒストリのインタビューを進めているが,大先輩のお話は毎回大変示唆に富み印象的なので,これを広く会員の方々、特に若い世代の会員に直接お聞かせ出来ないものかと検討してきた.そして海外の事例なども参考にし、コンピュータパイオニアあるいは情報処理学会会長経験者、またはそれらに相当する経歴の大先輩をお招きして、若い頃の研究生活の思い出や今の若い世代に伝えたい経験談なをお話いただく講演会を企画した。なお本講演会は第70回大会から開催しており今回が第16回目となる。

12:40-12:50 司会

旭 寛治(-)

旭 寛治

【略歴】1971年東京大学工学部卒業.同年(株)日立製作所入社.同社基本ソフトウェア本部長,ストレージソリューション本部長,(株)日立テクニカルコミュニケーションズ代表取締役社長等を歴任.
情報処理学会関係では,1999年理事,2005年副会長.現在歴史特別委員会幹事,コンピュータ博物館小委員会主査.本会名誉会員,フェロー.

12:50-13:50 講演(1) 計算と論理の迷い道 - 情報処理と証明 -

佐藤 雅彦(京都大学 大学院情報学研究科 名誉教授)

佐藤 雅彦

【講演概要】1960年代前半,高校生のときに,数学の厳密性に魅せられ数学者になることを決めた.
その頃は,数学の厳密性は「論理」と「証明」に支えられていると考えていた.大学3年で進学した数学教室でコンピュータとの出会いがあり,数学における「計算」の重要性を認識した.その後,計算と論理の間をさんざん迷いながら,「数学的存在とは何か」ということを考え続けてきた.
これは存在論的な問であるが,存在論だけでは解決できない問であり,認識論や現象学の視点からの考察を続けてきた.その間,多くの優れた数学者,情報科学者,哲学者との出会に恵まれ,現在は,数学的存在は証明に他ならないと考えている.このことから,数学的存在である「情報」を処理するという行為は,証明をするという行為に他ならないことが帰結する.
本講演では,自然数,複素数,線形空間,圏等々の数学的存在が論理と証明に支えられているという高校生の頃の素朴な認識から,「数学的存在=証明」であるという認識に至るまでを回顧し,今後の展望についても述べたい.

【略歴】1971年東京大学理学部数学科を卒業後,同大学大学院理学系研究科修士課程数学専攻を経て,京都大学大学院理学研究科博士課程数学専攻に進学.
1974年京都大学数理解析研究所助手に採用.1977年東京大学教養学部数学教室助教授に昇任,1979年東京大学理学部情報科学科助教授を経て1986年東北大学電気通信研究所教授.1995年京都大学大学院工学研究科教授.
1998年に新設された大学院情報学研究科に配置換,知能情報学専攻ソフトウェア基礎論分野担任となり,2012年定年退職.日本ソフトウェア科学会2014年度基礎研究賞.IFIP WG2.2メンバー.

14:00-15:00 講演(2) コンピュータとの60年

発田 弘(-)

発田 弘

【講演概要】1963年4月にNECに入社し2023年3月に情報処理学会の歴史特別委員会委員長を退任するまで約60年間コンピュータに関して開発や製品化などの事業、業界活動、学会活動に関わってきた。コンピュータがメインフレームと呼ばれてコンピュータ室を占めるほど大きかった時代からパソコンやインターネットへと著しい発展を遂げた時代に仕事をすることができて苦労もしたがやりがいがあったと思っている。その歴史を振り返りながら我が国の情報処理産業のために何を目指して何をやってきたかをお伝えし次の世代を担う方々の参考になればと考える。
また、先輩たちのそして我々の研究・開発の成果が散逸し廃棄されてしまうのが残念でその保存のために始めた情報処理技術遺産制度についても紹介したい。

【略歴】1963年東京大学工学部電子工学科卒業.同年日本電気(株)入社.
2002年日本電気(株)退職.同年沖電気工業(株)入社.
1990年〜1991年度本会理事,1994年〜1995年度本会監事,1999年〜2000年度本会副会長,
2006年~2022年度歴史特別委員会委員長、2001年功績賞,2002年フェロー,2005年名誉会員.