一般講演

1-001

テクノクラフトによる百人一首パフォーマンス

○宮内 肇・小川陽子・門脇 健（松江工業高等専門学校）・中村 格（鹿児島工業高等専門学校）

最近、理系重視による大学の文学部廃止の動きがある。一方では小中学校における理科離れという傾向がある。これからのものづくりには感性が重要である。また、男女共同参画の実現には、女性技術者への興味喚起が必要である。女子児童・生徒は、漫画、小説等様々なメディアを通して恋愛ストーリーに興味を持っていると考えられる。また、ファッションにも興味を示す。そこで、恋愛ストーリーが凝縮されている日本の伝統言語文化である「百人一首」の和歌の「無形」の情景を、「有形」なマイコン制御によるテクノクラフトでパフォーマンス表現させる公開講座を実施した。アートデザインの創作活動を通して、理系（工学）進路選択支援の一助とする。

1-002

電気系技術者のスキルアップの現状分析

○伊藤裕子（科学技術振興機構）

科学技術イノベーション総合戦略2016に「我が国の科学技術イノベーション人材を巡る状況は危機的である」とされているように、若手人材育成と共に現職の技術者等のスキルアップ支援は持続的なイノベーション創出に重要である。技術者のスキルアップの状況を知るために、現職の技術者（最終学歴大卒以上）を対象にウェブアンケートを実施した。電気系技術者114名の回答者の77.2%が「自発的に技術のスキルアップをした」と回答したが、その際に「職場がスキルアップ支援をしてくれた」と回答したのは46.5%に留まり、費用負担の支援を得られた回答者の勤務先は大企業である傾向が示された。科学技術の進展のスピードが加速する中で学び直しやスキルアップは益々重要となると考えられ、産学官連携での支援策の検討が必要であると考えられる。

1-003

モーションキャプチャを用いた日本舞踊の3DCGによる可視化の基礎的検討

◎久保田祐貴・篠田之孝・三戸勇気（日本大学）・渡沼玲史（一橋大学）・小沢 徹・丸茂美惠子（日本大学）

近年、工学の分野、スポーツの分野、芸術の分野等において高度な技能の継承・保存が重要な課題となっており、「身体知」の研究を行うためモーションキャプチャを用いた動作解析が行われている。本研究の目的は日本舞踊における教育支援システムの構築並びに動作解析による特徴抽出することである。本文は3DCGのソフトウェアであるBlender 2.77を用いた3DCGアニメーションを作成することで、複数の舞踊家の舞踊動作を比較するための可視化の基礎的検討を行った。

1-004

住宅基礎コンクリートの電気特性の実験的検討

◎松尾天靖・竹内大貴・渡邉信公・吉水健剛・伊賀昌久（職業能力開発総合大学校）

近年，電気需要家では安全確保のため接地を必要とする機器が増加し，多くの接地が施工されている．しかしその品質保証が確保できず，電気安全・管理上の問題が報告されている．そこで住宅基礎鉄筋コンクリートを接地極として使用し，確実でしかも品質確保を行う検討がされている．この検討を行う上で基礎コンクリートの電気的特性を把握することが重要である．そこで実験モデルを製作して電気的特性を実験的に把握し，コンクリートの電気回路モデルを構築すると同時にLTSpiceでシミュレーションした．その結果，周波数に対する電流及び位相特性はともによく一致しており，コンクリートの電気回路モデルは本実験モデルの特性を十分に表していることを確認した．

1-005

モーションキャプチャを用いた鍵盤楽器の演奏動作の可視化システムの構築

◎古賀一眞・三戸勇気・川上 央（日本大学）・三浦雅展（龍谷大学）・篠田之孝（日本大学）

近年、「訓練によって身体が覚えた高度な技能（身体知）」の研究を行うためにモーションキャプチャを用いた身体動作の解析が行われている。本研究の目的は鍵盤楽器の演奏動作の解析により、演奏者の感情表現と演奏動作の関連について解明することである。本文は光学式モーションキャプチャシステムを用いてプロピアニストの各感情表現による演奏動作を取得し、鍵盤楽器の演奏動作の可視化並びに解析が行えるシステムを構築した報告である。本システムが人型モデルの3次元表示による演奏動作を提示できることを示した。

1-006

こどもマイスター教室におけるモータを用いた工作教室

○曽根原 誠（信州大学）

筆者らは，2005年から所属研究室主催の工作教室「こどもマイスター教室（Children’s Meister Class）」を企画し，2015年からは「青少年のための科学の祭典」内で開催するなどこれまで12回開催してきた．子ども達に“ものづくり”に対し，プロフェッショナル（匠）な意識を持ってもらおうと，電気学会東海支部や近隣企業のSBC，あるいは行政組織である長野市，須坂市，JSTイノベーションサテライト新潟のいずれか一つに主催・共催あるいは協賛して頂いている．本発表では，身近な材料とマイクロモータを使った車作りについてと，単極モータを使った電磁力スペースシャトル作りついて報告する．

1-007

実機とシミュレータによる制御体験学習システムの開発

○小松原 実（岡山商科大学）

本研究では実際の体験を重視した無線制御玩具を利用した走行制御の体験学習と、画面上を仮想的に走行するライントレースカーのシミュレータによりクローズドループ制御のプログラミング学習が行えるシステムを併用した実験授業を高等学校において行った。リモコンカー実機による学習とシミュレータによる自由度の高い学習を組み合わせることで、学習者の興味を高め効果的な学習を行うことができるた。

1-008

ブロック型スマートハウス電力管理学習教材の開発と活用（Ⅰ）

大谷昌生・○金井徳兼（神奈川工科大学）

省エネ、蓄エネ、創エネに対する興味関心が一般家庭にまで浸透し、スマートハウスに代表される新しい家庭環境が注目されている。その中でもエネルギー利用効率を把握するような見える化システムが必要となり、HEMSがスマートハウスの中核となる。HEMSをテーマとした資格取得も今年度からスタートしている。体験的にHEMSシステムの動作や構築、省エネ家電製品の導入メリットなどを含めた学習は実機を活用したスマートハウスでの実習が第一であるが、より手軽にHEMSの動作を体験するには、子供たちへの学習を考えると現実的ではないと考える。本報告は、スマートハウスやHEMSの機能を身近で簡易に体験する学習教材を試作し、その機能の活用について報告する。

1-009

汎用書籍とデジタル技術の融合によるアクティブ・テキスト

○鈴木真ノ介・伊藤達哉・石原 学・小林幸夫（小山工業高等専門学校）

近年，教育分野の情報化が進んでいる．その一例として，タブレットPCを用いた電子教科書や等が開発され，教育現場にて使用されて始めている．筆者らは紙媒体の汎用書籍と一般的な携帯端末を組み合わせることでデジタル書籍に拡張可能なシステム，アクティブ・テキスト（以下，A-txt）を考案した．A-txtによって，デジタル教材の自由な開発環境を実現し，教材の製作および導入を容易にすることが可能となる．これまでに，システムの核となる携帯端末向けアプリケーションおよび教材データを提供するサーバ機を開発し，基本システムを構築した．

1-010

携帯型ゲーム機を用いた工学部学生の英語学習に関する研究

○伴 浩美（長岡技術科学大学）

携帯型ゲーム機ニンテンドーDSは，タッチスクリーン，音声認識などの斬新な操作方法を取り入れたものであり，任天堂が「所有者の生活を豊かにするマシン」を目指すと述べたように，単なるゲーム機であるにとどまらず，教育や教材にも活用されている．近年，グローバル化が進むにつれ，英語コミュニケーション能力が益々重要視されてきており，紙ベースの問題集に加え，最近はeラーニングの一種である，PCやDSの学習ソフトも種々発売されるようになってきている．本研究では，DSソフトを大学において教材として導入，有効に活用していく可能性を探ることを目的とし，英語学習DSソフトに関する調査を行った．すなわち，英語学習DSソフトに対する感想や学習効果について，工学部学生を対象として調査を行った．

1-011

ブロック型スマートハウス電力管理学習教材の開発と活用（Ⅱ）

◎大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

IOT技術の発展に伴いインターネットにつながる家電製品が普及しつつある。その一旦を担うシステムが、HEMSである。個々の家電製品の識別のため、通信プロトコルが、ECHONET Liteによって規格化されている。このプロトコルによりタブレット端末での家電製品の遠隔のため、家電製品の種類と機能を認識し快適な生活空間を創り出す研究が進められている。今後、HEMSを私達が身近に感じ、技術学習者や関係者がシステム作りの研究開発を行うと考える。本報告は、HEMSの機能を体験的に学習できる教材開発を目的として、特にECHONET Lite通信規格を含めた簡易学習教材を試作し、その機能を報告する。

1-012

ユーザビリティを考慮した薬剤情報提供サイトの構築

◎谷口 昂・泉 隆・泉澤 恵（日本大学）

改正薬事法の施行に伴う一般用医薬品による副作用発症者数の増加が懸念されている。この対策として、様々な閲覧者が利用できるユーザビリティを考慮した薬剤情報を提供するWebサイトの構築を検討する。本稿では、構築した薬剤情報提供サイトにおけるユーザビリティの向上について検討した。

1-013

学生実験用風力発電シミュレータの開発

○上町俊幸（石川工業高等専門学校）

現在，パワーエレクトロニクスの普及に伴い，パワエレ技術者の育成のための学習支援システムの開発が望まれている。本稿では，パワエレ学習支援システムの一部として，学生実験へ利用が可能な，小型の風力発電シミュレータを開発したので報告する。このシミュレータは，風車と発電機を合わせたシステムを模擬するため回転部分を持たず，安全であるため，学生実験に適している。

1-014

アルゴリズム学習のための動的コンテンツ

◎瀬来健人・大村道郎（広島工業大学）

アルゴリズムを学ぶとき，説明を見ると同時に実際にプログラムを動作させながら学ぶと，より理解が進むと考えられる．ここでは，VLSIレイアウトに関連するアルゴリズムに特化した動的コンテンツをCanvasとJavaScriptによってウェブ上に作成し，実際にコンテンツを動作させながら学ぶことができるホームページとして完成させた．

1-015

複数の近似解を用いる残差切除法のモーメント法への適用

○濱田昌司（京都大学）

完全導体立方体空洞内にヘルツダイポールを置いた際の高周波定在波電磁界を、電界積分方程式に基づくモーメント法で解析する問題を扱う。波長を固定し空洞辺長Lを増やしてモデルを変更し、計算を続けると、反復解法の収束性の悪化(≒行列ベクトル積(MVM)回数の増加)が見られる。これにはLの増加に応じた悪化と、共振点近傍での局所的で重度な悪化の両方が含まれる。前回、BiCGSafe法を残差切除法(RCM)の副反復に用いる反復解法により、MVM数を最良時で37%にまで削減できた。今回、RCMの残差最小化方程式に用いる近似解を1個から複数個に拡張し、MVM数の削減を試みた結果、最良ケースで30%前後にまでMVM数(≒計算時間)が削減された。

1-016

Numerical Investigations on Thermal Interactions between Ar Thermal Plasma and Titanium Powder in Induction Thermal Plasma Torch

○シレガージュリアンタ・兒玉直人・田中康則・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

The inductively coupled thermal plasma (ICTP) is widely used as an effective heat and chemical source to various material processing. One application of the ICTP is nanopowder synthesis. In this report, we fundamentally investigated thermal interactions between titanium (Ti) feedstock powder and Ar thermal plasma as a test case for Ti nanopowder synthesis, by using the developed numerical model. The result show that temperature in plasma torch without Ti feedstock powder is bigger than with Ti feedsock powder. Mass concentration in Ar thermal plasma with Ti feedstock powder has produces a high density region of Ti vapor downstream of the plasma torch.

1-017

2つの給電ポートを有する電子レンジにおいて異なる周波数の電力を励振した場合の食品の均一加熱に関する検討

◎江尻敬祐・富塚祐介・大野貴信・谷井宏成・上原正啓（木更津工業高等専門学校）

マイクロ波加熱は高速かつクリーンな加熱が可能であるため，医療，化学，家庭などの幅広い分野で応用されている．しかしながら，加熱炉内に定在波が発生することによって加熱ムラが生じるといった問題があり，電子レンジによるマイクロ波加熱では給電位相を制御することで加熱特性を改善する加熱方法が提案されている．本研究では，位相差に着目しつつ給電位相の制御を必要としない加熱方法として2つの給電ポートを有する電子レンジにおいて異なる周波数の電力を励振した場合の食品の均一加熱に関する検討を行う．

1-018

数MHz帯域における非接触充電の電力伝送効率の周波数特性の一考察

◎森本浩之・柳井 徹・米津大吾（関西大学）

本報告では，検討する周波数を数MHz帯域とし，実験により送・受電コイル間の距離や充電池電流を変化させた場合の電力伝送効率の周波数特性の変化を調べ，得られた結果は・送・受電コイルの巻数の違いより，長距離の電力伝送には自己インダクタンスが大きいコイルが適しており，近距離の電力伝送には自己インダクタンスが小さいコイルが適していることが明らかとなった．・相互インダクタンスに関係せずに自己インダクタンスとキャパシタンスで決まる共振周波数で電力伝送効率が最大となるのは，送・受電コイル間の距離を離す，あるいは小電力を伝送する場合であることが明らかとなった．・電力伝送効率は受電側への供給電力が小さいほど高くなることが明らかとなった．であった．

1-019

誘電体と導体で構成された角柱物体による電磁波の散乱

岸田 航・尾崎亮介・○山崎恒樹（日本大学）

近年，導体と誘電体が混合した任意形状物体の散乱問題が注目され,積分方程式法, モーメント法,有限要素法, FDTD法など色々な解法で解析されている．アトム法は散乱体の分極に着目し,導体と誘電体を同時に扱えるため,ストリップ導体に誘電体を装荷した混合物体の解析等には有力な解法の一つである. 本文ではアトム法を用いて誘電体と導体が混合した角柱物体による電磁波の散乱を解析し,誘電体が散乱特性に及ぼす影響を検討した.

1-020

先端パワーエレクトロニクス技術体系教育講座アドバンスト・コースの開講と初回実施報告

○宮代文夫（よこはま高度実装技術コンソ―シアム（YJC））・河村篤男・羽深 等（横浜国立大学）

NEDOの委託を受け、横浜国立大学が主となり実施した「先端パワーエレクトロニクス技術教育体系講座」のアドバンスト・コース（2016年12月に6日間にわたり実施）の第1回実施報告である。内容はSiC等WBG(ワイドバンドギャップ)デバイスによるパワーモジュール試作に焦点をあて、その設計、試作、実装、解析、シミュレーション等について座学講義、見学、特別講義+Q&A等の施策により実施したもので、講師陣は横浜国立大学の教授陣、有力企業の技術者などで構成し、大学研究室、試作メーカ、公的機関の見学も織り込んで実証面の充実を図った。基礎と実験を扱うベーシック・コースと併せ、年2回x20名、3年間実施予定の人材育成教育コースで、対象はメーカの中堅技術者。

1-021

先端パワーエレクトロニクス技術体系教育講座ベーシック・コースの開講と初回実施報告

○河村篤男・小原秀嶺・羽路伸夫・羽深 等（横浜国立大学）

パワーエレクトロニクスは，幅広い知識と最新技術に基づいた総合工学技術である点に特徴があり，技術分野全体を俯瞰し，新たな発想に基づいて今後の技術開発を牽引して行く技術者の養成が求められている。このような背景から，横浜国立大学は，NEDOの委託を受け，「先端パワーエレクトロニクス技術体系教育講座」を開講するに至った。 本稿では，本教育講座の概要について紹介し，2016年8月18〜24日に開催されたベーシック・コースの初回講座の様子と成果について述べる。

1-022

電源線から入力するEFT/Bに対する耐性向上の検討

◎佐々木秀勝・佐野宏靖・大森 学（東京都立産業技術研究センター）

イミュニティ試験の1つであるEFT/Bは、高速なパルス波形を製品に入れることで誤動作が起きないことを確認する試験であり、低電圧化する電子製品の誤動作は増加傾向にある。そこで、EFT/Bに対して耐性を持たせるための対策方法について提案した。電源線から入力されたEFT/Bによって基板に発生した電圧を高電圧差動プローブによって観測することで、誤動作の要因の1つにEFT/BによるICの電源電圧変動が挙げられることを示した。次に、基板の電源部分の等価回路を作成し、ICの電源電圧変動を抑制する箇所を回路シミュレータを用いることで明らかにした。EFT/Bによる電位差がICの正常動作を確保できる程度に抑制した基板を作製し、EFT/Bによる誤動作が起きないことを示した。

1-023

パルス状ノイズ検出装置の評価

○桑原 崇・明星慶洋・小林遼太・山梶祐介・廣瀬健二・大橋英征（三菱電機）

静電気のような高電圧ノイズが電子機器に侵入すると電子機器内のIC故障や誤動作の原因となる。このため、装置や基板のノイズ耐性を評価するためにESD(Electro-Static Discharge：静電気放電)試験が実施される。しかし、静電気は、パルス幅がns程度の高速パルス状ノイズであるため、伝搬経路の把握が難しいという課題がある。ノイズ伝搬経路可視化手段として、測定対象物を一点観測しては隣の観測点に移ることを繰り返すことにより、ノイズ伝搬経路を把握する装置がある。しかし高電圧ノイズを電子機器に観測点数の分だけ印加しなくてはならず、何度もノイズ印加するうちに電子機器が故障し、測定途中から異なる結果となる可能性が生じる可能性もある。 そこで筆者らは、静電気ノイズの伝搬経路の評価を目的として、蝶状形状のコイルをアレイ状に多数配列したセンサと、アナログ検波回路により、印加ノイズの伝搬経路を可視化する検討を行ってきた。本稿では、高速応答かつ高感度な検波回路と装置を試作および評価したので報告する

1-024

ESDイミュニティ試験における垂直結合板の高さ変化に伴う電流分布の測定

◎小池龍太・川又 憲・石上 忍・嶺岸茂樹（東北学院大学）

静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)に対するイミュニティ試験は国際規格IEC61000-4-2で規定されている．本試験は直接放電試験と間接放電試験が定められているが，間接放電試験では，垂直結合板の高さやESD電流の注入点等に明確な規定がなく，試験結果に影響を及ぼす可能性がある．本報告では，これらの影響を検討するため垂直結合板上の電流分布に着目し，垂直結合板の高さをパラメータとし，電流分布の測定を行った結果について述べる．

1-025

厚みの異なる誘電性粘着剤を用いてMSLにNSSを貼付した場合の透過特性に関する検討

◎富塚祐介・江尻敬祐・佐藤宏樹・大野貴信・谷井宏成・上原正啓（木更津工業高等専門学校）

高周波ノイズの対策として用いられるノイズ抑制シート(NSS) は粘着剤を用いて伝送路等に貼り付けて使用する方法が一般的である. この際，粘着剤がマイクロストリップライン(MSL) の透過特性に影響を及ぼすことが懸念されている. そこで本研究では，厚みの異なる粘着剤を用いてMSL にNSS を貼り付けた場合の透過特性について解析的に検討を行う.

