電子情報通信学会総合大会講演要旨
BI-6-2
意思決定研究の計算論的アプローチ
田中沙織(ATR)
脳の複雑な機能の解明には, 物質や回路の働きについての数理モデルを仮定し, それを実験的手法で検証する「計算論的神経科学」のアプローチが有効であることは近年神経科学のみならず, 臨床や経済学といった様々な分野に広く浸透してきた. その中でも,ドーパミン, セロトニンなどの神経修飾物質の役割を記述する数理モデルは, 予測と意思決定の脳の機能解明には不可欠であり, 数理モデルに関する検証実験的が盛んに行われている. 予測と意思決定に関するドーパミンの代表的な数理モデルとして, 強化学習理論における「予測誤差」が挙げられる. また予測と意思決定に関するセロトニンの機能の一つとして,「衝動的選択」が挙げられる. これは, 将来的に大きな報酬が得られる行動よりも, 即時的に少ない報酬を得られる行動を選んでしまうことであり, ラットのセロトニン経路の破壊で, 衝動的選択が生じたことが報告されている. これらの実験から, セロトニンが遅延報酬に対する価値の割引 (時間割引率) に対応するというモデルが提唱されている.