情報処理学会第85回全国大会 会期:2023年3月2日~4日 会場:電気通信大学

第4回初等中等教員研究発表セッション

日時:3月4日 9:30-12:00

会場:第4イベント会場

【セッション概要】情報分野に興味を持つ生徒・学生を継続的に育成することは現代社会において重要な課題となっている。従来は大学や企業がその役割を担っていたが、現在は小学校から高等学校までの初等中等教育においてもプログラミングやデータサイエンスを含む情報教育が積極的に展開されている。また、2025年から大学入学共通テストで「情報」が出題される。このような環境の中、情報の基礎教育を行う教員に対して発表の機会を提供することで、本会員との交流を深めることができ、中学生や高校生に本会ジュニア会員として入会を促すことにもつなげることができる。そのため、特に初等中等教育機関の教員に特化した研究発表セッションを設けるものである。

進行

中野 由章(工学院大学附属中学校・高等学校 校長)

中野 由章

【略歴】技術士(総合技術監理・情報工学). 本会シニア会員,初等中等教育委員会委員長.情報オリンピック日本委員会理事. 日本IBM大和研究所,三重県立高校,千里金蘭大学,大阪電気通信大学,神戸市立高校を経て,工学院大学附属中学校・高等学校校長兼工学院大学教育開発センター特任教授. 山下記念研究賞(2015),学会活動貢献賞(2016),科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(2017),大会優秀賞(2018)

9:30-9:35 趣旨説明

高岡 詠子(上智大学 理工学部情報理工学科 教授)

高岡 詠子

【略歴】慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業,同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了,博士(工学).現在,上智大学理工学部教授.放送大学客員教授.専門は、教育とコンピュータ、医療看護介護用Web/スマフォアプリ等開発
2010-16会誌編集委員,2012-16CE研運営委員,2012-17論文誌編集委員,2014-16TCE編集委員,2012-初等中等教育委員会委員,2015-情報処理教育委員会,2015-LIP-Gr主査,山下記念研究賞,学会活動貢献賞,2016-18/2021-理事(教育).

9:35-9:50 研究発表1 GIGAスクール2年間の小学校の取組

佐藤 譲(川崎市立小杉小学校 教諭)

佐藤 譲

【講演概要】GIGAスクールにより一人1台そしてクラウドの環境が整ってから、2年が経とうとしています。
小学校現場では、まず先生たち自身が「使ってみる!」というところからスタートしました。手探りの状態でしたが、失敗を繰り返しながら、少しずつ”慣れる”ことを大切にしてきました。校務の中でchatで連絡を取ったり、ファイルを共有して一緒に作業したりすることが日常的になりました。
また、子どもたちが、主体的に学ぶことのできるようになるという点でも、GIGA環境はとても相性がいいと思います。学ぶ姿勢、学び方そのものを身に付けていくためには、教師が授業を日々アップデートしていく必要があります。その授業の組み立て方や子どもたちの変容についても、同僚の先生方と気軽に話し合えるようにもなってきました。
このような先生達の意識の高まりや、子どもたちの成長の様子など、事例を交えてお話しさせていただきます。

【略歴】2008年より川崎市立小学校勤務

2019年 川崎市総合教育センター短期研究員「小中学校におけるプログラミング教育の実践」
2021年 川崎市総合教育センター短期研究員「GIGA版川崎市情報活用チエックリストの実践」

現在 川崎市立小杉小学校教諭、川崎市立小学校情報教育研究会ネットワーク担当

9:50-10:05 研究発表2 各教科等におけるプログラミング教育の実践研究 2017年度からの6年間の取組

青木 譲(大阪市立茨田東小学校 首席 プログラミング教育担当)

青木 譲

【講演概要】本校2017年度からの6年間の取組を通して、プログラミング教育の導入段階から、継続的な取組、推進を図るために必要な外部資源の活用や、教師や児童の変容に言及する。6年間の取組を進める中で、プログラミング教育年間指導計画の作成及び、本校独自の「プログラミング活用能力」について定義した。報告ではプログラミング教育導入による成果だけでなく、プログラミング教育を指導する教職員の苦労や困りごと等も紹介したい。

