情報処理学会第86回全国大会 会期:2024年3月15日~17日 会場:神奈川大学

高専の情報教育

日時:3月17日 9:30-12:00

会場:第2イベント会場

【セッション概要】高等学校では、2022年度から教科「情報I」が2単位必履修になり、「情報II」が2単位選択履修となった。2025年度からの大学入学共通テストに「情報」が加わる。情報教育が大きな変化点を迎える。
高専ではこれまで何十年にわたり15歳から情報教育を行ってきた。本講演では高専情報教育の概要、カリキュラム構成などを紹介頂く。また、高専教育によりどのような人材が育っているのかを紹介して頂く。

9:30-9:30 司会 日本の未来を切り拓く高専教育

袖 美樹子(新居浜高等専門学校)

袖 美樹子

【講演概要】企業の現場で即戦力となる技術者を育てることを目標としている高専では、中学校卒業から5年間で大学学部レベルの専門知識や技術を身に着けるという高専独自の方針で人材育成を行っています。教育も時代に合った高度な技術に対応できるよう進化を続けています。高専教育の概要を説明します。

【略歴】日本電気(株)在籍中ACOS,地球環境シミュレータ等のスーパーコンピュータの開発に従事.ルネサスエレクトロニクス(株)移籍後,R-CARなどの自動車向けLSIの開発に従事.現在,バス停など身近なものをIoT化しエッジコンピューティングにより見守りなどの生活基盤として活用する研究に従事.工学博士(早稲田大学).情報処理学会,アジア交通学会,IEEE,電子情報通信学会等会員.

9:30-10:00 講演1 高専における全学的なAIスキル教育にむけた取り組みについて

平野 旭(呉高専 電気情報工学分野 准教授)

平野 旭

【講演概要】AIに関連する知識と技術は,昔で言う「読み・書き・そろばん」で例えられ,すべての人が身に着けておくべき基本的な素養と位置付けられるようになった.しかし,情報系学科の学生にとっては興味深くても,非情報系学科の学生にとってはあまり興味を持てない可能性がある.両方の学科を含む学校においてAI基礎教育を実施する場合,それぞれの学科の特性を考慮した上で学習トピックスや教育ツールを選定する必要がある.非情報系学科を含む高専において,2020年度から開講した「AI基礎技術演習」の取り組み内容と浮き彫りになった課題などについて紹介する.

【略歴】呉工業高等専門学校電気情報工学分野准教授.生体情報を用いた環境計測システム開発に関する研究および高専教育に関する教育研究に従事.

10:00-10:30 講演2 Society5.0時代に向けた高専のIoT人材育成モデルについて

千葉 慎二(仙台高専 総合工学科 教授)

千葉 慎二

【講演概要】IoTの普及により世の中の様々なモノがつながり、様々なサービスが生まれている。膨大な蓄積データを活用して人々がより暮らしやすい社会を実現するSociety5.0時代においては、IoTはますます重要な役割を担うことになるであろう。高専機構では、Society5.0により実現する未来技術の時代をリードする人材育成モデルを開発するため、COMPASS5.0という事業を進めている。本件ではCOMPASS5.0 IoT分野の拠点校である仙台高専より、高専のIoT人材育成モデルについて紹介させていただく。

【略歴】1991年 山形大学工学部卒。1993年 東北大学大学院工学研究科博士前期課程修了。1996年 東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士後期課程修了。1996年 仙台電波工業高等専門学校情報工学科助手。2017年から現職。博士(情報科学)。2020-2023年 高専機構 高専発!「Society 5.0型未来技術人財」育成事業COMPASS5.0 IoT分野拠点校リーダー。組込システム、IoT、情報科学等の研究に従事。

10:30-11:00 講演3 国立高専におけるサイバーセキュリティ人材育成事業(K-SEC)の取組み

丸山 真佐夫(木更津工業木更津 情報工学科 教授)