1-026

同軸管法における透過係数と反射係数から得られる複素比誘電率の推定精度に関する検討

◎佐藤宏樹・富塚祐介・大野貴信・谷井宏成・上原正啓（木更津工業高等専門学校）

複素比誘電率の推定方法の1つである同軸管法は反射係数S11及び透過係数S21の大きさ及び位相の計4つの値を測定することにより，複素比誘電率を推定する手法である．これまでは|S21|と∠S21の組み合わせが用いられることが多かった．そこで本研究では，S11とS21の組み合わせによって複素比誘電率を推定し，その精度に関して解析的に検討を行う．

1-027

直流試験送電線によるイオン流現象の測定

◎渡邉卓磨・宮島清富・椎名健雄（電力中央研究所）・平田直樹・北村敏夫（東京電力パワーグリッド）

直流送電は，電力安定供給を確保するための広域連系を目的として，近年その必要性が再認識されている。直流送電線では交流送電線の場合と異なり，課電電圧の極性が変化しない。このため一方向の電界が生じ，電線のコロナ放電により生成されたイオンが電線から地上へ向かう，いわゆるイオン流現象が発生する。このイオン流は，送電線下の人体や物体に流入することで帯電を引き起こすため，イオン流帯電電圧は，わが国における直流送電線の電線地上高を決定する際の参考値となっている。本稿では，直流送電線と周辺環境との相互作用を明らかにするため，実規模試験線を用いたイオン流現象の測定法と，測定結果の一例について述べる。

1-028

イオン流により帯電した人体の放電特性

◎椎名健雄・宮島清富・渡邉卓磨（電力中央研究所）・平田直樹・北村敏夫（東京電力パワーグリッド）

本発表は，直流送電線下のイオン流による人体帯電の放電特性や電撃感知の支配要因（帯電電圧，電荷量，通電時間等）を明らかにするため，人体帯電の放電特性と各要因に対する感知の程度を評価し，帯電方法による違いを検証した結果を報告する．イオン流により帯電した人体と靴を含む等価静電容量は160 pFと求まり，静電気での帯電に近い特性が得られた．イオン流帯電のアンケートでの感知の程度は，電荷量 0.2-0.4 μCの範囲で被験者の50%以上が感じる（2以上）と答えた．これらのイオン流帯電の放電特性に関する静電容量と電撃感知閾値は，これまでに報告された静電気放電などでの値と同程度であることがわかった．

1-029

直流送電線に用いられる電線のコロナ電流特性

○宮島清富・渡邉卓磨・椎名健雄（電力中央研究所）・平田直樹・北村敏夫（東京電力パワーグリッド）

高電圧の架空直流送電線では，電線から発生するコロナ放電により，線下の人体や絶縁物が帯電する現象がある。このため，直流送電線の建設にあたっては，電線から発生するコロナ放電の特性を事前に把握する必要がある。本件では，実送電線に使用される電線を用い，送電線実規模測定にて，電線から発生するコロナ放電の電流の特性を明らかにした。

1-030

植物焼成粉体を配合した射出成形体の電磁波吸収特性

◎大宮一寿（山形大学）・兼岩敏彦（旭有機材）・山本真一郎（兵庫県立大学）・飯塚 博（山形大学）

農業系副産物は家畜の飼料や肥料として多く用いられているが，工業的に活用されている例は少ない．著者らはこれまで，農業系副産物の工業的有効利用を目指して，それらを炭化焼成し，その炭素粉体を配合した電磁波吸収体を開発してきた．本研究では，農業系副産物から作製した植物焼成粉体を配合したシート材を射出成形により作製し，その優位性を評価した．また，比較材としてペレット成形，及び紙抄き法を応用した抄紙法でも同様に作製した．

1-031

植物由来多孔質構造の電磁波吸収特性への影響

◎羽賀大真（山形大学）・兼岩敏彦（旭有機材）・山本真一郎（兵庫県立大学）・飯塚 博（山形大学）

農業系副産物は一部では飼料として利用されているか，安定的に産出されるにも関わらず工業的な利用は少ないのか現状である．著者らは農業系副産物に着目し, それを窒素雰囲気中で炭化焼成することによって得られる植物焼成粉体を開発した．本研究では，この植物焼成粉体とポリエチレン繊維を複合組織化したプラスチック系複合材料を作製し，電磁波吸収特性を評価した．その際，植物由来多孔質構造及び多孔質構造が電磁波吸収特性に及ぼす影響について検討した．

1-032

開発した低周波磁界プローブアンプを用いたACアダプタのノイズ源位置標定の基礎検討

○福山晃大・松本康貴・神代真也・大塚信也（九州工業大学）・山田健伸・吐合一徳（安川電機）

電子電気機器の耐ノイズ性の要求は年々高まっており、特に低周波帯域に注目が集まっている。この帯域の対策技術開発には、この領域のノイズを感度良く測定する必要がある。本論文では、100kHzから1MHzに感度を持つ低周波磁界プローブアンプ（直方体の磁性体を挿入した5．5巻のコイルでアンプ利得は60dB）を用い、ACアダプタの電磁環境ノイズ測定し、また、ACアダプタのX線透過像をもちいることによってノイズ源の位置標定を行った。その結果、パルス波形の正のピーク値に強度分布が見られ、ACアダプタ内のトランスのエッジ部でその強度が最大であることがわかった。

1-033

DDS発振器の精密スペクトル形状

○平野 育（産業技術総合研究所）

水晶発振器等の非常に鋭く狭いスペクトルは、市販のスペクトルアナライザーでは分解能が1Hzであり、しかも、周波数安定度の高い周波数基準を利用しないと、キャリア近傍〜1kHz程度までのスペクトルの精密な算出は難しいため、精密なスペクトルの算出はされていない。さらに、温度コントロールされた市販の周波数安定度の高い水晶発振器のキャリアに対するパワースペクトル密度は発振中心周波数から1Hzはなれると、-100dBc/Hz以下になり、スペクトルの半値幅、共振の鋭さQの精密な算出はなされていない。そこで、測定時間を1000sまで拡張することにより、周波数分解能を1 mHzまで上げることを試みた。

1-034

Impedance Transformerにおける浮遊容量及びプローブの影響についての検討

◎西原亮輔・中西哲也（日本大学）

現在、がん治療に最も効果的な重粒子線照射法としてスポットスキャニング法がある。しかし、多数のスポットに照射するため高速制御が必要である。ビーム取り出し法として、RFKO装置とパルス四極電磁石（PQ）を用いたQAR法が適している。QAR法に使用する周波数は1〜17[MHz]である。RFKO装置はIT（Impedance Transformer）とAPN（All Pass Network）で構成され、ITの高効率化を研究の目的としている。ITの特性劣化の原因と考えられるトランスの浮遊容量についてLTspiceを用いた回路解析により検討した。その結果、トランスの浮遊容量が特性に影響することが分かった。一方、高周波プローブの静電容量が測定結果に影響していることが分かった。

1-035

低インピーダンスシャント抵抗器の開発と特性評価

◎昆 盛太郎・山田達司（産業技術総合研究所）

電力系統などで用いられるような高電圧・大電流分野におけるニーズに対応するために、シャント抵抗器の精密測定が可能な範囲をより低インピーダンス領域へ拡張する必要がある。そこでこれまで電流比較型のブリッジ回路の改良を行ってきた。これを用いれば、原理的には従来よりもはるかに低いインピーダンスのシャント抵抗器を測定できるが、公称値からのずれが大きいシャント抵抗器では、測定の不確かさが大きくなる。そこで、新たに公称値1 mΩ以下でかつ公称値からのずれが小さい標準シャント抵抗器を開発した。本稿では開発したシャント抵抗器の試作器とその特性評価の結果について紹介する。

1-036

位相測定時のインピーダンス不整合への考察

○山田達司・昆 盛太郎（産業技術総合研究所）

位相測定時における信号ケーブルと位相計とのインピーダンス不整合の影響を懸念している。そこで、本発表ではそのインピーダンス不整合における位相測定への影響を考察した。測定では、インピーダンスアナライザを使用し、位相計の入力インピーダンスおよび使用する同軸ケーブルの特性インピーダンスを測定した。それらの測定結果から、反射係数の位相成分を算出し、そこからインピーダンス不整合による位相計の測定誤差を算出した。その結果より、インピーダンス不整合による影響を考察した。

1-037

電力標準用サーマルコンバータの開発

○藤木弘之・天谷康孝（産業技術総合研究所）

交流電力の国家標準は、電圧標準、電流標準、位相角標準の個別の国家標準を組み合わせて実現されている。これら標準の中で、交流電圧標準はサーマルコンバータを用いて、直流電圧と交流電圧をジュール熱に変換し、それら実効値を比較測定することによって導かれている。従来のサーマルコンバータのヒータ線は細線のため過電流で壊れやすく、印加できる電圧範囲も限られいた。このため、電力標準では、交流電圧の基準としてサーマルコンバータを用いることはなく、交流電圧計などが用いられ、不確かさは大きくなっていた。今回、交流電力標準にサーマルコンバータを直接用いることを目的としたーマルコンバータの開発を行なったので報告する。

1-038

電圧位相差を用いた三相交流電力の測定法の検討

◎圓句拓海・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・小林昭二（エネサイバー）

近年、電力需要の増加に伴って省エネに対する関心が高まっている。省エネの一つの方法として、スマートグリットが注目されている。スマートグリットの実現には、リアルタイムで消費される電力量を把握する必要がある。しかし、電力計には高価な電流センサ用いているため、電力計のコストダウンが要求されている。そこで、本研究では電流を測定せずに電源側と負荷側の電圧位相差を用いて電力を求めることを目的とした。送電方式には様々な方式があり、本研究ではビルや工場に多く用いている3相3線式における、電圧位相差による電力測定法の検討を行った。

1-039

電圧位相差を用いた配電系統の電力測定方法の検討

◎にっくむじゃひだー・山本勝也・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・小林昭二（エネサイバー）

従来一般的に行われている電圧・電流による電力測定と異なり、電圧位相差を用いた電力測定手法の検討について報告する。

1-040

レーザーラマン分光法を用いた携帯型油種識別装置の開発

○笠岡 誠・中井政明（かんでんエンジニアリング）・染川智弘・藤田雅之・井澤靖和（レーザー技術総合研究所）

油入機器周辺で油分が発見された場合、油種を識別し漏油元を特定することが行われている。この油種の識別を現地で迅速に行うために、携帯型油種識別装置を開発した。785nmを励起光としたレーザーラマン分光法により鉱物油系絶縁油，菜種油ベース絶縁油，大豆油ベース絶縁油，アルキルベンゼン等を識別することが出来る。また、環境中の油分を現地で分析可能とするため、前処理無しで水面に浮かんだ油膜の油を識別することが出来るようレーザーを集光し、さらに反射光が検出部に入らないようにしている。油種の識別はあらかじめデータベース化した標準油のスペクトルをニューラルネットワークで学習しておき、実際の油のスペクトルを識別することで自動識別出来る。

1-041

IH調理器によるSUS430製鍋の発熱量予測

◎小幡翔平・西田圭佑・松浦高行・米津大吾（関西大学）・大久保 博・西尾博文・東城哲郎（東洋炭素）・上関俊也（オーシン）

本報告では、4種類のIH調理器で磁性体のステンレス鋼SUS430製鍋を加熱した際の鍋の発熱量と磁界，周波数の関係から求めた近似直線により最適な発熱量予測方法を提案する。磁界を測定するプローブの置き方について検討した結果、磁界プローブ断面をコイルに垂直に鍋から半径方向に20mm離した位置で電圧を測定することで鍋の発熱量が精度よく予測できることが明らかとなった。

1-042

レーザーを用いたコンクリート構造物内部欠陥高速検査装置の開発

◎倉橋慎理・北村俊幸（レーザー技術総合研究所）・岡田 大・近藤修司・三上勝大・長谷川 登・錦野将元（量子科学技術研究開発機構）・島田義則（レーザー技術総合研究所）

レーザーを用いた社会インフラの遠隔検査技術の開発を行っており、実用化のためには検査の高速化が求められている。 レーザー干渉計、ガルバノミラーからなる計測装置の開発を行い、得られた結果をリアルタイムで解析し、検査対象の健全性をその場で表示可能な高速レーザー計測システムを構築した。本システムと量研機構が開発した高繰り返しパルスレーザーを用いて、コンクリート供試体内の人工欠陥を検出する実験を行い、高速に健全性評価が行える事を示した。

1-043

電子デバイス製造におけるスプレー洗浄時の静電気計測

◎松岡博幸・松木慎悟・丹菊大輝・森 竜雄・清家善之（愛知工業大学）・小林義典・宮地計二（旭サナック）

近年の電子デバイス製造においては、スプレー洗浄による洗浄工程が多く存在する。しかし、その工程において電子デバイスに静電気障害が発生する問題がある。そこで本研究では、ファラデーケージを試作し、スプレーした飛行液滴から発生する電荷量を測定した。その結果、スプレーの噴射圧力の上昇に伴い電荷量が増加し、比抵抗値の上昇に伴い電荷量が増加した。

1-044

電気定位による3次元32ch水中センシングシステムの開発研究

◎横井嵩憲・露木完吾・鈴木健太・渡辺 司・小出 剛・三枝幹雄（茨城大学）

南米やアフリカに生息する弱電気魚は、体内に発電器官を有しており、電気定位と呼ばれる微弱な放電を用いたセンシングシステムを駆使し、周囲にある障害物や餌などを検知して生活している。電気定位には、イルカが超音波を用いて行う反響定位ではセンシングすることが困難な気泡を含んだ水中でもセンシングすることが可能であるといった利点がある。本研究ではこの電気定位の工学的応用を目指し、その原理を基にした水中センサーの研究開発を行っている。 本研究室で新たに製作した水中センサーが有用であることを確かめるため、数値解析ソフトを用いた解析結果と評価実験の双方から性能評価を行い、実際に物体が検知可能であることを確認した。

1-045

CARSを用いた水素ガスリークディテクタの開発

○杉本幸代・三木啓史・朝日一平（四国総合研究所）・椎名達雄（千葉大学）

東京オリンピックの開催に合わせ，多数の商用ステーションの実運用が開始されるなど，水素エネルギ利用に向けた各種実証研究等が加速度的に推進されている。その一方で，水素貯蔵設備等においてガス漏洩が生じた場合，発泡剤の滴下によるリーク箇所の探査を除き，未だ有効な検索手法が確立されておらず，新たな技術開発が望まれている。我々はこれまでに，CARS法を用いて，周囲の構造物等による外乱光の影響を受けず，瞬時に微量の水素ガスを検知し，能動的にリーク箇所を探査・特定できる技術の開発を進めてきた。本報告では，リーク箇所を検索する際に用いるプローブを開発したので，その構造と機能検証の結果について述べる。

1-046

HS-GC法によるフルオロケトン系絶縁溶剤の分解性評価

◎宮本彩加・久保田 諒・和田豊仁（島津製作所）

電気設備における代表的な絶縁溶剤としては，フロン系化合物がある。しかし，地球温暖化係数（GWP）が高い化合物も多く，GWPのより低い代替化合物の検討が進められている。本検討では，代替化合物の一つとして注目されている，GWPが1のフルオロケトン系絶縁溶剤の分解性評価を行った。分析にはヘッドスペース-ガスクロマトグラフ（HS-GC）法を用い，検出器にBIDを搭載したGCを使用した。 保温温度100℃，200℃，300℃の3段階で分解物を比較した。高温になるにつれ，分解物の増加，およびPFCsガスの発生を確認した。本システムを用いることで，高温での分解物の発生を簡便に評価することが可能である。

