情報処理学会第85回全国大会 会期:2023年3月2日~4日 会場:電気通信大学

2025年度情報入試のトレンド

日時:3月4日 9:30-12:00

会場:第1イベント会場

【セッション概要】2025年度入試から大学入学共通テストに高校教科「情報」が導入されることが決まり、多くの大学がその採用を検討している。また大学によっては個別入試に「情報」を採用することを公表している。2年前ルールによって、多くの大学が2025年度入試の方針を明らかにしているであろうこの時期に、「情報」に関する大学入試のトレンドをまとめ、それを大学・高校・社会に伝えるとともに、その意義について議論する。また、昨年秋に大学入試センターの試作問題が公開され、その分析結果を報告したり、「情報I」および「情報II」の高校教科書の分析結果についても報告する。

司会

植原 啓介(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)

植原 啓介

【略歴】慶應義塾大学環境情報学部准教授。博士(政策・メディア)。1995年3月電気通信大学大学院電気通信学研究科情報工学専攻博士前期課程修了。1997年4月慶應義塾大学政策・メディア研究科後期博士課程入学、2000年3月単位取得退学。2003年3月、慶應義塾大学より博士(政策・メディア)の学位を授与。1995年4月以降は、慶應義塾大学において研究員、助手、特任教員などを経、2022年より現職。専門はインターネット、コンピュータサイエンス、高度道路交通システム(ITS)、地理位置情報(GIS)など。

9:35-9:50 講演(1) 令和7年度大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の実施に向けて

水野 修治(独立行政法人 大学入試センター 試験問題調査官)

水野 修治

【講演概要】2022年11月9日,独立行政法人大学入試センターは,平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストの問題作成方針に関する検討の方向性及び新科目『情報Ⅰ』を含む試作問題等を公表した。これらの検討には,本学会の関係者も含め多くの有識者(大学や高等学校関係者)にこれまで献身的にご尽力いただいてきた。その公表内容の一部である『情報Ⅰ』の問題作成方針に関する検討の方向性とその具体的な試作問題及び「共通テスト用プログラム表記の例示」について,改めてそのねらいとともに報告する。

【略歴】1991年外資系情報機器メーカー入社,1998年愛知県立高等学校教諭に採用,総合教育センター研究指導主事(兼務,教育委員会高等学校教育課指導主事,愛知県立大学情報科学部非常勤講師),高等学校教頭を経て2019年4月より(独)大学入試センター試験問題企画官(情報担当),10月より試験問題調査官.学習指導要領「情報」の調査研究協力者,教科書等著者(共著),信州大学修士(工学).

9:50-10:05 講演(2) 高校情報科の教科書に現れる用語の分析結果について

角田 博保(電気通信大学 大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻 客員研究員)

角田 博保

【講演概要】大学入学試験として情報を出題するためには、大学など出題する側と、受験する高等学校側で、出題内容や範囲、用語などの知識体系が共有されていることが必要である。しかし現在はまだ、「情報科」の知識体系は明確に定められてはいない。情報科で扱う内容は、進歩の速い情報化社会を生き抜くための知識及び技能の習得、思考力・判断力・表現力を養う必要があり、普遍的な内容とその時代に即した内容が盛り込まれているものと考えられる。本講演では、教科書の索引に着目し、「情報Ⅰ」、「情報Ⅱ」で使われる用語(索引に現れるもの)を中心に、過去の情報科の全教科書に現れる用語の変遷も含めた分析結果について述べる。

【略歴】1974年東京工業大学理学部情報科学科卒業。1981年同大学院博士課程単位取得退学。1982年電気通信大学計算機科学科助手。1990年同大学情報工学科講師、1992年助教授、2007年准教授、2016年定年退職。2021年より電気通信大学客員研究員。理学博士(東京工業大学)。教育支援システム、ヒューマンコンピュータインタラクション、文字列処理等に興味を持つ。2021年度本会学会活動貢献賞。本会情報処理教育委員会副委員長、情報入試委員会副委員長。ACM会員。本会シニア会員。

10:05-10:20 講演(3) 情報入試をめぐる動き

富沢 弘和(河合塾 教育研究開発本部 本部長)

富沢 弘和

【講演概要】2025年度入試からの共通テスト「情報」の出題が導入されることを踏まえ、各大学の活用状況や入試動向の予測、試作問題に関する所感、出題に向けた弊塾の取り組みなど

【略歴】1994年4月 河合塾入塾。校舎スタッフ・模試作成部門を経て、大学入試情報の情報収集・分析・発信部門に携わる。長年にわたり全統模試のデータを基にした大学入試動向分析、進学情報誌「ガイドライン」「栄冠めざして」などの編集、入試情報サイト「Kei-Net」を担当。2021年4月より現職。進学情報分析・発信の統括とともに生徒、保護者対象の講演も多数実施。

10:20-10:35 講演(4) 情報入試を見据えた高校での授業実践

稲垣 俊介(東京都立神代高等学校)

稲垣 俊介

【講演概要】多くの高等学校では、これまで情報入試を見据えた指導やその対策を実施してこなかったと考えられる。しかし、大学入試センターにおいて「情報Ⅰ」の試作問題が公表されたことにより、その準備が高等学校に求められている。これまで検討をしてきた情報入試を見据えた授業実践のあり方や今後の抱負について発表する。

