情報処理学会第85回全国大会 会期:2023年3月2日~4日 会場:電気通信大学

〜コンピュータパイオニアが語る〜「私の詩と真実」

日時:3月3日 12:40-15:10

会場:第2イベント会場

【セッション概要】情報処理学会歴史特別委員会ではオーラルヒストリのインタビューを進めているが、大先輩のお話は毎回大変示唆に富み印象的なので、これを広く会員の方々、特に若い世代の会員に直接お聞かせ出来ないものかと検討してきた。そして海外の事例なども参考にし、コンピュータパイオニアあるいは情報処理学会会長経験者、またはそれらに相当する経歴の大先輩をお招きして、若い頃の研究生活の思い出や今の若い世代に伝えたい経験談などをお話頂く講演会を企画した。なお本講演会は第70回大会から開催しており今回が第15回目となる。

12:40-12:50 司会

発田 弘(-)

発田 弘

【略歴】1963年東京大学工学部電子工学科卒業.同年日本電気(株)入社.
2002年日本電気(株)退職.同年沖電気工業(株)入社.
1990年〜1991年度本会理事,1994年〜1995年度本会監事,1999年〜2000年度本会副会長,
2006年歴史特別委員会委員長,現在に至る.2001年功績賞,2002年フェロー,2005年名誉会員.

12:50-13:50 講演(1) 人と社会のための研究開発 〜性能追求から価値創造へ〜

江村 克己(日本電気株式会社 シニアアドバイザー)

江村 克己

【講演概要】私が主に研究開発に取り組んだ1980、90年代は性能を上げ、コストを下げることに大きな意味がありました。コンピュータと通信の飛躍的性能向上は、いつでも、どこでも、誰とでもがつながることを可能にしました。家事や定型業務が効率化され、人々が個性を活かして自己実現を目指す時代にもなりました。一方で地球環境問題や少子高齢化など社会の課題が顕在化し、世の中の不確実性も増しています。研究開発への期待は、課題解決と新しい価値創造への貢献へとシフトし、研究開発の進め方にも大きな変革が求められています。本講演では、私のこれまでの研究開発とそのマネジメントへの取組みを振り返りながら、これからの研究開発のあり方について議論します。変化が激しくなる中で機敏に変えていくべきことと研究開発の本質的として変わらず取組むべきことは何かがひとつの論点になります。同じ切り口でこれからの学会のあり方についても考えたいと思います。

【略歴】1982年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。同年光通信の研究者としてNEC入社。製品企画部門での経験やNEC知財部門のトップを経て、2010年に中央研究所を担当する執行役員に就任。取締役 執行役員常務 兼 CTO(チーフテクノロジーオフィサー)、NECフェローを経て、現職。1987-1988米国Bellcore客員研究員。工学博士(東大)。
第30代情報処理学会会長、JST AIPネットワークラボ ラボ長

14:00-15:00 講演(2) 昭和の乱世の片隅で、静かに生きた研究者がいた。

弓場 敏嗣(電気通信大学 名誉教授)

弓場 敏嗣

【講演概要】長い年月を生き延びてきた。顧みて、自分の人生をいくつかに区切ることができる。区切りは学校での教育環境の変化から始まる。給与生活者になってからは、従事する職種、職制などの変化によって区切りは生じた。研究者の場合、研究対象の変化が人生の区切りに大きく依存する。数年を単位として区切られた時間が流れ、振り返ると混沌の世界を彷徨した感覚だけが残っている。
研究者の営為は、世間と組織によって見守られ、評価を受け続ける。研究者はそれに対する耐性がなくてはならない。この強かな耐性こそが研究者に不可欠な資質といえるかも知れない。それぞれの区切りで、目の前に与えられた、あるいは自分が選んだ仕事に精いっぱい取り組んだという想いは残っている。こんなことを考えながら、反省に満ちた我が研究者人生を振り返ってみた。

【略歴】1964年、神戸大学工学部電気工学科卒業、1966年、同修士課程修了。1966年~1967年、(株)野村総合研究所総合研究部。1967年~1993年、通商産業省工業技術院電子技術総合研究所。1993年~2007年、電気通信大学大学院情報システム学研究科。情報処理学会理事(会誌編集担当)などを歴任。