1-047

IC用超音波非破壊故障解析法の充填剤の影響

◎松井拓人・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・大高章弘・松本 徹（浜松ホトニクス）

電子デバイス(IC) 配線の故障箇所絞り込み技術として実用化されているOBIRCH法(Optical Beam Induced Resistance CHange)(1)は、光ビームの加熱により誘起される配線の抵抗変化を検出する手法である。しかし、不透明な樹脂で保護された対象物では光の減衰が大きく適用が困難である。そこで筆者らは光に代え集束超音波を利用するSOBIRCH法(ultraSOnic Beam induced Resistance CHange)(2)を提案し検討を行っている。保護樹脂がない場合および保護樹脂が充填剤を含まない場合については比較的良好な結果が得られている。実用に近い充填剤の粒径を想定した場合、SOBIRCH法のキャリア周波数を40 MHz程度まで下げることで比較的良好な像が得られることが判った。今後は散乱の影響を詳細に調査し、空間分解能の検討を行う予定である。

1-048

超音波顕微鏡を用いたC2C12筋芽細胞の分化過程の定量的評価法

◎高梨恭一・鷲谷 衛・太田一城・吉田祥子・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・小林和人（本田電子）

超音波顕微鏡を用いて、分化誘導前後のC2C12筋芽細胞の特性音響インピーダンスの算出を行い、その推移について評価を行った結果を述べる。細胞からの反射波形を取得した後、特性音響インピーダンス値を算出した。同条件で培養した2つのサンプルを使用し、分化誘導を10日間行った。分化が進んでいる細胞の特性音響インピーダンス値は約1.75 MNs/m³前後を示した。一方、分化が進むと、光学顕微鏡画像で細胞を確認できるが、音響インピーダンス像では確認できない箇所があった。この細胞は非常に脆く、分化は進まないと考えられる。以上より、3次元化した細胞でも、その音響物性を評価でき、筋繊維へと分化する細胞の判別が可能であることが示唆された。

1-049

ES細胞由来の神経伝達物質放出測定時の拡散による影響の検討

◎馬渕 光・高橋信人・吉田祥子・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・関野祐子・佐藤 薫（国立医薬品食品衛生研究所）

生体内の神経細胞は神経伝達物質を放出することで，周囲の細胞に情報を伝達している．この神経伝達物質の放出状況を観察することで，神経細胞の分化状態や神経回路形成を確認することができる．本研究では，ES細胞由来の伝達物質放出を測定可能な装置を開発し，測定時の拡散による影響を解析した．グルタミン酸放出点を中心軸上の1点と仮定して，球面状の拡散過程から，時間と距離に応じた濃度分布を計算した．その結果，薬物刺激による放出過程の観測に必要な時間分解能を400 msとすると，生体試料と検出面との間を23 µm程度以下にすることが必要と考えられる．

1-050

分布誘電率推定における空間分解能に関する数値電界解析

◎山野辺 裕・相知政司（千葉工業大学）

誘電率の分布を周囲からの計測によって推定することは，物体の非破壊検査等の応用につながるとして近年研究が進んでいる。従来の研究において長間隔の測定電極と補助電極を用いて実験と数値電界解析を併用し研究が行われてきた。しかしその研究において空間分解能に関しての検討が十分になされてなかった。そこで本研究では有限要素法(FEM:Finite Element Method)による数値電界解析によって空間分解能について検討を行った。今回は中心からの距離dを30±2 mmとし，静電容量と電位の変化を検討した。その結果位置ずれによって値が変化することが分かった。またこの変化を実際に判別するためには静電容量では0.5 f F 以上の測定精度が必要になることがわかった。

1-051

家庭用エアコンを対象とした熱処理量推定システムの開発

○近藤修平・上野 剛・宮永俊之（電力中央研究所）・北原博幸（トータルシステム研究所）

わが国の住宅分野では, 省エネ基準の改定に基づく建物の断熱性能が向上しているため，空調機が想定する熱処理の能力と実際の処理すべき熱負荷が整合していない可能性がある．このため, 住宅における空調機の選定には現場実測による性能評価が重要である．上野らは家庭用エアコンを対象として, 室内外の温度・湿度データ及び熱処理量から消費電力量を推定するモデルや, この逆モデルに基づき利用条件と消費電力量が既知の場合に空調機の熱処理量を推定する手法を提案している(1) ,(2) ,(3)．今回の開発では，これらの知見と近年低廉化が進む各種デバイスにより測定システムを具現化する．本報ではシステムについて紹介する．

1-052

パルスドップラーレーダ干渉計のための視線方向速度情報を活用する複数目標追尾法

◎佐保賢志（立命館大学）

レーダを用いた移動目標の測位と追尾は、ロボット等のモニタリングにおける主要技術である。このような応用のための小型センサとして、パルスドップラーレーダ干渉計(以下，単に「干渉計」と呼ぶ) が提案されている。干渉計により、カメラ等では困難な暗所等での高精度な位置と視線方向速度の同時計測が実現する。しかし、従来のレーダ追尾技術の多くが位置のみの観測を想定しており、速度情報を用いた精度改善についてはあまり検討されていない。本研究では、干渉計の観測視線方向速度情報を活用することにより、複数目標を高精度に追尾する手法を提案する。本稿では特に、この追尾法における重要な機能であるアソシエーション（異なる時刻間の計測点の対応付け）の高精度化法について述べる。

1-053

超音波顕微鏡を用いた皮膚の深さ方向の音響物性評価

◎近藤寿成・陳 偉健・穂積直裕・吉田祥子（豊橋技術科学大学）・小林和人（本多電子）・小倉有紀（資生堂リサーチセンター）

非侵襲的に生体組織を観察する方法として超音波Bモードエコー像が用いられている。医用などのBモードエコー像は散乱体および異種間組織界面からの反射強度を画像化するため、基本的には形状のみの情報が得られる。Bモードエコー像を構築している反射波形のRF信号を用い、適当なアルゴリズムに基づき奥行方向の特性音響インピーダンス分布に変換することができれば、組織切片を擬似染色して観察したものと同等の画像を作成する可能性がある。本報告ではこの計算アルゴリズムと、低周波数領域で発生する信号処理上の問題および解決方法について検討した結果を述べる。

1-054

端子間電圧型レーザー距離センサの自己結合信号処理に関する研究

◎吉松 剛・五島敬史郎・青木道宏・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

自己結合効果によるレーザー端子間電圧の僅かな変動を検出してセンシングを行う、フォトダイオードを必要としない距離センサの研究が行われている。本距離センサは距離信号(MHP)を増幅して出力すると同時に、ノイズも増幅して出力するため、端子間電圧変動分とノイズの違いを電圧の大きさで判断する事はできない。センサの出力電圧を2値化して、周期のヒストグラムを作成し、MHPの周期を測定すると、ヒストグラムからMHPを測定する事は可能であるが、2値化されたノイズが長周期のMHPの検出を阻害する。そこで、MHPの周期をヒストグラム上で確認する信号処理を、Zynqボード(Zybo)を用いて行った結果について報告する。

1-055

SoCを用いたレーザマイクロホンの雑音低減

◎水嶋大輔（愛知工業大学）・山口 剛（三菱スペース・ソフトウェア）・五島敬史郎・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

導体レーザ(以下LD)の自己結合効果を応用したレーザマイクロホンは簡単に構成でき、広帯域に平坦な周波数特性を持つ光マイクロホンである。しかし、レーザマイクロホンは出力信号に重畳した雑音成分が多く実用が難しい。本研究は、レーザマイクロホンの実用化のために最適なディジタル信号処理を一つのICにCPUや論理ゲートアレイを集積したSoC(System on Chip)を用いて実現することを目標としたものである。発表では、いくつかの信号処理方法毎にレーザマイクロホンに適用した場合の特性の変化等を報告する。

1-056

レーザを用いた対象物の高さ・速度同時測定

○道廣豊起・五島敬史郎・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

近年、ファクトリーオートメーション化に伴い、ライン上を連続的に流れる製品の形状やライン上の速度測定に関するレーザセンサの研究が行われている。そこで、本研究では半導体レーザの自己結合効果を用いて測定を行った。自己結合効果とは、レーザからの出力光と対象物に当たって散乱した光の一部が干渉して光出力の増減が生じ、さらに共振条件を満たした時、光出力が最大になる現象である。この現象を利用し、ベルトコンベアで対象物の高さ・速度同時測定を行った。また、半導体レーザの入射角度を変化させた際の対象物の高さ・速度誤差に関する依存性の測定を行った。

1-057

レーザラマン分光法によるマルチガス計測装置の高感度化

◎市川祐嗣・杉本幸代・三木啓史・朝日一平（四国総合研究所）

水素をはじめとするガス関連施設等において，応答性に優れ，応用範囲の広い光学式のガス計測装置に対する需要が高まってきている．筆者らは，これまで，レーザラマン分光法による小型のマルチガス計測装置の開発に取り組んできた．本装置は，光源レーザおよび検出器からなる本体と，小型のガス計測部が光ファイバで接続された構造となっている．本報告では，励起光源として使用するレーザの波長をより短波長のものに変更し，計測部の光学配置を最適化することにより，従来型に比べて10倍以上の感度向上を達成した．機能検証実験では，被検ガスとして水素およびメタンガスを使用し，ともに濃度1000ppmでの検出が可能であることを確かめた．

1-058

テラヘルツ反射パルス波の逆畳み込みによる塗膜下腐食生成物の屈折率評価

○布施則一（電力中央研究所）・菅江清信（新日鐡住金）

テラヘルツ（THz）波は塗装材の断層検査や内部欠陥検出に有効である。塗装材裏面が変状物質と接する場合，この界面からの反射THzパルスにもとづき，変状物質の同定に関わる分析が可能と見込まれる。本研究では，表・裏面からの反射パルスを逆畳み込み計算により分離し，更に周波数解析することにより裏面物質の屈折率を計算した。

1-059

パルス光を用いた多重化したファイバブラッググレーティングの動的ひずみ測定

◎野口 歩・山口達也・篠田之孝（日本大学）

近年、橋梁やダム等の人工構造物の健全度を把握するため、常時モニタリングできるシステムが重要になってきている。本研究はファイバブラッググレーティング（FBG）をひずみセンサとして用いた構造ヘルスモニタリングシステムの構築を企図している。本文は、パルス光による多重化したFBGの動的ひずみの実時間測定を行った報告である。実験ではFBG間にオフセットファイバを挿入し，反射光の遅延時間を用いた時分割多重化を行った。FBGには各々ステージ移動を用いた引っ張りひずみ、圧電素子を用いた1kHzの振動ひずみを印加し、100μs毎に反射波長の変化を算出できることを示した。

1-060

赤外線と通電したHTCCネットを併用した消霧効果の検討

◎谷 翔樹・二宮健太・胡桃 聡・松村太陽・門馬英一郎・鈴木 薫・小野 隆（日本大学）

本研究は高速道路などで運転手の視覚障害となり交通事故や交通規制の原因となる濃霧を除去することを目的としている。これまでに霧中にHTCCネットを設置し、これに水分子の赤外吸収波長を含む赤外線を照射することで霧の除去に成功している。本稿では従来のHTCCネットに赤外線を照射する手法に加えてHTCCネット自体に通電させ昇温させたときの消霧効果についてネットの前後で霧濃度を測定した。その結果、HTCCネットに赤外線の照射と電圧の印加を組み合わせて昇温させることで、黒体放射の強度が増し、より高い消霧効果を得ることができた。

1-061

自然光の利用による照明消費電力の削減に関する研究

◎李 承霖・カビールムハムドゥル（秋田大学）・吉村 昇 昇（東北公益文科大学）

現在，室内照明器具の消費電力削減への対策として窓からの採光を利用することが挙げられる。しかし，太陽高度(太陽光線と地平面のなす角度)は，太陽が最も高く上る夏至の正午頃では約75，冬至では約30°というように，季節によって変動する。また，直接光は眩しすぎて，屋内作業に支障が生じることもある。そこで，ブラインド状の反射板などで入射光を天井に反射させることで，拡散光として屋内の照明の補助する事を考案した。本研究ではモンテカルロ法を用いた照度分布シミュレータを作成し，窓から入射する光の角度と窓での反射板の角度を変化させた場合の室内照明環境の比較と消費電力削減の可能性を検討した。

1-062

有機EL光源を用いたアノマロスコープの試作と性能評価

◎長堀大将・佐野勇司（東洋大学）

色覚異常の精密な検査に用いられるアノマロスコープには主に光学補正を要する点光源のLEDを搭載されており、大きく重たい。そこで，薄い面光源でありグレアも小さい有機EL光源を用いることにより、光学補正を最小限にして小型化できる可能性のあるアノマロスコープを試作した。検査に用いる円形視標の上下には、赤緑色の有機ELと黄色フィルタを介した白色有機ELを配置した。石原式色覚検査と100色相配列検査(ND100)によって抽出した一型色覚者1名と二型色覚者3名、及び健常者15名の被験者を、試作したアノマロスコープを用いて色覚検査した。その結果、100色相配列検査結果との類似性が確認できた。また、広い分光発光特性が得られることから、検査精度の向上も期待できる。

1-063

ガス漏洩位置探査に向けた小型ラマンライダの基礎検討

◎荻田将一・杉本幸代・三木啓史・朝日一平（四国総合研究所）

ガス漏洩時に漏洩位置を素早く特定する技術は，可燃性,毒性ガスを扱う分野において恒常的なニーズがある一方,現在の主な手法は発泡剤の滴下探査であり，位置特定の高速化が困難な状況にある。著者らはこれまでにラマンライダを応用したガス濃度遠隔計測装置の開発を行い，水素ガスの遠隔検知が可能であることを実証した。本報告では，プラント等の現場で用いることができるガス漏洩位置探査装置の実現を目的として，小型ラマンライダの開発に向けた基礎検討を行ったので，設計の概念及びガス計測事例等について述べる。

1-064

弱電離気体プラズマの解析(CXXXVIII) - C₃F₈ガスの電子輸送係数の測定

◎山口大地・川口 悟・高橋一弘・佐藤孝紀・伊藤秀範（室蘭工業大学）

二重シャッタードリフト装置を構築してE/N = 300 ~ 1000 Tdの範囲におけるC₃F₈ガス中の電子到着時間分布を測定するとともに，到着時間分布(Arrival Time Spectra : ATS)解析によりC₃F₈ガスの電子輸送係数を算出し，従来の実測値と比較した。電子到着時間分布はシャッター間距離が増加するに従い，電離増倍するとともに，分布は遅れて現れた。得られた分布から計算した平均到着時間はシャッター間距離に対して非常に良い直線性を示し，これを基に算出したC₃F₈ガス中の電子ドリフト速度はE/N = 300 ~ 500 Tdにおいて従来の実測値に近い値となった。

1-065

諸気体中の電子輸送係数と電子衝突断面積 VIII -電子スオーム法によるNOの電子衝突断面積の再検討-

○中村義春（元慶應大学）

以前われわれは純粋NOおよび微量NOとArの混合気体中において電子スオーム特性を測定し、その結果からNOの電子衝突断面積セットを決定した。しかしながら、その後、エネルギー分解能の高い低い電子エネルギーまで測定できる電子分光装置を使ったNO分子の弾性・振動励起断面積の共鳴構造を中心に精度の高い測定が行われてきた。さらに、NOが開殻分子であるために0でない電子スピンをもち、基底電子項は2つのスピン状態にに分裂するが、2004年に初めてこの準位間遷移の非弾性・超弾性断面積が測定された。一方、NOに関連する新しい電子スオーム特性の報告はその後ない。ここで、電子ビーム実験による新しい断面積データとわれわれの電子スオーム特性の対応を再検討する。

1-066

プロパゲータ法による直交電磁界下気体中電子速度分布関数計算

○菅原広剛・松本 涼（北海道大学）

本研究は磁化プラズマ中の電子輸送特性解析を目的とし，ボルツマン方程式を数値的に解き電子速度分布関数を求めるプロパゲータ法に磁界の効果を導入した。プロパゲータ法では速度空間を分割し各領域中の電子数を計算することで電子速度分布関数を得る。外力による加速や気体分子との衝突による電子速度変化は領域間の電子移動として演算子プロパゲータで表される。ローレンツ力が電子速度に依存し電子に働く加速は速度空間内では回転的となるため，加速プロパゲータの導出は煩雑であった。試作したプログラムを用いて直交電磁界下でモデルガス中電子群諸量を算出し，文献値と比較した結果を示す。また，計算技法上の諸課題について述べる。

1-067

対向発散磁界下誘導結合型プラズマ中の電子エネルギー分布（2）－分界面の上下および分界面通過位置により区別した電子の比較－

◎山本達平・菅原広剛（北海道大学）

誘導結合型プラズマに印加される対向発散磁界の分界面の電子閉じ込め効果解析のため、アルゴン中電磁界下の電子運動をモンテカルロ法により模擬した。これまでに閉じ込め効果定量評価のための領域移行判定基準を検討し，前報ではこの基準を用いて電子の分界面通過位置によるエネルギー選択性の違いを電子エネルギー分布解析により検討した。本報では分界面直上・直下対称的な位置で電子エネルギー分布を比較した。下部領域では共鳴磁界域直下のため全エネルギーに渡り分界面内側を通過する電子の割合が多かったが、平均エネルギーは分界面外側を通過する電子の方が高いとの前報の結果がサンプル数の増えた本解析でも観察された。