【略歴】東京都立神代高等学校 情報科主任教諭。筑波大学、國學院大學非常勤講師。博士(情報科学)東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。2007年より東京都立高等学校の情報科教員となり、2020年より現職。東京都高等学校情報教育研究会/情報Ⅰ大学入試検討専門委員会の委員長を務める。主な著作として高等学校教科書「情報Ⅰ図解と実習」(日本文教出版)、「スマホ世代の子どもための情報活用能力を育む情報モラルの授業2.0」(日本標準)等がある。

10:35-10:50 講演(5) 総合型選抜(人間科学部FACT選抜)と情報入試/総合的な探究の時間

尾澤 重知(早稲田大学 人間科学学術院 教授)

尾澤 重知

【講演概要】早稲田大学人間科学部では、2017年からFACT(Fundamental Academic Competency Test)選抜を導入し、2023年からは総合型選抜として実施している。文系・理系の区別を問わず、科学に対する親和性と、探究する姿勢を有する入学者を選抜することが目指されている。
FACT選抜では、理科的な科学的思考法と、国語的な論理的表現力の両方が重視され、①自ら行う実験等を通してデータを客観的に読み解き要約する力、②得られた洞察を科学的知見と結び付けて分析する力、③複雑な現象を簡潔にわかりやすくまとめ表現する力、などが選抜(書類審査、論述試験・面接試験)で問われている。
FACT選抜は「情報」に特化した内容ではない。一方、情報入試的な観点、数学における統計や、「総合的な探究の時間」における探究的な活動など複合的な内容が扱われる。講演では、情報入試の観点からこれらの事例を紹介する。

【略歴】早稲田大学人間科学学術院教授。慶應義塾大学環境情報学部卒、北陸先端科学技術大学院知識科学研究科博士前期・後期課程修了。博士(知識科学)。安田女子短期大学、大分大学高等教育開発センター等を経て、2010年早稲田大学人間科学学術院に着任。学習環境デザイン(協調学習支援)領域の研究に従事。

10:50-12:00 パネル討論

司会 2025年度情報入試のトレンド

稲葉 利江子(津田塾大学 学芸学部情報科学科 教授)

稲葉 利江子

【討論概要】2025年度入試から大学入学共通テストに高校教科「情報」が導入されることが​​決まり、多くの大学がその採用を検討し、入試の方針を発表している。また、大学によっては個別入試に「情報」を採用することも公表されている。そこで、大学入試に関連する高校、大学、予備校の関係者をパネリストに迎え、大学入試における「情報」の動向とその期待と意義について議論を行う。

【略歴】津田塾大学学芸学部情報科学科 教授.博士(理学). 異文化コミュニケーション, 高等教育におけるICT利活用データの分析に関する研究に従事. 情報処理学会では, 情報処理教育委員会, 情報入試委員会, セミナー推進委員会などの委員として活動.

パネリスト

角田 博保(電気通信大学 大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻 客員研究員)

角田 博保

【略歴】1974年東京工業大学理学部情報科学科卒業。1981年同大学院博士課程単位取得退学。1982年電気通信大学計算機科学科助手。1990年同大学情報工学科講師、1992年助教授、2007年准教授、2016年定年退職。2021年より電気通信大学客員研究員。理学博士(東京工業大学)。教育支援システム、ヒューマンコンピュータインタラクション、文字列処理等に興味を持つ。2021年度本会学会活動貢献賞。本会情報処理教育委員会副委員長、情報入試委員会副委員長。ACM会員。本会シニア会員。

パネリスト

富沢 弘和(河合塾 教育研究開発本部 本部長)

富沢 弘和

【略歴】1994年4月 河合塾入塾。校舎スタッフ・模試作成部門を経て、大学入試情報の情報収集・分析・発信部門に携わる。長年にわたり全統模試のデータを基にした大学入試動向分析、進学情報誌「ガイドライン」「栄冠めざして」などの編集、入試情報サイト「Kei-Net」を担当。2021年4月より現職。進学情報分析・発信の統括とともに生徒、保護者対象の講演も多数実施。

パネリスト

稲垣 俊介(東京都立神代高等学校)

稲垣 俊介

【略歴】東京都立神代高等学校 情報科主任教諭。筑波大学、國學院大學非常勤講師。博士(情報科学)東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。2007年より東京都立高等学校の情報科教員となり、2020年より現職。東京都高等学校情報教育研究会/情報Ⅰ大学入試検討専門委員会の委員長を務める。主な著作として高等学校教科書「情報Ⅰ図解と実習」(日本文教出版)、「スマホ世代の子どもための情報活用能力を育む情報モラルの授業2.0」(日本標準)等がある。

パネリスト

尾澤 重知(早稲田大学 人間科学学術院 教授)

尾澤 重知

【略歴】早稲田大学人間科学学術院教授。慶應義塾大学環境情報学部卒、北陸先端科学技術大学院知識科学研究科博士前期・後期課程修了。博士(知識科学)。安田女子短期大学、大分大学高等教育開発センター等を経て、2010年早稲田大学人間科学学術院に着任。学習環境デザイン(協調学習支援)領域の研究に従事。

パネリスト

小宮 常康(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 准教授)

小宮 常康

【略歴】1996年豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士課程修了.博士(工学).同年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻助手.2003年豊橋技術科学大学情報工学系講師.2007年1月電気通信大学大学院情報システム学研究科助教授を経て2016年より現職.プログラミング言語と言語処理系の研究に従事.本会情報入試委員会委員.