情報処理学会第85回全国大会 会期:2023年3月2日~4日 会場:電気通信大学

大学等におけるデータサイエンス教育の強化と相互連携

日時:3月2日 9:30-11:30

会場:第2イベント会場

【セッション概要】文部科学省等は数理・データサイエンス・AI教育を行う大学の基礎教育や共通教育を対象として数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル、応用基礎レベル)を立ち上げて教育を推進している。一方、AI戦略2019等では、より専門性の高いデータサイエンティストの育成や、現役のIT技術者を対象とするデータサイエンス分野のリカレント教育の重要性が強く指摘されている。こうした状況を踏まえて、情報処理学会ではデータサイエンス・カリキュラム標準(専門教育レベル)の策定やデータサイエンス分野の専門教育プログラムを対象とする認定制度の創設を推進している。また、データサイエンスを専門とする学部・学科等の新設も相次いでいる。本シンポジウムでは、大学および産業界における先進的なデータサイエンティスト教育事例を紹介するとともに、情報処理学会等の取り組みを踏まえた相互連携や、データサイエンス教育の強化に関する討論を行う。

9:30-9:35 オープニング

掛下 哲郎(佐賀大学 理工学部 情報部門 准教授)

掛下 哲郎

【略歴】本会データサイエンス教育委員会 委員長.本会データサイエンス・カリキュラム標準(専門教育レベル)の策定を中心的な立場で担った.また,本会のデータサイエンティスト資格の制度設計やデータサイエンティスト育成戦略の策定や推進にも取り組んでいる.ISO委員としてソフトウェア技術者資格に対する国際規格の策定にも従事.ソフトウェア工学,情報システム,情報専門教育等を専門とする.工学博士(九州大学).

9:35-9:50 講演(1) 情報処理学会のDS関連取組紹介

荒川 豊(九州大学,情報処理学会技術応用担当理事 教授)

荒川 豊

【講演概要】数理・データサイエンス・AI人材への要求の高まりから、全国の大学においてリテラシーレベルから応用基礎レベルのデータサイエンティスト教育(DS教育)が広がっている。また、高度な能力を持つデータサイエンティストの育成も急務である。こうした背景のもと、情報処理学会では、エキスパートレベルのデータサイエンティスト育成を念頭に、データサイエンス・カリキュラム標準(専門教育レベル)を2021年に公開し、それに対応する教育プログラムを認定する制度についても策定を進めている。また、認定情報技術者制度(CITP)を拡張してデータサイエンティスト資格を認定する仕組みを導入し、データサイエンス教育とデータサイエンティスト資格の連携を図っている。本発表では、こうした情報処理学会の取り組みについて狙い・特徴・構成、及び、関連組織との連携について解説する。

【略歴】2006年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。
同大助手、九州大学助教、奈良先端大准教授を経て、2019年より九州大学
大学院システム情報科学研究院教授。途中、フランスENSEEIHT、ドイツDFKI、
アメリカUCLAで客員研究員として研究。2021年より情報処理学会および
SDGsデジタル社会推進機構理事。2022年より九州大学・総長補佐。
IoTとAIによる行動認識技術、心理学などを含めた行動変容支援技術に関する
研究に従事するとともに、情報処理学会技術応用理事として高度人材育成に取り組む。

9:50-10:05 講演(2) JABEEでのDS教育プログラム認定

佐渡 一広(元群馬大.JABEE ソウル協定部会)

佐渡 一広

【講演概要】JABEE(日本技術者教育認定機構)における,データサイエンス分野の新設に関してその状況について報告する。情報専門系の教育の国際協定であるソウル協定に対応して,JABEEには情報専門系認定を行っているが,既存のCS(コンピュータ科学)分野,IS(情報システム)分野,IT・CSec(インフォメーションテクノロジ・サイバーセキュリティ),情報一般の4分野に追加する計画で,2024年度からのDS(データサイエンス)分野の認定を目指している。DSでは,米国のABETの基準を参考にして,各種のデータサイエンス分野のモデルカリキュラムを考慮しているか,あるいはデータの扱い,データの扱いに関する倫理関係,基本的な情報学の知識,それらの応用能力などを求める方向であり,これらについて紹介する。

【略歴】1983年3月東京工業大学理工学研究科博士後期課程単位取得退学,1985年東京工業大学理学博士,1983年4月群馬大学工学部助手,1987年4月群馬大学工学部助教授,1993年10月群馬大学社会情報学部助教授,2010年4月群馬大学社会情報学部教授,2020年群馬大学名誉教授,2019年JABEEソウル協定部会主査

10:05-10:20 講演(3) 大学でのDS専門教育プログラム(その1)

土肥 正(広島大学 情報科学部 情報科学部長)