1-068

タウンゼント放電の絶縁破壊電圧を利用した二次電子放出係数の評価

○吉永智一・明石治朗（防衛大学校）

モンテカルロシミュレーションによって得られた電離・励起衝突回数を基に、陰極に流入するイオン・光子・準安定種の流束を概算することによって、タウンゼント放電の絶縁破壊電圧の実測値から、各流入粒子の二次電子放出係数を評価できないか検討した。

1-069

直流グロー放電の定常解の分岐に関する検討

◎村木智裕・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）

本研究は数値解析により直流グロー放電の自己組織化構造を再現し、その発生・維持の詳細な物理機構を解明することを目的としている。分岐理論により、二次元摂動に対する一次元定常解の安定性が変化する点は一次元構造解から二次元構造解への分岐点となることが分かっている。アルゴンと電子のモデルを用いて二次元摂動に対する一次元定常解の安定性の解析を行うことで分岐点の特定を行い、分岐点の一次元定常解と二次元摂動の和を初期値として二次元定常解解析を行った結果、電極の中心から側面へ向かってイオン密度と電子密度が減少する二次元構造解が得られた。

1-070

フェムト秒レーザを用いた高気圧アルゴンレーザプラズマの物性

◎牧野佑紀・土田晃輔・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

有機薄膜太陽電池は軽量で曲げられるという特徴があるためユビキタスな社会を実現するための電源装置として期待されている。有機薄膜太陽電池に使用されるガラス基盤に干渉加工を施し、配向制御をすれば発電効率を上昇させられる可能性がある。今回はフェムト秒レーザを用いて高気圧気体中でガラス基盤を加工する上でのレーザ生成プラズマの基礎データを収集するため、フェムト秒レーザを用いて高気圧下で発生させたレーザプラズマの物性計測を行った。

1-071

弱電離気体プラズマの解析(CXXXVII) - パックトベッド放電による模擬消化ガスの脱硫特性 (5) S原子のマスバランス

◎細井彰悟・西岡大介・高橋一弘・佐藤孝紀・伊藤秀範（室蘭工業大学）

パックトベッド放電を用いて模擬消化ガス(CH₄ : CO₂ : H₂S = 60 : 40 : 0.05%)の脱硫を行うとともに，そのときの分解生成物を詳細に分析し，S原子のマスバランスについて検討した。H₂S分解率は，充填剤としてガラスボールを用いた場合では，66.4%， Al₂O₃ボールを用いた場合では，98%となった。放電分解生成物としては，充填剤の種類に依らず，CH₃SH が生成されること，およびガラスを用いた場合のみ，SO₂の生成が確認できることがわかった。その他に，CS₂, COS, C₂H₅SHおよびC₂H₅SCH₃の生成が確認されたが，これらは微量であると予想できるため，硫黄の多くは電極や誘電体表面に付着・堆積していると考えられる。

1-072

針・平板電極系における大気圧ドライエア中部分放電の電界強度のギャップ長特性

◎玉城陽平・菊池祐介・永田正義（兵庫県立大学）・川野涼子・海永壮一朗・吉村 学・武藤浩隆・釣本崇夫（三菱電機）

我々はドライエアガス中の不平等電界下での部分放電や，トリプルジャンクション（TJ）に起因する沿面放電に対し発光スペクトル解析による放電空間中の換算電界強度（E/N）の評価を行ってきた。その結果，大気圧ドライエア中の絶縁物沿面が介在しない針-平板電極系では，1次ストリーマと2次ストリーマの発光波形を観測したが，TJを有する電極系では2次ストリーマの発光波形は観測できず，2次ストリーマに起因するE/Nの低下も見られなかった。しかし，2つの電極系におけるギャップ長の違いがストリーマ進展過程に影響を与えた可能性がある。本発表では，針-平板電極系のギャップ長を変化させたときのE/N測定結果を中心に報告する。

1-073

周囲ガス供給型プラズマジェットの時間分解観測

◎國方佑樹・赤田壮佑・寺西研二・下村直行（徳島大学）・伊藤晴雄（千葉工業大学）

著者らは, 誘電体バリア放電（DBD）により生成したジェット状プラズマの周囲に様々な種類のガスを独立して供給できる周囲ガス供給（SGF）型プラズマジェットの放電特性と応用について検討している。本報告では, 高速ゲートICCDカメラを用いてSGF型プラズマジェットの発光部を時間分解観測した結果について述べる。プラズマジェットをガラス円板上に距離10mmで照射した状態で観測を行った。時間経過によって発光形態が変化する様子が記録された。また, 周囲ガスとして窒素および空気を使用した場合において, 印加電圧が負極性のときに円環状の発光が観測された。

1-074

多相電源による大気圧MCS放電の高集積化

◎森 裕哉・若井皓希・稲田優貴・前山光明（埼玉大学）

本研究室では、マイクロホローカソード放電(MHCD)を電子の供給源として、第三の電極との間にグロープラズマを発生させるMCS(マイクロホローカソードサステインド)放電を用いたプラズマ源の開発を行っている。ガス処理能力を向上させるために、プラズマ源の大容量化が必要であるが、MHCD電極間距離を6mm以上とする必要があり、装置が大型化するといった問題がある。その問題を解決するために複数の電源による多相化MCS放電の検討を行った。各MHCDには時間をずらして繰り返しパルス電圧が印加される。異なる電源による放電の影響を考え、第三電極径を変化させて放電を行うと径が細い方が放電しやすいが、径が太い方が放電の発光が強かった。

1-075

ESD試験におけるシリコーンゲルで封止したプリント配線板上パターン導体間のフラッシオーバ電圧に及ぼす電極突起の影響

◎松本康貴・神代真也・福山晃大・大塚信也（九州工業大学）

筆者はこれまで、大気およびシリコーンゲル封止プリント配線板上円盤状パターン導体間でのフラッシオーバ電圧(FOV)特性を、ESD試験器を用いてギャップ長を変化させて測定している。シリコーンゲルの絶縁特性の理解には、封止するプリント基板の配線パターンによる電界形成の違いが絶縁性能にどのくらい影響を及ぼすかの理解が必要である。本論文では、ESD試験器を用いたシリコーンゲルと大気中におけるフラッシオーバプリント配線板上フラッシオーバ電圧特性の導体パターン電極形状依存性について従来の円盤対向電極と高圧側に30°の突起を設けた対向電極の2種類の電極において比較検討した。

1-076

静電噴霧法における気液混相領域と放電プラズマ進展領域の対応性

◎近藤賢宏・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

[背景]放電により水分子から生じる活性種(OHラジカル)は，強い酸化力を有し，水中の難分解性物質の分解に大きく影響することは広く知られている。また，水を粒状にし，放電との反応面積を大きくすることにより，OHの生成率を向上させることを狙いとした研究が，国内外で行われている。水の微粒化法の中でも，電気的エネルギーを用いた静電噴霧法は，消費電力が少なく，サブミクロンオーダの液滴が形成できるといわれている。しかし，静電噴霧による微粒化は，針電極の内径を始めとする様々な条件により変化し，放電プラズマとの高効率な反応条件を知ることが課題となっている。 [目的] 1本の針電極で，静電噴霧と放電を引き起こした場合に，噴霧領域と放電進展領域が一致するかどうかを明らかにすること。 [方法] 電極間距離を固定し，印加電圧を変化させたときの，静電噴霧の様子をデジタルカメラ(ハイスピードモード1200 fps)で撮影し，また，放電光をデジタルカメラの30秒間の長時間露光で撮影し，その結果を観察した。 [結果] ・昇圧時に発生するプラズマが静電噴霧を阻害することがわかった。 ・ナノ秒反転パルス電圧は，直流・矩形波交流電圧に比べ，放電の進展が顕著にみられた。 [結論] 一本の針電極で，静電噴霧とプラズマを両立させ，微粒子に放電を曝すことが目的であったが，プラズマの発生が静電噴霧を阻害した。今後は噴霧領域と放電進展領域の合致を実現し，水中有機物分解能力を評価する予定である。

1-077

大気中MCS放電の励起温度測定

◎鈴木郁也・稲田優貴・前山光明（埼玉大学）

大気圧プラズマの一つである Microhollow Cathode Sustained Discharge（MCS放電)は、Microhollow Cathode Discharge (MHCD)から数10mm離れた位置に正バイアスされた電極(第三電極)を設置することで、MHCDから電子を抽出し、第三電極-MHCD間にグロープラズマを拡大・維持させた放電である。筆者らは、MCS放電内における原子の励起状態をはじめとしたプラズマの特性を知ることが、MCS放電を実用へと展開する上で非常に有効であると考え、MCS放電の光学測定を行ってきた。本報告では、大気中MCS放電内における励起温度を分光測定することにより求めた。

1-078

電圧立ち上がり勾配がプラズマアクチュエータ誘起噴流の流動特性および消費電力特性に与える影響

◎菊地 昂・藤野貴康（筑波大学）・瀬川武彦（産業技術総合研究所）

機械的可動部を持たない次世代の流体制御デバイスとして注目されている誘電体バリア放電プラズマアクチュエータ（DBD-PA）について，電圧立ち上がり勾配を制御した電圧印加による誘起噴流の流動特性および消費電力に与える影響を定量的に評価した。対向電極型DBD-PAに矩形波及び正弦波電圧を様々な周波数で印加することで誘起されるwall normal jetは、PIVによる空間速度分布解析とV-Q Lissajous 法による消費電力評価により、350 V/μsec程度の立ち上がり勾配を有する電圧波形の印加により、最も高速化たうえで低消費電力になることが明らかになった。

1-079

コロナ放電を用いた針－平板電極における針先端間隔－オゾン収率測定

◎中村謙介・藤尾忠司・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

オゾンは強力な酸化力を有しており、幅広い分野で利用されている。その中で、我々は空気清浄器などの家庭用機器で使用されているコロナ放電式オゾナイザの収率改善を目的とした。本研究では、空気を原料として交流高電圧を針－平板電極に印加して実験を行った。コロナ放電を発生させる針－平板電極に用いる針を複数並べることによって針同士が互いに相互作用を及ぼし、オゾン収率が改善されることを見出した。また、針同士の間隔を0.5〜1.0mm程度まで狭めたときにオゾン収率がη=8.8g/kWhで最大となることがわかった。

1-080

マイクロ波放電水素－ヘリウム混合プラズマの発光分光計測

◎大西育佳・根津 篤・Reda Koramy・赤塚 洋（東京工業大学）

水素プラズマは工業分野で広く応用されており、表面改質や材料プロセス、カーボンフィルムの調製などに加え、熱核融合炉工学でも重要である。核融合炉ダイバータ付近では、炉内のプラズマからダイバータが熱負荷を受ける問題や、粒子リサイクリングの問題があり、プラズマ中での励起状態分布をより詳細に調べる必要がある。本研究では、水素－ヘリウム混合マイクロ波放電プラズマにおいてFulcher－α帯を分光分析し、水素分子の回転温度、振動温度を求めることによってヘリウムガスを混合した際に生じる水素プラズマのエネルギーや特性の変化について考察した。

1-081

N2/H2O混合ガス中におけるH2OによるN2(A3Σ+u)の失活レート係数

○鈴木 進・伊藤晴雄（千葉工業大学）

N2にH2Oを少量添加したガス中において，N2(A3Σ+u)の実効励起寿命測定し，拡散係数と電極表面での反射率，そしてH2O分子によるN2(A3Σ+u)の衝突脱励起反応速度係数(失活レート)を決定した。 本報告では，H2Oの濃度を2種類変えて測定を行った結果について述べる。

1-082

球雷放電内における励起準位温度の測定

◎鈴木 仁・稲田優貴・前山光明（埼玉大学）

球雷放電は、水面に接した棒状電極と水中の環状電極との間で発生する大気圧放電である。大気圧放電であるにも関わらず、放電維持時間が100ms 以上、放電直径が10cm 程度であるなど、放電体積と継続時間が大きいという特徴を持つ。球雷放電には多量のOHラジカルが含まれているため、容積の大きな水処理への適用が期待されており、OHラジカルは水または気化させた水を放電中の電子の衝突により解離させることで発生する。球雷放電の励起準位温度測定を確立することは放電の水処理への適応を目指す上で、OHラジカルの生成効率を高める為の一つの指標になる。球雷放電の基礎過程を解明することを目的に、球雷放電内の励起準位温度を測定したので報告する。

1-083

水中アーク放電プラズマの特性に関する研究

◎廣谷太佑・松岡祐也・鈴木龍二郎・根津 篤・森 伸介（東京工業大学）・赤塚 洋（東京工業大学）

福島第一の様な事故炉を解体する作業に応用が期待されているアーク放電プラズマであるが、プラズマの温度や密度など、各種状態に関する知見は不十分である。不明瞭な技術を使用すると、想定できる危険予測が難しい。そこで、本研究では、水中で放電させたアークプラズマの分光計測から、プラズマの状態に関する考察を行った。得られた発光スペクトルから、大気圧アーク放電プラズマが、局所熱平衡(LTE)であると仮定し、電子密度及び電子温度の概算を行い，各種パラメータ(ガス流量、印加電流)との相互作用について考察した。

1-084

大面積・高速表面酸化処理を目的としたループ型Ar/O₂誘導熱プラズマの発光分光観測

◎土谷拓光・丸山裕司・藤田敦士・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィ・リサーチ）

従来の円筒型誘導熱プラズマは高速表面処理に応用可能であるが，大面積化が困難という問題がある。筆者らはこれまでに，熱プラズマによる大面積プロセスを目指し，ループ型トーチを使用したループ型誘導熱プラズマ装置を開発している。この装置はループ型トーチを円型コイルにより挟み込み，トーチ面に垂直な交番磁界を印加して誘導熱プラズマを維持するものである。例えば，ループ型Ar/O₂誘導熱プラズマの一部をSi基板の表面上に生成させることで，横方向に長い範囲での酸化処理が可能となる。本報告では，このAr/O₂誘導熱プラズマを分光観測し，放射強度分布の横方向への一様性を評価した。その結果，別途の実験にてSi基板表面に生成された酸化膜の厚さの一様性と対応していることが示唆された。

1-085

大気圧ヘリウムプラズマジェットの2次元気温度分布導出

◎龍 輝優・佐々本 凌・高村紀充・折居英章・花井正広・生澤泰二・西嶋喜代人（福岡大学）

放電プラズマ応用と電気絶縁分野において, 放電プラズマ状態を理解することは重要である。そのため, 放電プラズマ状態を診断する技術の向上は日々期待されている。これまで発光分光計測と画像処理診断を組み合わせる分光画像診断で, 放電で生成される弱電プラズマ中の気体温度分布を定量可視化した。その結果, 大気圧中に発生した正極性膜状グローコロナ放電の気体温度分布の微細な構造を明らかにしてきた。本稿は, 分光画像診断法を適用して, 大気圧中に発生させたヘリウムプラズマジェットの気体温度分布の測定を行った。測定より, 大気中のヘリウムプラズマジェットの2次元気体温度分布が初めて明らかにされた。

1-086

UTST球状トカマク合体実験における軟X線トモグラフィーシステムの開発

◎三原卓巳・牛木知彦・井 通暁（東京大学）

小型で効率的である球状トカマク(Spherical Tokamak:ST)配位を形成する方法の一つとして、UTST装置でプラズマ合体立ち上げ法が研究されている。これまで合体中の磁気リコネクションによるイオン加熱については研究が進んでいるが、電子加熱機構については不明な点が多い。高い電子温度は中性粒子ビーム入射(NBI)をはじめとする追加熱を行う際に非常に重要となるため、プラズマ合体時に発生する電子へのエネルギー付与機構を解明する必要がある。そこで本研究では球状トカマク合体生成領域を見込む40視線の軟X線を測定し、二次元トモグラフィー像を再構成するシステムを開発している。

1-087

球状トカマク合体実験における磁気リコネクション中の電流シート構造

◎近藤恭平・郭 学瀚・牛木知彦・菅原拓路・井 通暁（東京大学）

磁気リコネクション現象を介した球状トカマク（ST）合体は、イオン加熱、電子加熱の点から有力なST立ち上げ方式とされる。しかし加速電子の生成・排出過程を実験的に検証した例はなく、十分な理解が得られていないのが現状である。本研究は球状トカマク中の電子加速機構を明らかにするために、形成される磁場を詳細に観測することにより、電流シート構造の時間変化を調べた。一般的には準定常的なリコネクションが発生すると考えられていたが、本実験においては最もシート幅が狭まった後、リコネクションがダイナミックな変化を伴っていると考えられる結果が得られた。発表では、電流シート幅の時間変化と内在する揺動について述べる。

1-088

重水素プラズマ中へのレーザブローオフを用いた金属不純物導入実験

◎高嶋亮輔・加藤拓郎・山﨑嵩朗・上杉喜彦・田中康規・石島達夫（金沢大学）・西島大輔（UCSD）・相良明男・増崎 貴（NIFS）

核融合炉の実現に向けて，国際熱核融合実験炉が建設中である．この実験炉ではプラズマ対向壁としてWが用いられる予定である．本研究室では，金属不純物共堆積膜の生成を行い，共堆積膜生成を模擬しようとしている．本研究では，重水素プラズマ中へレーザブローオフにより金属不純物を導入し，堆積膜の生成を行う．その後，質量の増加から膜厚を求めることで膜が堆積したことを確認する．堆積膜を確認したのち，レーザ誘起ブレイクダウン分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy，LIBS)により膜を評価する．