【略歴】大阪市立茨田東小学校 首席。大阪教育大学教職大学院修了。
1994年より大阪市立小学校で勤務,2016年度より現職。
2017年度の大阪市プログラミング教育推進事業参加にあたり、本校プログラミング教育担当となる。

10:05-10:20 研究発表3 中学生を対象とした情報セキュリティ授業の実践と考察

多田 義男(筑波大学附属中学校 教諭)

多田 義男

【講演概要】技術・家庭科(技術分野)における「情報の技術」の分野において、どのような授業を行えば、効果的に情報セキュリティへの意識を高めることになるか考察した発表である。インターネットを利用して学習する機会が増加し、各家庭でも中学校への進学を機会に、保護者が子どもにスマートフォンを持たせる実態もある中で、スマートフォンを持ち始めた中学生が、SNS を利用し誤った情報を発信させないことや、インターネット上で自分自身や他者を守るときに必要な情報セキュリティについての意識を持たせる授業実践の報告を行う。

【略歴】筑波大学附属中学校教諭 担当教科 技術・家庭科(技術分野)
放送大学大学院文化科学研究科情報学プログラム(2020年4月~) 現在M2
東京都公立中学校で主幹教諭など務める(2020年3月 東京都退職 )
文部科学省  小・中・高等学校を通じた情報教育強化事業「現職教員の情報教育に係る指導力向上事業中学校教員研修用教材」ワーキンググループ委員 (2022)

10:20-10:35 研究発表4 大学入学共通テストを意識した情報Ⅰの授業実践

能城 茂雄(東京都立三鷹中等教育学校 主幹教諭)

能城 茂雄

【講演概要】令和4年度から実施された情報Ⅰの授業において、都立三鷹中等教育学校で授業実践をどのように行ってきたかを発表する。情報Ⅰ初年度となる今回は、これまで情報科で行われてきた授業をベースに、クラウドサービスの活用や一人1台端末、PC教室の利活用などを含め授業改善や大学入学共通テスト対応など、情報Ⅰ時代に対応した新たな実践を行ってきた。本発表では、本校における授業実践・新たな取り組み、大学入学共通テスト対応について発表する。

【略歴】東京都立三鷹中等教育学校主幹教諭。奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程情報システム学専攻修了。令和2年度視聴覚教育・情報教育功労者として文部科学大臣表彰。文部科学省学習指導要領等の改善に係る検討に必要な専門的作業等協力者(共通教科情報)文部科学省高等学校情報科「情報I」「情報II」教員研修用教材検討委員、同WG委員。情報経営イノベーション専門職大学客員教授も務める。
Adobe Education Leaders (AEL)、マイクロソフト認定教育イノベーター

10:35-10:45 休憩

10:45-11:00 研究発表5 「情報科」で南極と日本を結ぶー南極地域観測隊(JARE)に参加して

武善 紀之(日出学園中学校・高等学校 教諭)

武善 紀之

【講演概要】国立極地研究所が主催する「教員南極派遣プログラム」を活用し、第63次南極地域観測隊(JARE)同行者として2021年10月から2022年3月まで南極観測に参加した。本事業は、極地の自然や観測に興味を持つ現職教員を南極へ派遣し、現地から衛星中継授業を行うものである。2009年から続く事業であるが、情報科教員の派遣は私が初となった。本講演では、南極の自然や観測隊のリアルな姿にも触れながら、スマートスピーカーを用いたIoT実験、生徒の作成した環境計測装置など、授業内で行った実践を紹介する。また、南極の地で授業作りをする上で感じた、情報科や技術教育の学習意義についても、併せて共有したい。

【略歴】日出学園中学校・高等学校(千葉県)教諭。筑波大学情報学群卒業後、2014年より現職。数学科教諭として着任し、現在は情報科・公民科を指導。2018年から2020年にかけては、同・法人企画室ICT推進チームを兼務。高等学校情報科「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」教科書編集委員(東京書籍)。2021年には第63次南極地域観測隊同行者として、南極・昭和基地から勤務校へオンライン授業を実施。

11:00-11:15 研究発表6 「情報Ⅰ」実施により何が変わるのか

春日井 優(埼玉県立川越南高等学校 教諭)