土肥 正

【講演概要】広島大学では2018年に新たに情報科学部を開設して以来、教育・研究に関するさまざまな取組を行っている。本講演では、広島大学がこれまでに実施してきた情報・データサイエンスに関連した取組を過去・現在・未来の観点から概観し、これまでに達成された成果ならびに課題について整理することを試みる。

【略歴】1989年広島大学工学部第二類(電気系)卒業, 1991年同大学大学院工学研究科システム工学専攻博士課程前期修了,1992年同大学院工学研究科システム工学専攻博士課程後期中途退学. 1995年博士(工学)取得.1992年広島大学工学部第二類(電気系)助手, 同年ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)客員研究員, 1996年広島大学工学部 第二類(電気系)助教授, 2000年デューク大学(アメリカ合衆国)客員研究員, 2002年広島大学大学院工学研究科情報工学専攻教授.2018年広島大学情報科学部教授(専任), 2020年広島大学大学院先進理工系科学研究科教授(専任). 2022年広島大学情報科学部長. 専門は高信頼化システム, ソフトウェア工学, 性能評価, オペレーションズ・リサーチ.

10:20-10:35 講演(4) 大学でのDS専門教育プログラム(その2)

中谷 多哉子(放送大学 オンライン教育センター/情報コース 教授)

中谷 多哉子

【講演概要】放送大学では,文科省および情報処理学会から提供されているカリキュラムに準拠した教育コンテンツを2020年度から開発を進めてきた.これらのコンテンツは,様々な教育現場で活用出来るよう,テレビで放映するほか,インターネットでも配信している.特にインターネットで配信しているコンテンツは,理解度を評価するためのクイズと解説と共に提供されている.これらのコンテンツの概要を紹介すると共に,コンテンツを活用した企業,大学の反応について示し,今後のデータサイエンス教育の方向を議論する.また,多様なバックグラウンドを持つ社会人に対するデータサイエンス教育では,どのような工夫が必要なのか.放送大学での事例を紹介する.

【略歴】1980年 東京理科大学理学部応用物理学科卒業
1994年 筑波大学大学院経営政策・科学研究科経営システム科学専攻修了(修士(経営システム科学))
富士ゼロックス情報システム株式会社を経て1995年Sラグーン設立.
1998年 東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了(博士(学術))
2001年(有)エス・ラグーン設立.2015年までオブジェクト指向教育活動に従事.
2006年3月 筑波大学大学院ビジネス科学専攻准教授
2015年4月 放送大学情報コース教授.現在に到る

10:35-10:50 講演(5) 企業でのデータサイエンス教育

高橋 範光(株式会社ディジタルグロースアカデミア 代表取締役社長)

高橋 範光

【講演概要】企業でも10年近く前からデータ活用の重要性が語られるようになり、データサイエンティスト育成のニーズはベンダー企業だけでなくユーザー企業でも高まってはきているものの、まだ本格化しない状況である。また、これからの新卒社員は大学でデータサイエンス教育を受けて入社するため、既存社員が取り残されないようリテラシーレベルの底上げが急務であり、一般社団法人データサイエンティスト協会は2021年よりデータサイエンティスト検定を開始した。そこで本講演では、企業のデータサイエンス教育の最新の状況について、代表的な企業や団体の取り組み事例や今後に向けた課題について紹介する。

【略歴】東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻修了。アクセンチュアからチェンジに入社。ビッグデータやAI導入、デジタル人材育成事業を立ち上げ。2021年4月よりチェンジとKDDIの合弁会社である株式会社ディジタルグロースアカデミアを設立、代表取締役を務める。金融、ゼネコンほか多くの企業にデジタル人材育成サービスを展開。著書「道具としてのビッグデータ」、共著「最短突破 データサイエンティスト検定(リテラシーレベル)公式リファレンスブック」がある。

10:50-11:25 パネル討論 大学等におけるデータサイエンス教育の強化と相互連携の推進

掛下 哲郎(佐賀大学 理工学部 准教授)

掛下 哲郎

【討論概要】データサイエンスを専門とする学部・学科等の新設が相次ぎ,オンラインでのデータサイエンス教育や,データサイエンティストの育成を目的としたセミナーなども提供されている.本パネル討論では,5名の講演者による取組紹介や,最近のオンライン教育,メタバース技術の活用,相互連携を後押しする制度改正(大学設置基準等)を踏まえ,データサイエンス教育やデータサイエンティスト育成の推進や高度化を図るための各種の取り組みの相互連携について,一般参加者も含めた議論や意見交換を行う.

【略歴】本会データサイエンス教育委員会 委員長.本会データサイエンス・カリキュラム標準(専門教育レベル)の策定を中心的な立場で担った.また,本会のデータサイエンティスト資格の制度設計やデータサイエンティスト育成戦略の策定や推進にも取り組んでいる.ISO委員としてソフトウェア技術者資格に対する国際規格の策定にも従事.ソフトウェア工学,情報システム,情報専門教育等を専門とする.工学博士(九州大学).

11:25-11:30 パネル討論 クロージング