1-089

触媒プラズマハイブリッドリアクタによるPM燃焼の検討

◎岩渕遥司・野崎優介・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・澤田朋之（富士電機）

船舶用ディーゼルエンジンからは高濃度の粒子状物質(PM)が排出されることが問題となっており，国際海事機構(IMO)により規制が強化されている。排ガス処理装置として電気集塵装置が有効と考えられている。しかしながら，長時間の運転により電極に堆積した粒子が性能を低下させるため，電極を洗浄・再生させる手段が必要となる。電極の再生手段として，誘電体バリア放電(DBD)と触媒を用いてPMを燃焼する研究を行った。その結果，DBDや触媒を単独で用いるよりもDBDと触媒を組み合わせる方がPMを燃焼できた。

1-090

ハニカム型プラズマリアクタを用いた低濃度トルエンの分解処理

◎澤田朝陽・谷本睦樹・江原由泰（東京都市大学）・大矢康裕（アズビル）

本研究では、ハニカム型プラズマリアクタを用いて、高湿度下におけるトルエンの分解実験を行った。実験では一辺が52mm、厚さが20mmのハニカム型プラズマリアクタを2枚用い、ハニカム間に設けた1mmのギャップで放電を発生させた。トルエン濃度200ppb、直流＋14kV、湿度90%におけるトルエンの除去実験において、ハニカムを通過する流量が高いほど除去率が低下していることが確認された。トルエン濃度200ppb、流量10L/min、湿度50%及び80%におけるトルエンの除去実験においては、湿度が80%の方が除去率が良好であった。これらの結果より、高湿度条件下において流量が低く、湿度が高いほどトルエンの分解率が向上することが分かった。

1-091

マイクロ波照射PCB 無害化処理における照射パターンの影響

◎新谷貴明・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・天野耕治・寺地 進（東京電力ホールディングス）

有害物質であるPCBを効率的に分解するためマイクロ波照射が注目されている。マイクロ波を加えると実験溶液のIPAから水素ラジカル由来の発光が発生し、この水素ラジカルがPCB分解を促進していると考えられる。また発光数と頻度はマイクロ波出力の大きさに比例することがわかったため、分解効率も比例すると思われる。今回の実験では制御周波数のDuty 比とマイクロ波出力を変化させることでマイクロ波出力の時間内の総エネルギー量を統一しながら、PCB 分解反応速度がどのように変化するのかを明らかにすることを目的とし実験を行なった。

1-092

水滴からの負極性コロナ放電により生成される微小水滴の粒径分布

◎大河原圭将・鎌田修史・東山禎夫（山形大学）

細管電極先端に形成した水滴に直流電界を印加すると水滴の尖鋭化とともに，水滴先端から帯電微小水滴が放出される。これまで0.18mm 径細管電極を用いて水滴からのコロナ放電現象について調査を行ってきたが，本研究ではコロナ放電を起こすための水滴の体積を大きくし，帯電微小水滴の生成数を調査した。外径0.4 mmの細管電極の先端にイオン交換水を供給し，リング電極に正極性の電圧を印加し水滴からのコロナ放電を60分間起こし，微小粒径測定装置で粒径分布を測定した。水滴からのコロナ放電に伴って生成された粒子の粒径の殆んどは42.2 nm以下であり，細管電極径を大きくし，水滴の体積を大きくすることで帯電微小水滴の生成数を増やすことができた。

1-093

水電極からの負コロナ放電で生成される帯電微小水滴による除湿効果

◎鎌田修史・東山禎夫（山形大学）

水電極の負コロナ放電で生成される帯電微小水滴による除湿効果を探るために湿度条件を変えて調査を行った。実験は，電極を4本設置した放電槽の中に相対湿度70，80および90%の空気を供給し，30分間のコロナ放電による湿度変化を調査した。このときの印加電圧は9kVである。また，金属板に貼り付けた吸水シートに捕集された水分量を秤量し，水電極に供給した水分量を引いた値を空気中水分の捕集量とした。結果として，湿度70%の空気では約4%，湿度90%の空気では約5%湿度を低下させ，生成された帯電微小水滴によって空気中の水分を湿度70%では140mg，湿度90%では220mg捕集することができた。また，湿度が高いほど除湿効果が高くなることを明らかにした。

1-094

炭酸水素ナトリウム充填反応器による誘電体バリア放電のN₂O分解に関する基礎研究

◎鈴木祥平・五味瑞貴・安井晋示（名古屋工業大学）

N₂Oは多岐にわたって使用されているが、CO₂の約310倍もの地球温暖化係数（GWP）を持ち、またオゾン層破壊物質であることから排出を抑制するための対策が重要となっている。これまでに筆者らは、装置が小型で低コストな誘電体バリア放電による大気圧非熱平衡プラズマを用いたN₂O分解装置の開発を目指し、充填物添加型反応器によるN₂O分解の研究を行ってきた。今回は新たな充填物として炭酸水素ナトリウムを添加し、N₂O分解に与える影響について調査を行った。その結果、少量の硝酸ナトリウムが生成され、炭酸水素ナトリウムが分解に寄与することが確認された。

1-095

電気集塵装置における鋸歯電極の極性効果

◎田中直輝・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）・栗田加奈絵・永吉健太郎・松井範幸（富士通ゼネラル研究所）

本研究では,鋸歯電極を使用して実験を行い,極性の違いによる集塵特性の比較を行った。電気集塵装置は,荷電部と集塵部がそれぞれ別々になっている二段式を使用した。荷電部は鋸歯のピッチが5mm,25針9段で放電有効長は594mmである。接地電極はステンレス製の平板を用い,放電ギャップは5.9mmである。ESP下流に設置したファンにより処理風速を3.4m/sとし,炭素粒子発生装置(DNP3000:PALAS製)からダクト内に粒子を流した。実験の結果,正極の方が低オゾン領域の電圧範囲が広く,比較的低い電圧に限り負極性の電圧が適用可能であることが分かった。

1-096

電気集じん装置における再飛散現象のPIV解析

◎柳川鴻太・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・澤田朋之（富士電機）

大気浄化装置の1つである電気集じん装置(ESP)は高集塵率・低圧力損失などの利点が挙げられるが，それとは逆に低抵抗粒子を捕集する際の再飛散現象が問題視されている。今までとらえることのできなかった再飛散現象を可視化し，PIV解析することにより特性を求めた。本研究では，針対平板のESPにトレーサ粒子を流入し上部からレーザーライトシートを照射することにより可視化し、再飛散現象の瞬間をとらえた。また、PIV解析により速度や角度などを求めた。

1-097

ホール型電気集じん装置における放電電流特性

◎鈴木菖平・横山 駿・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・澤田朋之（富士電機）

本研究では、ホール型電気集じん装置(ESP)を使用して実験を行い、放電電流による集じん特性の比較を行った。ホール型ESPとは、集塵電極にホールを開けたESPのことである。粒子はクーロン力やイオン風の影響を受け、ホール内に誘導される。電界が0の捕集空間に粒子を誘導することで、再飛散現象の抑制が期待できる。実験方法は、燃料として軽油を用いたディーゼル発電機に75％の負荷をかけ、排気ガスをESPに直接流入させ、粒径分布を測定した。実験の結果、電流値を高くすると小粒径から中粒径(10nm〜700nm)の粒子は集じん率が向上するが、大粒径(1000nm以上)の粒子は集じん率が低下することが分かった。

1-098

ホール型電気集塵装置における粒子挙動解析

◎下田正也・茨木駿兵・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・澤田朋之（富士電機）

本研究では，イオン風の影響や粒子挙動について，シミュレーションを用いることによって二次元モデルにて解析した。解析する電気集塵装置は，針直下に再飛散を抑制するためのケーシングを設置したホール型電気集塵装置である。粒子挙動解析の結果，主流体速度0.15m/sでは粒子のホール内への進入は見られなかった。原因として，流入口から粒子を帯電させていることや，ホールへ吹き込んだ風がホール底部で分岐し，一部の流れが逆流することで粒子の進行を妨げていることが挙げられる。

1-099

電気集塵装置におけるナノ粒子の集塵特性:A重油燃料を用いた実験

◎澤野秀敏・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

本研究は、A重油を燃料としてたディーゼル微粒子に対する電気集塵装置（ESP）の集塵特性を把握することを目的とした。特に、ナノ粒子の集塵特性と電極長の効果について検討した。実験システムは、ディーゼルエンジンとESPで構成した。ESPは内径58 mmの金属円筒と0.26 mmのタングステン製ワイヤーによる同軸円筒電極構造とし、電極長は70~230 mm、印加電圧はDC+10 kVとした。実験の結果から、粒経50 nm以上の粒子は除去できるが、50 nm以下のナノ粒子は増加することが示された。しかし、電極長を長くすることで、その増加は抑制できることも明らかとなった。

1-100

過冷却現象への交流電界効果

◎加藤陽大・加藤正平（東洋大学）

過冷却を利用することで臓器移植に必要な臓器を凍結することなく保存することが可能である。しかし、過冷却はどのような条件で解消するのかは不明である。また、食品の冷解凍時に電界によってうまみ成分の流出が影響するとする報告もある。さらに電磁界が過冷却に影響を与えるとする考えもある。そこで本研究では電界が食品と水溶液の凍結にどのような影響を与えるのか調べた。 水溶液の塩分濃度を変えて過冷却解消温度を測定した結果、交流電界は過冷却を促進する効果は得られなかった。また塩分濃度が高くなると電界の影響は低下する。

1-101

二重同軸ガラス管大気圧プラズマジェットのプラズマバレット特性評価

◎岡田一樹・三谷哲太・大橋隼人・伊藤弘昭（富山大学）

大気圧プラズマジェットは、医療分野や材料分野への応用が可能であるとされ、近年研究が盛んに行われている。医療分野では滅菌やがん治療への応用が挙げられ、OHラジカルやNOラジカルといった活性種が寄与していると考えられている(1)。また材料分野への応用としては、表面改質や表面処理が挙げられ、材料や用途に適したイオン種の生成が重要になる。本研究では、二重同軸ガラス管構造の大気圧プラズマジェット装置を開発した。二種類の気体を層流してから合流させ、効率よく外側のガスを電離させて活性種やイオン種を生成させているため、窒素比率数％以上でもプラズマが生成可能となっている。今回は大気圧プラズマジェットの物理的特性を知るために、ICCDカメラを用いてプラズマバレットの評価を行った。

1-102

静電噴霧法により作製した触媒層を用いたDMFCの発電性能評価

◎江頭雅之・白川雄基・矢澤翔大・工藤祐輔・蒔田鐵夫（日本大学）

燃料電池の一種としてポータブル用電源への応用が期待されている直接メタノール形燃料電池(DMFC)に注目が集まっている。DMFCの性能は膜電極接合体(MEA)の表面積を増加させることにより向上すると言われている。MEAの表面積を増加させる手法として静電噴霧法を用いた。静電噴霧法とは、溶液に高電圧を印加することで粒子として塗布する方法である。本研究では、静電噴霧法を用いてガス拡散基材に対して触媒の塗布を行い、燃料極側の触媒層の作製を行った。その後、作製した触媒層と従来法であるハケ塗りにより作製した触媒層を用いてDMFCを発電させ、発電性能の評価を行った。

1-103

負コロナ放電を用いた浮遊粒子と臭気の低減

○川田吉弘・立田翔太・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）

浮遊粒子の除去には、繊維フィルタや放電現象を応用した電気集塵装置が用いられてきた。一方、人間の嗅覚に反応する物質（以下、臭気物質）の除去には、活性炭等の吸着剤が用いられているが、オゾン酸化によっても臭気物質は低減できると考えられる。本研究では、負コロナ放電においてオゾン排出が著しいことに着目し、負コロナ放電による浮遊粒子と臭気物質の同時低減について実験的に検討した。その結果、負コロナ放電により同時低減が可能であることを確認するとともに、実用化に向けての課題を明らかにした。

1-104

乾燥空気雰囲気におけるインパルス耐電圧の極性効果

○山城啓輔・華表宏隆・早瀬悠二・高野哲美（富士電機）・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）

環境適合性のため，乾燥空気を媒体とした高電圧機器が用いられている。同機器開発の黎明期から使われ続けているSF6ガスは電気的負性気体であり，高い絶縁性能を持つ反面，不平等電界では極性効果がある事が知られている。それに対して乾燥空気は負性を持つ酸素や二酸化炭素が含まれるものの検討例は少ない。今回は乾燥空気雰囲気にて電界利用率を変化させ，準平等〜不平等電界下のインパルス耐電圧を評価した。 その結果，乾燥空気雰囲気であっても，繰返し印加法にて評価した今回の測定においては，電界利用率が小さい領域では顕著な極性効果が確認された。

1-105

鹿児島高専電気電子工学科における初めての選挙を終えてのアンケート

○中村 格（鹿児島工業高等専門学校）

年齢満18年以上満20年未満の者が選挙に参加できるようになり、鹿児島県のほとんどの若者にとっては、平成28年7月10日に執行された「第24回参議院議員通常選挙」及び「鹿児島県知事選挙」が初めての選挙となった。鹿児島高専電気電子工学科4年生と5年生に対し、自身の初めての選挙をどう捉え、どうアクションしたかアンケートを行った。彼らにはそれぞれ3年生と4年生の当時、改正公職選挙法の公布後、選挙に関するアンケートを行い、選挙や政治に関する意識を分析している。今回の選挙後のアンケート結果を、前回の選挙前の結果と対比させて、意識の変化等を分析した。これら分析結果を公表し、今後の有権者教育に役立てていく。

1-106

マイクロ波励起大気圧プラズマ支援による薄膜堆積法の検討

◎大野常久・山田涼輔・當摩哲也・石島達夫・田中康規・上杉喜彦（金沢大学）

電子デバイスの製造には有機膜や無機膜の製膜工程があり、低温・低コストな製膜手法が求められている。我々は、マイクロ波励起大気圧プラズマジェット(MWAPPJ)を用いた簡便な製膜手法を研究している。本研究ではMWAPPJにより生成した活性種とターゲット材を作用・堆積させる、ZnO薄膜堆積手法を検討した。Sol-gel前駆体を担持したターゲット材に、MWAPPJ(O₂:0%)を照射し堆積物を生成した。堆積物に対するXPS分析からZnスペクトルは、Sol-gel法による薄膜と比較して、より安定な結合状態を示しMWAPPJ(O₂:0.1%)照射では、更に安定な結合状態を示した。結果からMWAPPJにより酸素由来の活性種が生成され、ZnO薄膜堆積時のZnとO原子との反応を促進し、安定なZnO結合を形成したことが示唆される。

1-107

Ar/CH₄/H₂誘導熱プラズマ照射による単結晶ダイヤモンド成長に対する照射基板位置の影響

◎別院利城・荒井隆志・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・川浦 廣（シー・ヴィ・リサーチ）

本論文では，Ar/CH ₄/H₂ 誘導熱プラズマ(ICTP)照射による単結晶ダイヤモンド成長に対する照射基板位置の影響を検討した。筆者らは， ICTP を単結晶ダイヤモンド基板成長に応用することを検討している。今回，ダイヤモンド基板を異なる軸方向位置に設置し，熱プラズマを照射した。これは，熱プラズマの温度および構成ラジカルは，熱プラズマトーチに対する軸方向位置によって大きく変化するからである。熱プラズマ照射後のダイヤモンド基板表面を光学顕微鏡およびラマン分光分析により評価した。その結果，ダイヤモンド基板の軸方向位置を調整することで，単結晶ダイヤモンド基板表面様相およびその組成が大きく変化することを確認した。

1-108

DLC成膜用炭化水素プラズマ基礎特性に及ぼす希釈Arガスの影響

◎大木一真・小田昭紀（千葉工業大学）

ダイヤモンドライクカーボン（DLC）膜は，高硬度，耐摩耗性などの特性を有しているため，自動車部品の摺動部のコーティングなどの様々な分野において利用されている。DLC成膜手法の一種であるプラズマCVD法は，放電プラズマを利用して前駆体である炭化水素ガスを比較的低い温度で効率よく分解し，成膜源であるイオンやラジカルを基板上へ供給することができる。これまで，我々のグループではDLC成膜の最適化を目的として，CH₄プラズマの解析や四重極質量分析法によるAr/CH₄プラズマの診断を行ってきた。本報告では，上記Ar/CH₄プラズマの流体モデルを構築し解析を行ったのでその結果について報告する。

1-109

質量分析及びプローブによるDLC成膜用炭化水素プラズマの診断

◎大野祐也・小田昭紀（千葉工業大学）

ダイヤモンドライクカーボン（以下DLC）膜は硬さや耐摩耗性等の機械的特性に優れており、自動車部品等の表面加工等の様々な分野に応用されている。また、薄膜の形成が要求される複雑形状金型への成膜方法はスパッタ法等で発生するピンホール等の欠陥が発生しないプラズマCVD法が主流となっている。しかし、DLC成膜用炭化水素プラズマとDLC膜との関係に未解明な部分が多く残されているため、炭化水素プラズマ中の諸特性を理解する必要がある。 本報告では、四重極質量分析装置及びプローブ装置により、容量結合型RF Ar/CH4プラズマの診断を行い、ガス流量が本プラズマ諸特性に及ぼす影響を調査したので，その結果を報告する。