春日井 優

【講演概要】今年度から新教育課程が始まり「情報Ⅰ」の授業が開始された。従前の教育課程では、多くの学校が「社会と情報」を履修しており、学習内容が大幅に変わった。勤務校ではこれまでに「情報B」、「情報の科学」を実施しており、授業ではモデル化とシミュレーション、単純ベイズによる分類、データの分析などコンピュータを活用して生徒に思考させる授業に取り組んできた。これまでに先行して取り組んできた授業を振り返るとともに、これらの学習内容により生徒の思考にどのような変化が起きるのかを考察する。

【略歴】埼玉県立川越南高等学校教諭。1993年埼玉県公立高等学校数学科教諭として採用。2000年新教科「情報」現職教員等講習会により情報科免許取得。2014年より現職。2020年度文部科学大臣優秀教職員表彰。情報Ⅰ・情報Ⅱ教員研修用教材作成WG委員。『情報Ⅱ』教科書等を執筆。

11:15-11:30 研究発表7 受験テクニックに溺れない! 情報Ⅰの指導

三井 栄慶(神奈川県立横浜翠嵐高等学校 総括教諭)

三井 栄慶

【講演概要】令和4年11月に大学入試センターから「情報」の試作問題が公表された。これをうけて教科「情報」の教員は大学入試対策をどのように進めていくか検討することができるようになったと考えている。
問題は大学入試対策を「いかに効果的に点数をとるか」といったような受験テクニックに傾倒する授業者が出てくることが予想されることである。
そうではなく、教科「情報」の目標に立ち返り「問題の発見・解決」を行う学習活動を実施することにより大学入試対策も十分に行うことができることを提案できればと考えている。

【略歴】神奈川県立横浜翠嵐高等学校総括教諭、神奈川大学大学院理学研究科情報科学専攻修了。2014,2015年度国立教育政策研究所教育課程研究指定事業(共通教科情報)研究指定を受け、思考力・判断力・表現力の育成および評価に係る授業研究を実施。文部科学省「情報Ⅰ」・「情報Ⅱ」の教員研修用教材や教科書等を執筆。文部科学省「情報Ⅰ」授業・解説動画「コンピュータとプログラム」に出演(2022)

11:30-11:45 研究発表8 人口最少県ならではの小回りの効く教育の情報化

岩崎 有朋(鳥取県教育委員会 GIGAスクール推進課 係長)

岩崎 有朋

【講演概要】鳥取県は都道府県の中で一番人口が少なく、それが弱みにも見えがちです。しかし、GIGAスクール構想の推進にあたっては、その小ささを強みに、市町村と密に連携し、県内全ての校種の児童生徒、教職員にGoogleアカウントを付与し、小1〜高3までの12年間の連続した学びを作ろうとしています。さらに県教委の各課が横断的に連携することで、さまざまな事業を展開し、多角的に学校のICT活用推進を支援しており、その成果は文科省が毎年実施する教育の情報化に関する実態調査でも確実に成果として現れています。発表では、それらについて紹介しつつ、活用から次のフェーズに移るために何に取り組もうとしているのかをお話しする予定です。

【略歴】公立中学校の理科担当として勤務し、2020年4月より県教育センターにて勤務。教諭の時には県教育委員会認定のエキスパート教員(認定分野:理科、ICT活用)として実践を積極的に公開した。(一社)日本教育情報化振興会の情報活用能力育成事業では委員の一人を務め、全国セミナーで模擬授業を行う。現在は、県教委内のGIGAスクール構想推進の中心部署の一人として、推進案の提案や県内外の研修講師、Intel Master TeacherとしてPBLによる授業づくりの支援、文部科学省のICT活用教育アドバイザーとしての支援業務行っている。

11:45-12:00 講評

田﨑 丈晴(国立教育政策研究所)

田﨑 丈晴

【略歴】国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官。文部科学省初等中等教育局における共通教科情報科及び専門教科情報科の教科調査官を併任。2003年3月東京理科大学大学院修士課程経営工学専攻修了後,埼玉県私立高等学校,東京都立高等学校で情報科を,千代田区立中等教育学校で情報科及び技術・家庭科(技術分野)を担当し,東京都学校経営支援センター学校経営支援主事,東京都立中学校副校長を経て現職。