丸山 真佐夫

【講演概要】国立高専機構は2016年からサイバーセキュリティ人材育成事業(KOSEN Security Education Community,以下K-SEC)を実施してきた.K-SECでは育成すべき人材像を,(1)情報系以外の技術者が専門分野の能力に加えて各分野で必要となるセキュリティ知識・技術を身に着けたプラスセキュリティ人材(全学生の80%),(2)情報系技術者としてより専門的なセキュリティの能力を備えたトップ人材(同20%),(3)高専卒業生として突出したセキュリティスキルを持つトップオブトップ人材と定めている.そしてこれらの人材を育成するために,①サイバーセキュリティに関する学習項目・到達目標の策定,②各種教材の開発とセキュリティ教育を担う教員の育成,③教育実践の全国高専への展開,④全国高専から募集した学生に対する高度な講義・演習やコンテストの実施などを行ってきた.本報告ではK-SECの取組みを紹介する.

【略歴】1994年3月東京農工大学大学院工学研究科博士前期課程修了.2006年豊橋技術科学大学大学院工学研究科単位取得退学.博士(工学).1994年4月木更津工業高等専門学校情報工学科助手.講師,助教授を経て2013年同教授,現在に至る.

11:00-11:30 講演4 高専における宇宙人材育成の取り組み - 2020年度からの3か年と今後の展望について-

若林 誠(新居浜工業高等専門学校 電気情報工学科 准教授)

若林 誠

【講演概要】2020~2022年度の3か年で文部科学省の宇宙人材育成プログラムに採択され,新居浜高専を主管として高専での宇宙人材育成事業を実施してきた.この事業においては,国立高専での衛星開発を目指して従来から行ってきた「高専スペースキャンプ」「高専スペースアカデミア」といった取り組みの高度化に加え,「高専宇宙コンテスト」を新たに企画して実施した.これまでの取り組みの代表的な成果として,国立高専初の人工衛星「KOSEN-1」の開発・打ち上げ・運用に成功している.今後は,人工衛星開発に限らず,より広く宇宙産業に貢献できる人材育成を目指しており,本講演ではこれらの取り組みとそこから展開する将来像について紹介する.

【略歴】2006年東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻 博士課程後期3年の課程修了.博士(理学).2007年新居浜工業高等専門学校 電気情報工学科 助教,2015年同講師,2020年同准教授(現職).高専教員のコンソーシアム「高専スペース連携」の活動をベースに,高専での宇宙教育及び宇宙人材育成に携わる.2020~2022年度までの3か年と,2023~(2025年度までを予定)の文部科学省の宇宙人材育成プログラムに採択され,その代表を務める.

11:30-12:00 講演5 国立高等専門学校機構における半導体人材育成事業について

高倉 健一郎(熊本高等専門学校 電子情報システム工学系TE-Gr 准教授)

高倉 健一郎

【講演概要】昨今の半導体産業の活発化をうけて、半導体人材が求められている。国立高等専門学校機構では、半導体産業界への人材輩出を喫緊の使命として産業界・官公庁などと連携を図りながら人材育成の方法を検討し、教育実践を始めている。半導体産業は幅広い専門分野の人材が求められ、多分野の学生に半導体産業と自身の専門との関係性を伝え、この分野に目を向けさせることも重要である。昨年度より、佐世保高専と熊本高専では、全学科を対象として、「半導体工学概論」「半導体デバイス工学」などの科目を新設し、半導体関連の教育に力を入れており、順次、全国高専に広まっている。今回は、高専の半導体人材育成の取り組みを紹介する。

【略歴】熊本電波工業高等専門学校を卒業後、筑波大学4年次に編入学した。筑波大学大学院工学研究科物質工学専攻にて学位(博士(工学))を取得して、母校である熊本電波工業高等専門学校(現在は、熊本高等専門学校)に助手として着任した。校務では、長年、学生募集担当として中学生に向けて学校PR活動を行っている。電子物性、電子工学などの半導体関連科目を講義しており、一昨年度より高等専門学校が取り組む人材育成事業では、カリキュラム開発担当として尽力している。