1-110

変調/無変調制御した誘導熱プラズマ照射による多結晶ダイヤモンド膜堆積

◎荒井隆志・別院利城・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

これまでに，変調誘導熱プラズマあるいは無変調誘導熱プラズマ単体を用いて，ダイヤモンド膜生成/成長実験をおこなってきた。その結果，コイル電流を変調させた変調誘導熱プラズマの照射が，ダイヤモンド粒子の核生成に有効であると推測された。一方，無変調誘導熱プラズマを照射することで，ダイヤモンド単結晶成長ができることを見いだしている。そこで，Si基板に対してまず鋸形変調の誘導熱プラズマ照射し，その後同一基板に対して無変調誘導熱プラズマを照射した。これにより，Si基板上にまずダイヤモンドの核生成を生じさせ，その後にそれを成長させることを想起した。その結果，鋸形変調の誘導熱プラズマによる核生成，無変調誘導熱プラズマによる核成長が効果的におこなわれたと考えられる。

1-111

ループ型Ar/O₂誘導熱プラズマによるSiC基板の表面酸化試験

◎藤田敦士・丸山裕司・土谷拓光・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィ・リサーチ）

筆者らは，熱プラズマによる大面積にわたる超高速処理を目指し，これまでにループ型誘導熱プラズマ(Loop-ICTP)装置を開発している。この装置はループ型トーチを円型コイルにより挟み込み，トーチ面に垂直な交番磁界を印加して誘導熱プラズマを維持するものである。このLoop-ICTPの一部を基板の表面上に生成することにより，高速処理が可能となる。Si基板に対しては 80 mm の長さで超高速な酸化膜生成を確認している。本報では，現在半導体の分野でパワーデバイス用材料として期待されているSiC基板においてもこのループ装置による表面酸化処理が応用可能か試験した。その結果，Loop-ICTPにより 10 分間の照射で 110 nmの酸化膜が得られることを確認した。

1-112

原料間歇供給および変調誘導熱プラズマ併用法によるSi/C ナノ粒子生成の試み

◎清水光太郎・石坂洋輔・兒玉直人・田中康則・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

現在，リチウムイオン電池の新規負極材料としてSi が注目されている。しかし，Si をLIB の負極材料として利用するには2 つの欠点がある。一つ目は充放電時におけるバルクSi の大きな体積変化が引き起こす容量劣化である。二つ目はSi の導電率が低いことである。 これら二つの欠点をカバーする材料として，Siナノ粒子に炭素(C)を担持させたSi/Cナノ粒子が注目されている。 筆者らは，これまでに独自手法「原料同期間歇供給を伴う変調誘導熱プラズマ」を用いて Siナノ粒子に成功している。本報告では炭素源としてCH₄ を供給し，変調条件下(80%SCL-80%DF) において，Si/C ナノ粒子の一段的大量生成が可能であるかを検討した。その結果，生成粒子はSiナノ粒子および炭化ケイ素(SiC)ナノ粒子であることを確認した。

1-113

短電圧パルス狭ギャップ大気圧非平衡プラズマによるポリエチレンテレフタレートの表面酸化

門脇俊輔・○中野俊樹・北嶋 武（防衛大学校）

短電圧パルス狭ギャップ大気圧非平衡プラズマをポリエチレンテレフタレート（PET）の表面酸化に適用し、その表面状態をX線光電子分光法、原子間力顕微鏡および接触角によって検討した。その結果、プラズマ照射によるPETの濡れ性の向上は表面エネルギーの増加によることを確認した。さらに、表面エネルギー増加の主要因がプラズマ照射時間5 sでは表面エネルギーの極性力成分の増加であり、60 sでは分散力成分の増加であることを明らかにした。これらの結果から、PET最表面の酸化は照射時間5 sで飽和しており、照射時間を長くしても表面粗さを助長させるのみでPET最表面の酸化に寄与していないことが示唆された。

1-114

ターゲット中央からのガス供給によるマグネトロンスパッタリングの成膜特性

◎三好邦明・徳永拓真・東 欣吾（兵庫県立大学）

不平衡マグネトロンスパッタリングにおいて、ターゲットの中央よりガスを供給できる構造のマグネトロンスパッタリング源を構築した。スパッタターゲットとして、一般的な直径70 mmの平板ターゲットと中央に直径12 mmの拡散板を持つ穴あきターゲットの二つについて比較した。それぞれのターゲットに対してArガスを供給し、直流放電させたところ、ガス圧力0.3 Paのとき、通電電流が1 Aにおいて、穴あきターゲットは平板ターゲットに比べて約40 %高い成膜速度が得られた。その効果はターゲット電流が低いときに大きく、ターゲット電流を大きくすると、その差は小さくなった。

1-115

太陽電池用電極溝作製技術に適用可能な沿面放電のSiエッチング特性

◎西田和貴・濱田俊之（宇部工業高等専門学校）

太陽電池用単結晶シリコン基板の表面には,光反射率を低減させるための反射防止膜（SiNx等）が受光面に形成されている。この反射防止膜が形成されている太陽基板上に受光面電極を形成する際には,反射防止膜が電力取り出しの障害となるため,電極形成部の反射防止膜を除去した電極溝を作成するのが望ましい。著者らは沿面放電プラズマを用いて太陽電池用シリコン基板上に形成された反射防止膜を電極パターン状にエッチングした電極溝の作成に成功している。本報告では，現在明らかでない沿面放電によるエッチングの進展機構についてシリコン材料のエッチング状況を測定することで検討を行った。

1-116

プラズマアクチュエータを応用したモバイル水素燃料製造デバイスの開発

◎山中彰太郎・眞銅雅子・長田昭義（大阪工業大学）

水素燃料の需要は近年増加傾向にあり、将来の水素化社会における「水素燃料の自消自産」を目指した低コスト・小型モバイル水素製造デバイスの開発を行っている。本研究では、誘電体バリア放電（DBD）プラズマ技術を設計基盤とした水素製造技術を提案しており、誘起流と電磁界の相互作用によるダイナミクスを制御して、「水素生産性の向上と製造技術の確立」を目指している。本講演では、DBDプラズマアクチュエータの電磁界効果によるプラズマの閉じ込めを利用したプラズマ改質性能改善の評価および入力電力による水素燃料製造特性の評価から水素製造における最適な条件について検証を行った結果について報告する。

1-117

電界制御下での同軸イオン加速法による低摩擦炭素薄膜の生成

◎石川有宰・山田翔大・芦澤好人・関口純一・浅井朋彦（日本大学）・高津幹夫（平和電機）・平塚傑工（ナノテック）

ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon: DLC)は多岐にわたり応用されており，特にトライボロジー分野では摩擦係数低減を目的とした研究が行われている．この摩擦特性はDLCの水素含有率，結晶構造によって大きく変化することが知られている．本研究が対象とするDLC膜の生成手法は，同軸イオン加速法によるものであり，この手法では放電ガスが水素を含む必要がなく，また，放電ガスに水素をドープすることで，膜中の水素含有率を制御できる．また，本実験では，イオンの入射エネルギーの増大とマクロパーティクル除去のため，電界制御を組み合わせた．今回，金属基板に対し，同軸イオン加速法と電界制御を組み合わせて生成したDLC膜の摩擦係数の評価を行った．

1-118

ソリューションプラズマを用いた水中・エタノール中でのグラファイトの親水化

◎杉山剛志・星野修平・川原一真・竹内 希（東京工業大学）

グラファイトは優れた電気伝導性や熱伝導性を持ち，燃料電池の触媒担持体等への応用が期待されている。しかし，グラファイトは疎水性であるため，親水化処理を行う必要がある。プラズマを用いた親水化手法の一つである，ソリューションプラズマを用いた方式では，液中でのプラズマにより誘起された活性種がグラファイトと反応することで，親水性向上が見込まれる。本研究では，純水およびエタノールを溶媒として使用し，溶媒中のグラファイトに対するソリューションプラズマ処理を行った。本来疎水性を示すグラファイトは，親水性の官能基に修飾されることで親水性を示す。純水よりもエタノールを用いた場合の方が官能基は修飾しにくく，親水化されにくいことが明らかになった。

1-119

非熱平衡大気圧プラズマジェットによるポリマー基材上のDLC膜の除去に関する研究

◎小林大地・浅井朋彦（日本大学）・平塚傑工（ナノテック）・髙津幹夫（平和電機）

従来のDLC膜の除去方法として酸素プラズマエッチングやショットブラストが挙げられるが，DLC膜の残存やコスト，基材へのダメージが問題となっている．上記の問題点を解決する手法として本研究室では，非熱平衡大気圧プラズマジェットによるDLC膜の除去方法の開発を行っており，これまでにSUS304基材上のDLC膜についてその除去効果が示されている．本手法は酸素ラジカルによってDLC膜の炭素が酸化除去されると考えられている．この除膜法の特性の検証や除膜メカニズムの理解を目的として，耐熱性の低い基材上のDLC膜へ照射実験を試みた．PETへの照射を行った結果，熱による結晶化が原因と思われる照射跡が残り，その照射領域において疎水化がみられた．

1-120

周囲ガス供給型プラズマジェットによる枯草菌芽胞の殺菌特性

◎赤田壮佑・木村栄輝・水田康治・寺西研二・白井昭博・下村直行（徳島大学）

著者らは，誘電体バリア放電（DBD）により生成したジェット状プラズマの周囲に放電ガスとは異なるガスを供給できる周囲ガス供給 (SGF) 型プラズマジェットの放電特性と応用を検討している。本報告では，SGF型プラズマジェットを乾燥枯草菌芽胞に照射した際の殺菌特性について調べた結果を報告する。実験に使用した枯草菌はBacillus Subtilis NBRC3134である。照射距離は10mmとし，放電ガスにヘリウム，周囲ガスに空気，窒素，酸素を用いて枯草菌芽胞試料の中央部にプラズマを照射した。最も生菌数が減少したのは周囲ガスが窒素の場合であり，180秒間のプラズマ照射により，生菌数は照射前の約9%まで減少した。

1-121

放電生成物を用いた植物の成長における硝酸イオン濃度の影響

◎岩渕洋輝・澤田朝陽・江原由泰（東京都市大学）

近年、農業従事者の減少、高齢化、また、耕作適地の減少が問題となっている。そのため、植物工場という技術が注目されている。本研究では放電によりNOxを発生させ、硝酸イオンとして養液栽培に使用することで、植物の成長を促し、最適な硝酸イオン濃度、また、植物体中の硝酸イオン濃度の影響を検討した。今回、供試植物はサニーレタスを用いた。その結果、乾燥重量を比較すると硝酸イオン濃度100ppmの条件がより重く育ち、Controlに対して約4倍成長した。また、植物体中の硝酸イオン濃度は低いほど乾燥重量が重くなる傾向が確認できた。これは、植物体中の硝酸イオン濃度が高濃度であると植物に対して悪影響があるためと考えられる。

1-122

プラズマ殺菌用大気圧ジェットプラズマのシミュレーションⅡ

◎高木茂行・大上昂己（東京工科大学）・内田 裕（新エネルギー・産業技術総合開発機構）

プラズマ殺菌の発生ソースとして、真空を必要とせず高密度なプラズマを生成できる大気圧ジェットプラズマが注目されている。プラズマ特性の評価法として、プラズマの生成とガス流れを連成して計算するプラズマシミュレーションを行った。プラズマの生成部は、中心の高周波電極と周囲の誘電体およびアース電極で構成され、中心電極と誘電体間でプラズマが励起される。ポアソン方程式とイオン・電子の連続の式からプラズマ生成を計算し、ナビエストークスの式からガス流れを計算し、両者を連成させてシミュレーションを行った。フィラメント状にプラズマが生成されること、活性種が下流に輸送される状態を再現できた。

1-123

ホウレンソウ水耕栽培におけるプラズマ照射の影響評価

◎鬼頭昌也・安井晋二・吉田陵平・伊藤大樹（名古屋工業大学）・庄子和博・寺添 斉（電力中央研究所）

植物工場において少量の培養液を循環させる薄膜水耕栽培は環境保全や資源の有効利用の点から導入が進められている。しかし水耕栽培では，微生物による緩衝作用がなく培養液の殺菌技術が不可欠である。従来、培養液の殺菌にはオゾン水などが用いられてきたが、高濃度のオゾンは植物の生育阻害を引き起こす。そこで、我々は新たな殺菌方法としてプラズマ殺菌技術の開発を行い、液中プラズマによる培養液の殺菌効果を確認した。 本報告は、ホウレンソウの水耕栽培においてフザリウム菌を投与し、培養液中でプラズマを生成した場合の殺菌効果苗及び生育の観察と培養液特性(pH、EC)の観測結果を報告する。

1-124

旋回気流環境下における粉粒体食品の非熱平衡プラズマによる殺菌効果の基礎検討

◎森本健太朗・猪俣尚則・石島達夫・田中康規・上杉喜彦（金沢大学）

粉粒体形状の食品素材は，加工特性や運送面での利便性があり，豊かで安定した食の供給に貢献できる利点を有し，粉粒体食品の殺菌に対する関心が高まっている．食品素材の特性を損なうことなく，低温環境下で殺菌処理する方法の1つとして非熱平衡プラズマによる殺菌方法がある．しかし，処理対象を静置した状態でプラズマ処理した場合には，粉同士が重なり合う部分が生じるため，殺菌効果の低減が懸念される．そこで，本研究において，振動と気流により処理対象を分散させた状態で，非熱平衡プラズマを照射するための試作実験機を製作した．本装置を用いたときの非熱平衡プラズマによる殺菌効果を，圧力条件を変化させ検討したので報告する．

1-125

大気圧プラズマ照射中の電圧制御による大腸菌の増殖速度の変化

◎伊藤 諒・Wipasvong Bhudit・大沼 清・高橋一匡・佐々木 徹・菊池崇志・原田信弘（長岡技術科学大学）

これまでに電圧波形を組み合わせることのできる波形重畳型パルスパワー電源を用いて発生した大気圧プラズマを大腸菌に照射し，その増殖率が変化することを明らかにしたが，印加電圧波形が大腸菌の増殖率に与える影響は明らかとなっていない．本研究の目的は，放電持続電圧の電圧パルスのパラメータを変化させてプラズマを発生させ，放電の電圧波形が大腸菌の増殖速度に与える影響を明らかにすることである．その結果，放電持続電圧のパルス数に対して大腸菌懸濁液の濁度変化率が変わり，パルス数を増やすほど濁度変化率が大きくなることが明らかとなった．これにより，パルス数を増やすことにより大腸菌の増殖率が上昇することが明らかとなった．

1-126

キャビテーションプラズマによる大腸菌の殺菌

○岡 好浩・澤近航平（兵庫県立大学）・大西慶一郎・浅見圭一（日本スピンドル製造）・橋本庸平・中條晃伸（住友重機械工業）・八束充保（兵庫県立大学）

近年、液中プラズマによる殺菌処理が注目されている。これまでに、我々は高速回転体によって発生させたキャビテーション気泡に、高繰り返し高電圧パルスを印加することによって、容易に液中低温プラズマが生成できるキャビテーションプラズマ装置を開発してきた。今回、キャビテーションプラズマによる大腸菌の殺菌効果を確認した結果、処理時間の経過と共に大腸菌の生存率が劇的に減少し、繰り返し周波数を増加することによって、殺菌速度することがわかった。

1-127

ZnO上マイクロギャップにおけるパルス電圧印加時の放電電圧波形

◎谷 直樹・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年の電子機器は、ESD(静電気放電)を主としたサージへの耐性が低下しており、その対策にESD保護デバイスが実用化されている。本研究ではバリスタとして用いられるZnOとマイクロギャップ放電を組み合わせたESD保護デバイスを考えており、ZnO上に配置された電極間の放電現象の調査として、ZnO上ギャップおよびガラス上ギャップにおける放電電圧波形を観測した。その結果、ZnO上ギャップではガラス上ギャップに比べて明らかに低い印加電圧で放電が生じた。これはZnOの仕事関数が銅などの金属より低いことと誘電体・電極・空気による三重点において108 V/mを超える電界強度となっていることからZnOが電子の供給源として働いているためであると考えられる。

1-128

油/プレスボード複合絶縁系における白色放電生成物存在下でのインパルス沿面放電特性

◎赤星卓勇・倉地将貴・Kyunghoon Jang・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・海永壮一郎・吉田成是・梅本貴弘・吉村 学・釣本崇夫（三菱電機）

著者らは、電力用変圧器に用いられる油-プレスボード（PB）複合絶縁系における放電進展特性を調査している。これまでに、PB 表面を放電が進展するとPB 表面に白色の生成物が残留すること、および白色生成物の形成により部分放電開始電圧が低下することを報告してきた。また、前報では白色生成物は放電により発生したガスが微小な気泡として残留したものであると報告した。本報では、白色生成物が放電進展に与える影響について調査した。その結果、気泡が白色生成物として残っているようなガスと油の混成状態では、インパルス電圧の波頭付近でも放電が発生するようになるということが新たに分かった。

1-129

Numerical Model Analysis on Creepage Discharge Behaviour at the Oil/Pressboard Interface with a Relatively Short Creepage Distance

◎チャンギョンフン・倉地将貴・赤星卓勇・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

The creepage discharge behaviour at oil/pressboard (PB) composite insulation system is investigated numerically. Many researchers have investigated to understand the creepage discharge behavior in gas, liquid or composite insulation system [1], while solid insulation is dealt as ideal case, i.e. neither the conduction current nor space charge is assumed [2]. This paper deals with generalized numerical technique for evaluating the creepage discharge behavior development at the composite insulation system with considering Poole-Frenkel (P-F) conduction model for a solid insulation using the electrohydrodynamic (EHD) approach under an applied positive standard lightning impulse voltage.

1-130

エポキシシリカナノコンポジットの油中インパルス沿面放電開始電圧特性

◎倉地将貴・チャンギョンフン・赤星卓勇・匹田政幸・小迫雅裕（九州工業大学）

エポキシシリカナノコンポジットの油中インパルス沿面放電開始電圧特性について評価した。エポキシ樹脂に添加するナノシリカ粒子の大きさは45 nmであり、ナノシリカ添加率は(0, 1, 10 wt%)とした。正および負極性標準雷インパルス電圧を印加し、放電発生確率を評価した。その結果、正極性においてはナノ粒子による効果が表れ、1 wt% の試料が最も良い絶縁性が見られた。一方、負極性においては添加率による放電抑制効果の差異は大きくみられなかった。

1-131

交流沿面放電により劣化PFAE油中に溶解したガス成分の分析

○山本博法・西川剛史・花岡良一・宮城克徳（金沢工業大学）・高本 清・西川精一（かんでんエンジニアリング）

油入電力機器内部における異常（過熱、アーク放電、部分放電など）を検出する目的で、油中ガス成分の分析による診断法が広く採用されている。本研究では、地球環境保全の観点から、近年、鉱油の代替油として有望視されている劣化PFAE油に着目し、交流沿面放電時に生じる油中溶解ガス成分を鉱油、及び劣化鉱油と対比して調べたので、ここに報告する。

1-132

サージ電圧下におけるポリイミドの火花放電特性

◎藤本博晃・川島朋裕・長尾雅行・村上義信（豊橋技術科学大学）

近年、制御性・効率性の観点からインバータ駆動システムの利用が回転機を中心として拡大している。インバータのスイッチングに起因するサージ電圧下における放電特性の調査が行われているが、それらのほとんどはモータ巻線を模したツイストペア試料等における結果である。一方、ポリイミド(PI)は絶縁性能に加えて耐熱性、機械的特性に優れる樹脂であることから、パワーモジュールの封止樹脂としても用いられている。そこで本研究では、サージ電圧下における沿面放電特性を把握するため、PI 表面の沿面火花放電特性を測定したので報告する。

1-133

大気中沿面放電のトリガとなる初期電子を発生させる放電光の発光スペクトル

◎五十嵐 慈・柏木康秀（木更津工業高等専門学校）

バルク放電用針電極の放電光で沿面放電用電極付近を照射し、この2放電の同期確率を調査した。カットオン波長が異なるいくつかの光学フィルタを2電極間に挿入し、照射光エネルギーを変化した。印加電圧は+30kV,0.7/80μsの雷インパルスで、試行は1フィルタにつき100回とした。使用したフィルタは、MgF2 (カットオン波長112nm,エネルギー換算11eV),CaF2(125nm,9.9eV),BaF2(135nm,9.2eV),SiO2(160nm,7.7eV)とした。フィルタ無しおよびMgF2使用時では高確率であったが、CaF2で急減した。この112nm-125nm(11eV-9.9eV) の領域には、窒素および酸素によるいくつかの大きな発光スペクトルが有り、これらが初期電子生成に寄与していると考えられる。

1-134

大気中の固体誘電体の表面帯電減衰に与える厚さの効果

◎宮崎貴駿・岡本武彦・生澤泰二・西嶋喜代人（福岡大学）

誘電体表面に帯電した電荷は静電気放電（Electro-Static Discharge : ESD）の発生や、電力機器の絶縁性能の低下に関係する。そこで、誘電体表面に帯電した電荷の減衰に与える誘電体の性質とその厚みの効果を調べることは重要である。本研究では、同一の材料で厚みの異なる誘電体円板（ポリエチレンテレフタレート）を帯電材料として用い、大気中の正極性直流コロナ放電で発生した正イオンで誘電体円板表面を帯電させた。また、帯電させる際に印加電圧の大きさも変化させた。その後、誘電体円板の全域及び表面の帯電域で最も電荷の減衰が著しい中心部分の帯電量を計測し、誘電体の厚みがその表面電荷の減衰に与える効果を検討した。

1-135

AEセンサを使用したパワーモジュール内部の部分放電位置標定に向けた基礎的検討

◎真木洵耶・満留 博・秋永優也・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・中村瑤子・谷口克己・池田良成・岡本健次（富士電機）

パワーモジュールにおける絶縁破壊の前駆現象である部分放電を観測することは，高耐圧なパワーモジュールの開発につながる。本報では、部分放電の音波信号をAEセンサで収録し，アルミニウム内での到達時間の推定値と実験結果を比較して，その時間差を利用した部分放電の位置標定技術に向けた基礎的検討

1-136

樹脂モールドパワーモジュールモデルにおけるマルチループセンサを用いた部分放電位置標定

◎満留 博・秋永優也・真木洵耶・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・中村瑶子・谷口克己・池田良成・岡本健次（富士電機）

我々はゲル封止したSi-IGBTモジュール内の部分放電(partial discharge: PD)発生位置標定技術の高精度化検討として，内部に意図的に欠陥を配置したモジュールを使用し，複数のループセンサにて取得したPD放射電磁波の到達時間差からPD位置標定を検討してきた(Time of flight法: TOF法)。一方で，モジュールの実装技術の高耐圧化を目指し，樹脂封止したモジュールが使用されている。そこで本研究では，樹脂封止したパワーモジュールモデル内部のPD発生位置の標定について検討した。実験の結果，樹脂封止した試料において最高精度が2 mmの標定技術を確立することが出来た。さらに標定結果のヒストグラムを作成することで，標定精度を向上させることを確認した。

1-137

部分放電による発泡エナメル線への蓄積電荷の測定

◎田中壱樹・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・太田槙弥・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

モータ巻線間での部分放電を抑制するためには部分放電開始電圧を高くすればよく、エナメル線絶縁皮膜の誘電率を低下させることでそれを実現できる。その方法として、皮膜を発泡させることで誘電率を低下させた発泡エナメル線が考えられている。また、部分放電による蓄積電荷が部分放電特性に影響を及ぼすことがわかっている。そこで、本研究では皮膜発泡によるエナメル線への蓄積電荷の影響を把握するため表面電位測定を行った。その結果、電圧印加直後の表面電位分布について、通常のエナメル線は正負の電位値が混在するが発泡エナメル線では負に偏る傾向を示し、皮膜を発泡させることで負の電荷が蓄積する傾向があることがわかった。

1-138

直流電圧印加時と交流電圧印加時の部分放電による放射電磁波の特性比較

◎神川卓人・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

故障や事故を未然に防ぐために、絶縁破壊に至るまでの前駆現象である部分放電を検出し、劣化等の異常を発見することが重要である。本報告では部分放電により発生する電磁波に注目し、直流電圧印加時と交流電圧印加時の部分放電による放射電磁波について特性を調べた。 部分放電が発生した時の電磁波を高速フーリエ変換を用いると、直流では200MHz以下の成分で強度が現れて、交流では300MHz以下の成分で強度が現れることが分かった。ウェーブレット変換を用いると、直流は50MHz付近の振動成分が強く現れ、交流では最初に現れる100MHz以上の成分が強いことが分かった。

1-139

エナメル線の部分放電における放電電荷量及び放電発生回数の位相角特性

◎石津祥子・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・太田槙弥・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年、モータ巻線の部分放電による絶縁劣化や微小欠陥の診断が求められている。本研究ではツイストペアエナメル線における部分放電の診断及び発生機構の把握のため部分放電電荷量及び発生回数の位相特性に着目した。本報告では交流電圧を10分間印加した場合のエナメル線(PIW)の電圧位相に対する100pC以上の部分放電電荷量及びその発生回数の測定を行った。印加時間が増加するにつれ、放電電荷量及び発生回数は減少することが確認された。また、印加電圧が正の位相範囲は、負の位相範囲に比べ放電電荷量の小さい放電の発生回数が少ないことが確認された。

1-140

部分放電による超音波の周波数スペクトルと放電発生頻度の関係

◎井上俊介・姚 因龍・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

近年、高度成長期に大量投入された変圧器など機器が寿命を迎え、電力機器内外における絶縁物の劣化や接触不良による、部分放電が発生する。この部分放電は放置すると絶縁破壊に至り、事故、故障が発生するため、絶縁破壊の前駆現象である部分放電を検出し診断することが重要である。本報告では部分放電の極性によって電流値、電荷量、発生頻度などが異なり、部分放電劣化の状況も異なってくるので、劣化診断の精度を向上することができると考え、超音波を使い、放電の極性判断に着し、電気機器内の欠陥を模擬した測定系を用いて、部分放電に伴う超音波の検出と周波数解析を行った。

1-141

部分放電開始電圧におけるN₂, CO₂, Dry air 及びSF₆の部分放電電流波形に基づく放射電磁波特性に関する基礎検

◎白石智也・大塚信也（九州工業大学）・井波 潔・羽馬洋之（三菱電機）・植田玄洋・岡部成光（東京電力ホールディングス）

筆者らは、これまで電磁波検出によるGIS診断技術の高度化および部分放電(PD)現象の理解を目的とし、SF ₆および自然ガスであるN ₂、CO ₂、Dry airの部分放電特性に関する基礎検討として、交流電圧印加時の部分放電電流及び放射電磁波を測定し、ガス間で比較検討を行っている。その結果、ガス種や印加電圧極性によりPD電流波形は異なり、放射電磁波波形が異なること、また、自然ガスにおいてはUHF帯よりVHF帯のアンテナの方が感度よく電磁波検出できることが分かった。本論文では部分放電開始電圧におけるN ₂、CO ₂、Dry air及びSF ₆の部分放電電流波形に基づく放射電磁波特性に関する基礎検討を行った。

1-142

パワーモジュール封止用絶縁ゲル中の急峻電圧波形による劣化現象

◎三谷卓矢・江尻 開・佐藤正寛・熊田亜紀子・日髙邦彦（東京大学）・山城啓輔・早瀬悠二・高野哲美（富士電機）

近年利用が広まるIGBT モジュールの絶縁には、シリコーンゲルが用いられる。IGBT モジュールでは部分放電によって、キャビティーという、樹枝状の劣化部分が基板とゲルの界面に形成される。実際のIGBT では立ち上がりが数μs 以下のPWM 波形が印加される。本研究では、IGBT モジュールの高耐圧化・長寿命化に資することを目的として、数十 nsから数百 nsで立ち上がる電圧を印加した際のキャビティー進展を調査した。 キャビティー進展長と立ち上がり時間の関係を調査した結果、立ち上がり時間が短くなると、進展長が大きくなる傾向がわかった。これは、印加電圧が部分放電開始電圧に達してから部分放電が生じるまでの時間遅れによって、立ち上がり時間が短いほど、印加電圧の瞬時値が大きくなるためだと考えられる。

1-143

Observation of Partial Discharges in a Cylindrical Cavity with and without Carbon

◎Worawat Liawthanyart・津田真理子・山賀幹大・大山龍一郎（東海大学）

Our research has been working on the observation and evaluation of the PD phenomena to occur in the cylindrical cavity in the glass epoxy laminated board from the viewpoint of training of the educational front. In this work, the consideration is possible to evaluate the quantity of electric charge and the location of PD light emission. This report informs the results of PD light emission and charge quantity from a cylinder form cavity which is surrounded in insulating laminated board with and without carbon fiber as intermediate.

1-144

針-平板電極系における部分放電特性の正弦波印加電圧周波数依存性

◎真下貴文・對馬麻美・岡本達希（東北大学）

近年ではCVケーブルなど高電圧機器に使用されている絶縁体での部分放電による劣化が機器に悪影響を与えることが懸念され、部分放電に関する様々な試験が行われている。しかしながらこの部分放電試験には試験時間が長時間に亘ってしまうという問題点があった。そこで印加電圧の周波数を上げ加速的に試験した場合の有用性が未だ不確かであるためモデル電極である針平板電極と絶縁材料の一つであるポリエチレンを用いて各種部分放電特性(最大放電電荷qmax、パルス平均φ-q分布）を調査した。

1-145

X線位相イメージングを用いた充填剤入りエポキシ樹脂中での電気トリー経時変化観察

◎徳弘 誠・中村隆央・松岡成居・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・加藤達朗・山極時生（日立製作所）

変圧器やGISのスペーサ部分といった電力用機器にはエポキシ樹脂を用いた固体有機絶縁物が用いられる。それらの固体絶縁物の電圧印加による長期劣化現象の一つとして電気トリーが広く知られている。電気トリーは高分子材料の絶縁劣化が生じた箇所に見られる樹枝状に伸びた細い(サブμm~μm オーダ)管状の劣化痕の集まりであり,固体内部のボイドなどの欠陥から進展することによって最終的に対向電極まで到達し絶縁破壊へと至る。固体絶縁物の劣化現象の解明のためには,トリー進展の可視化が必要不可欠である。しかし,電力用機器に用いられる絶縁樹脂はシリカなどの無機材料が充填され不透明であるため,可視光による内部観察が困難である。本稿ではX線で撮影した画像を差分撮影という手法により不透明サンプル中のトリーの経時変化観測を行い,トリーの進展と充填量といったパラメータとの関係を調査することを目的とした,有機絶縁物中の電気トリーの観察結果を報告する。

1-146

エナメル線における部分放電特性の矩形波印加電圧周波数に対する依存性

◎大井 景・橋本祥斉・岡本達希（東北大学）

【背景】インバータサージによる部分放電（PD）劣化によりモータ巻線が早期に絶縁破壊する事例が報告されている。本稿ではエナメル線ツイストペアでモータ巻線のPD劣化寿命を模擬し，矩形波電圧を印加した際の各種PD特性量の周波数依存性について計測した。【実験内容】①試料に電圧900V，周波数を1〜10kHzと変化させ絶縁破壊に至る時間を求めた。②初期状態と十分に課電した時のPD特性を求め,比較した。【実験結果】①課電寿命試験ではいずれの印加電圧周波数でもほぼ一定のサイクル課電後に絶縁破壊を起こした。②最大放電電荷・φ-n分布は周波数や劣化状態による差異は明確には現れなかった。【結言】1〜10kHzの周波数範囲では寿命時間や課電時間経過による差は明確には観測することができなかった。今後は各種条件におけるPD特性を解明して行く予定である。

1-147

IEC(b)電極における部分放電特性の矩形波印加電圧周波数依存性

◎安齋 哲・舩坂昇平・岡本達希（東北大学）

IEC(b)電極を用いて、まだ課電していない絶縁体に矩形波電圧を印加し、放電発生頻度、最大放電電荷、各位相角で起きている放電を測定した。その結果わかったのは、周波数が低いときには入力電圧の立ち上がりと立下り付近のみでしか放電は起きないが、周波数が高くなるとそれ以外の位相でも放電が起こるということである。今後は、初期特性のみではなく、絶縁破壊直前での部分放電特性の測定や、電極の形状や試験シートを替えて同様の実験を行う予定である。

1-148

真空中の微小粒子挙動及び粒子起因の絶縁破壊

◎江尻 開・松岡成居・熊田亜紀子・日髙邦彦（東京大学）・道念大樹・月間 満（三菱電機）

真空遮断器において、電流遮断後に生じる遅れ絶縁破壊現象には、真空ギャップ中の微小粒子挙動が関係していると考えられている。本稿では、真空ギャップ中に微小粒子を注入し、直流印加時の微小粒子挙動を高速度ビデオカメラにより観測した。その結果、微小粒子挙動は、電極に付着するもの、電極上でバウンドするもの、電極間を往復運動するものに分類できることが明らかになった。また、微小粒子がカソード付近に存在するタイミングで、絶縁破壊が稀に生じた。微小粒子起因の絶縁破壊は、絶縁破壊前の粒子挙動、絶縁破壊が生じた場所、絶縁破壊後の粒子挙動をもとに、6パターンに分類することができることが明らかになった。

1-149

真空中の絶縁物とメタライズ層との境界部における絶縁破壊前駆電流の測定

◎山崎竜平・山納 康（埼玉大学）・浅利直紀・塩入 哲・市川貴善（東芝）

本実験では陰極トリプルジャンクション(CTJ)を模擬するため、表面上にメタライズ層を形成したアルミナ試料を用いた。実験ではギャップ間に直流電圧を印加したときの放電発生箇所の観測と前駆電流の測定を行った。結果として、電圧を一定であっても電流が時間と共に増加していくという現象が確認された。以上のような現象が見られた原因として、メタライズ層近くのアルミナセラミックスの帯電が考えられる。

1-150

真空中交流沿面フラッシオーバに及ぼす帯電極性・分布の影響

川口王嗣・◎加藤 丞・小島寛樹（名古屋大学）・浅利直紀・塩入 哲（東芝）・早川直樹（名古屋大学）

真空遮断器の高電圧化には，固体絶縁物上の帯電および沿面フラッシオーバのメカニズムの解明が不可欠である．本稿では，沿面上の電界方向が垂直型および平行型となる電極系を用いて真空中固体絶縁物上の帯電形成とフラッシオーバメカニズムについて検討を行った．その結果，垂直型電極系では部分放電により放出された電子によって固体絶縁物上に負極性帯電が形成されたのに対し，平行型電極系では2次電子雪崩によると考えられる正極性帯電が形成された．また，フラッシオーバは，垂直型電極系においては突発的電子放出に起因しているのに対し，平行型電極系では2次電子雪崩に起因している可能性がある．

1-151

真空中固体絶縁物上の初期帯電電位分布が沿面放電メカニズムに及ぼす影響

◎生田和也・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・土屋賢治（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空遮断器の高電圧化のためには，固体絶縁物上の帯電および沿面フラッシュオーバー(FO)のメカニズムの解明が不可欠である．本論文では，初期帯電電位分布を制御し，ロジスティック式で表される負帯電分布および高電圧電極近傍に集中した負帯電分布がFOメカニズムに与える影響を検討した．その結果，ロジスティック式で表される帯電分布の場合，FOが陰極上の突発的電子放出に起因したと考えられるのに対し，高電圧電極近傍に集中した帯電分布の場合，絶縁物沿面上の二次電子なだれを起点としてFOが発生したと考えられる．この結果は，初期帯電の大きさだけでなく，電位分布が沿面FOメカニズムに影響を与えることを示している．

1-152

真空中におけるアルミナの表面抵抗と沿面絶縁破壊電圧との関係調査

○浅利直紀・竪山智博・坂口 亙・塩入 哲・近藤淳一（東芝）

真空を絶縁媒体とした高電圧機器において、高電圧部を支持し、固定するためにセラミックが用いられており、真空中でのセラミック表面を介して発生する沿面絶縁破壊電圧の向上が必要となる。過去の研究から、沿面絶縁破壊は、セラミック表面状態に大きく影響されることが分かっている。本発表では、Cr2O3を成膜したセラミックの表面抵抗と沿面絶縁破壊電圧を測定し、表面抵抗と沿面絶縁破壊電圧との相関について調査した。その結果、Cr2O3を成膜することでセラミックの表面抵抗が低減し、沿面絶縁性能が向上することが分かった。これは、セラミックの表面抵抗と2次電子放出係数の低減により、セラミック表面の帯電が緩和されたためであると考えられる。

1-153

真空アークへの縦磁界が及ぼす銅蒸気の数密度分布

◎岩田総司・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

現在，真空アークへの縦磁界印加が及ぼす電極の損耗の物理現象と最適な条件の決定要因の解明が求められている。本論文では，縦磁界を印加することによって，質量保存則における磁束密度と垂直方向の拡散係数が小さくなることに着目し，3次元電磁熱流体シミュレーションを用いて，真空アークへの縦磁界が及ぼす銅蒸気密度分布を解析した。

1-154

真空アーク陰極点における電流変化時のエネルギーバランス

◎山本真司・岩尾 徹・江原由泰（東京都市大学）

本論文では，真空アークのエネルギーバランス知見を得るため，電磁熱流体解析を行った。電流が増加すると入熱が増加し電圧が減少するが，陰極での熱損失を考慮すると10 A程度で電流密度が最大となり，妥当な結果が得られた。

1-155

水上直流コロナ放電を用いた水処理における気相オゾンの影響

◎神澤龍也・見市知昭（大阪工業大学）

近年、放電プラズマを用いた水処理が注目されているが、反応プロセスの詳細は未だ不明であり、これを明らかにすることが求められている。本研究では水上直流コロナ放電を用いて酢酸分解処理を行い、また、FTIRを用いて気相部分の放電生成物の測定を行った。さらに外部オゾナイザーよりリアクタ内へのオゾン添加を行い、気相オゾン濃度を変化させて同様の実験を行った。その結果、オゾン添加量とコロナ放電電力の増加によって酢酸分解量が増加することがわかった。また同じオゾン濃度であってもガス供給量の違いによって分解量に差があることがわかった。これよりガス供給量に関係する水蒸気量が処理に影響を及ぼしている可能性がある。

1-156

多並列水中気泡内交流プラズマによる酢酸分解

○竹内 希・石橋直人（東京工業大学）

水中気泡内プラズマをバラストキャパシタを用いて21個並列駆動し，水中の難分解性有機物である酢酸を分解した。キャパシタの値を各処理孔ごとに変えることで，プラズマへの投入電力を変化させ，オゾンおよび過酸化水素の生成比を制御することができる。100 pFのキャパシタを21個用い，8 kHzの矩形波で駆動する条件1と，100 pFを6個，15 pFを15個用い，3 kHzで駆動する条件2の二条件で実験を行った。条件2では，条件1に対して分解速度が2.5倍，分解効率が2.3倍となった。これは，条件1では過酸化水素生成過多であるのに対し，条件2ではオゾンの生成量が大きく，処理液中でのOHラジカル生成反応を効果的に起こすことができたためである。

1-157

MCS放電によるオゾン生成及び水処理の検討

◎宮本 令・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

MHCDを電子の供給源として用いたMCS放電による水処理の検討を行った．この検討にはインジゴカルミンを溶解した水溶液を使用した．チャンバにMCS放電装置を設置し，オゾンを発生させ，ポンプによりインジゴカルミン水溶液に送り込み，反応させた．また，この実験ではMHCDの陰極の形状を変化させた場合についても実験を行った．実験の結果，MCS放電によりオゾンが発生し，インジゴカルミンの濃度が減少したことから，オゾンがインジゴカルミンの分解に寄与したのではないかと考える．陰極形状については穴の空いた陰極と穴を覆った陰極の2種類について行い，陰極を覆った場合の方が多くのオゾンが発生し，インジゴカルミンの処理量も上がった．

1-158

Generation of Nitrate (NO₃^-) Ion Water by Spark Discharge with Air Bubbling

◎Sholihatta Aziz Kusumawan・中曽哲史・針谷 達・須田善行・滝川浩史（豊橋技術科学大学）

Plasma can be applied on the water surface to generate NO₃^- in water. The water treatment system using multi spark plugs was created. However the previous system was not so powerful to generate the NO₃^-. Therefore in this research, the newer water treatment system using bubbling method is proposed to increase the NO₃^-. Then the generated NO₃^- using bubble and without bubble are compared. The result shows that the generated NO₃^- concentration using bubble was higher than generated NO₃^- concentration without bubble. For 50% duty cycle, the generated NO₃^- using bubble is 3.5 times higher than generated NO₃^- without bubble.

1-159

高速回転体によって発生したキャビテーション気泡内放電の観測

◎岡田 翔・澤近航平・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマはキャビテーション現象によって液中に生じる微小気泡内に高電圧短パルスを高繰返しで印加することによって生じる低温プラズマである。キャビテーションプラズマは処理能力が高いため、疎水性紛体の分散、ナノ粒子の合成、殺菌、有害物質の分解などへの応用が期待されている。しかし、その気泡内での放電現象は明らかになっていない。そこで本実験では発生するキャビテーション気泡が高速に移動するため、ICCDカメラを用いて露光時間を10 µsとすることで瞬間的な放電現象を撮影に成功した。キャビテーション気泡の動きに伴い弧状の放電路が形成されている様子を確認できた。

1-160

スイッチング制御を用いた低発熱型水放電処理装置の開発

◎中曽哲史・クスマワンショリハッタ アジズ・針谷 達・須田善行・滝川浩史（豊橋技術科学大学）

近年，農業分野における放電プラズマ応用の一つとして，水の放電処理による硝酸イオンの生成が報告されている。本研究では，高電圧電源にインバータネオントランスを用い，電極に自動車用のスパークプラグを用いて放電処理装置の開発を行ってきた。しかし，放電にともなう電極の発熱により装置を変形させてしまう問題があった。本研究ではトライアックを用いたスイッチング制御を行うことで電極の発熱を抑えた，水放電処理装置の開発を行った。放電試験の結果，電極温度は約50℃に抑制でき，装置本体の変形を防ぐことができた。また，水中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオン濃度は約90 mg/Lまで増加した。

1-161

球雷放電を用いた水処理の放電条件および溶液の水質に及ぼす影響の研究

◎高取芳光・稲田優貴・前山光明（埼玉大学）

OHラジカルの発生を伴う球雷放電には、長寿命広範囲という特徴があり、従来の水処理に比べて処理量の増大が期待できる。本研究では、放電条件が処理能力に及ぼす影響の評価や、溶液にもたらす変化について調査した。充電電圧を変更した放電時間70msの球雷放電400回による水処理の結果、4.0 kV及び4.5 kVの時では3.5 kVに比べ処理量は増えるが、入力電力と処理量から求めた効率[g/kJ]は3.5 kVの時に一番大きくなった。オゾンおよび酸素溶存量測定を行った結果、酸素溶存量には変化が見られなかったが、オゾン濃度は放電とともに高くなり、また電極極性の違いによる大きな変化が見られた。

1-162

アルゴン誘電体バリア放電によるインジゴカルミン水溶液の脱色特性

○寺西研二・村田啓輔・米沢昌紘・下村直行（徳島大学）

難分解性有機化合物の分解処理には促進酸化処理が用いられているが，近年，放電プラズマを水面あるいは水中で生成することにより生じる各種化学活性種を利用した処理技術が注目されている。著者らは誘電体バリア放電（DBD）を処理水面上で生成し，難分解性有機化合物分解除去の高速化を目的とした水処理装置の開発を行っている。本報告では， DBD型水処理装置に放電ガスとしてアルゴンを供給した際のインジゴカルミン水溶液の脱色特性について調べた結果を述べる。

1-163

準大気圧定常アーク放電プラズマ装置の開発とその放電基礎特性

◎奥村卓也・菊池祐介（兵庫県立大学）・山田耕平・前中志郎・青田達也・藤田和宣（ユメックス）・高村秀一（愛知工業大学）

精密微細加工（露光）技術等の産業界で利用されるショートアークランプでは，高気圧アーク放電の電流およびプラズマ流によって，陽極先端部の表面温度は3000 K以上にもなる。将来の高負荷化や長寿命化のために，高い熱放射特性を持つ繊維状ナノ構造を表面に施した革新的W電極の開発，W微粒子放出過程や放電特性の変化を明らかにする基礎研究，などが必要である。我々はこれらの背景の下，金属容器内にて準大気圧アーク放電プラズマを発生させる装置を開発した。初期結果として，Heガス圧力82 kPa，電極間距離1 mmの時，放電電流52 A，電圧39 V，電力2.0 kWにて，準大気圧定常Heアーク放電を安定に維持することに成功した。

1-164

アルゴンアークジェットプラズマへの窒素ガスパフによる窒素励起状態に関する実験的研究

◎福川千菜・根津 篤（東京工業大学）・Reda Ahmed El-Koramy（Assiut University）・赤塚 洋（東京工業大学）

近年、様々なプラズマ応用に窒素ガスも使われる傾向にあるが、高速流プラズマと窒素分子との関係は未だ明らかでないことが多々ある。そこで、本研究では、アルゴンアークジェットプラズマに窒素ガスパフすることで、高速流プラズマと窒素分子との相互作用を調べる。特に、窒素励起状態(B³Π_g状態とC³Π_u状態)の生成消滅について着目している。今回は、それらの窒素励起状態を発光分光法(OES)で計測し、各励起状態の振動温度T_vと回転温度T_rを算出する。さらに、窒素ガスパフの位置は、アークジェットプラズマの上流、中流、下流の3点とし、比較検討を行なう。

1-165

開放端磁場による超音速電離希薄アークジェットプラズマの電流モデル数値計算

◎AMPAN LAOSUNTHARA・赤塚 洋（東京工業大学）

本研究は開放端磁場による超音速電離希薄アークジェットプラズマの電流モデル数値計算を行った。特にイオン－電子間の流速差モデル（電流モデル）において背景圧力がプラズマに与える影響を調べた。イオンと中性粒子の流速は背景圧力に影響を受けたに対して、電子流速はそれほど変化がなかった。またプラズマ電位も背景圧力の影響が少なかった。プラズマ電位は電子の動きに大きく関わると考えられる。温度に関して、荷電粒子と中性粒子の変化に違いがあった。荷電粒子は開放端磁場直後に変化があった。それに対して中性粒子は下流に変化があった。それは背景圧力が中性粒子流だからだと考えられる。

1-166

縦磁界印加時におけるアルゴンプラズマアークの姿態と全光束

内藤友人・◎坐間義幸・清水雄太・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

アークの放射パワーは，アークの温度分布を適切に調節することで，演色性やランプ効率の向上が可能である。本論文では，これらの知見を基に，アルゴンプラズマアークに一様な縦磁界を外部より印加することにより，アークの姿態を変化させ温度体積を増加させることを目的とした。また，演色性やランプ効率の指標となる全光束の算出を行った。

1-167

回転横磁界の周波数変化時におけるアークの回転姿態と回転磁界との位相差

◎椎野 透・石井葉子・坐間義幸・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

ガスシールドアーク溶接は金属の接合法として多く用いられる。しかし，横風によりアークが偏向し，入熱不足が発生するという問題があり，アークの偏向を防止する必要がある。この偏向を防止するために，筆者らは，回転横磁界を印加しアークの指向性を高めることを提案してきた。しかし，アークは荷電粒子であると同時に熱流体でもあるため，アーク自体に質量や流れを持つことから，ある周波数より高くすると回転磁界に対してアークの偏向に遅れが生じることが考えられる。以上に鑑み，本研究では，回転横磁界の周波数変化時におけるアークの回転姿態と回転磁界との位相差の検討を行った。

1-168

金属蒸気混入時のパルスTIG溶接における入熱効率と溶融池表面の電磁力

◎田中達朗・真栄田義史・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

パルスTIG（Tungsten Inert Gas）アーク溶接は，TIG溶接の入熱不足による融合不良などの溶接欠陥を防止するために用いられる。この溶接方法の性能向上を図るためには，溶融池の溶け込みが深くなる具体的な溶接プロセスを解明する必要がある。本論文では，母材に与える入熱と駆動力を算出し，パルスTIG溶接の溶接プロセスを検討するために，電磁熱流体シミュレーションを用いて，パルスTIG溶接における入熱効率と溶融池表面の電磁力について検討した。結果として，ピークとベース電流を短くし，周波数を増加させることにより入熱効率は，500 Hzまで増加し，その後一定となり飽和した。溶融池表面に働く電磁力は，高周波数ほど軸中心部に推移し，増加した。

1-169

電磁熱流体シミュレーションを用いたアーク放電によるトロリ線とすり板の溶損量の算出

◎真栄田義史・岩田総司・田中達朗・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）・早坂高雅（鉄道総合技術研究所）

電気鉄道におけるトロリ線とすり板の開離によって生じる高温のアーク放電は，トロリ線とすり板の溶融と蒸発を引き起こし，これらの材料が損耗する。本論文では，電磁熱流体シミュレーションを用いてアーク放電によるトロリ線とすり板の溶損量の算出を行うために，アーク放電発弧後におけるトロリ線側である陽極から発生する金属蒸気量の時間変化を解析した。すり板側である陰極，アーク，トロリ線側である陽極を1つの系として，陽極からの金属蒸気の発生を考慮した解析を行った。陽極の溶損量として，陽極からの金属蒸気量を算出した。結果として，アーク発弧直後は，電流の増加に伴い金属蒸気量が増加した。

1-170

非移行式直流プラズマトーチの電流・電圧特性

◎前島 啓・齋藤宏輝・鈴木琢矢・藤野貴康（筑波大学）

本研究では，非移行式直流プラズマトーチにおける投入電流とアーク電圧の関係を調べるため，投入電流を実験パラメータとして変化させ，アーク電圧を計測した。また計測結果から，アーク電圧の時間平均値，変動幅，変動周波数に対するパワースペクトルを計算した。実験装置には，溶接機を改造した1 kWクラスの非移行式直流プラズマトーチを用意した。作動ガスはArガスとし，流量は20 L/minとした。投入電流は27 Aから約10 Aごとに101 Aまで計測した。計測結果から，投入電流の増加により，アーク電圧の時間平均値と変動幅は減少した。また，投入電流の増加により，電圧変動の高周波成分の比率が増加した。

1-171

2重シールド酸素混合ガストーチにおける陰極点の挙動観測

○鎌田憲嗣（瀬田工業高等学校）・湯地敏史（宮崎大学）・田代真一（大阪大学）・房野俊夫（佐世保工業高等専門学校）・木之下広幸（宮崎大学）・田中 学（大阪大学）

本研究では,これまで交流TIG溶接での陰極点の挙動観察に取り組んできた。その結果,陰極点が溶融池中心部には存在しないことが明らかとなった。だが,カメラの性能や撮影位置などの問題から本質的な確証には至っていないのが現状である。本稿では,交流TIG用二重シールドガストーチにおいて,酸素を含むシールドガスを用い,高速度ビデオカメラで観察することで,アルミニウム板の交流TIG溶接時の溶融池及び酸化膜上の陰極点挙動を観察することに成功した。

1-172

陰極と陽極の電極材質が異なる場合の開極時におけるDCアーク電圧特性に関する基礎検討

○柴山正雄・田中康規・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）

異種材質の電極として炭素Cと金属を組合せた場合の電極開極時アーク電圧を測定し，陽極材質がアーク電圧に影響を与える場合があることを報告する。通常，アーク電圧には陰極材質に起因する固有の最小アーク電圧が現れるが，陰極C，陽極Alの場合，陽極Alの最小アーク電圧と同等のアーク電圧が現れた。また，陰極C，陽極Cuの場合は初期に陰極Cのアーク電圧が現れたがその後低下し，ほぼ陽極Cuの最小アーク電圧が現れた。これらの組合せでは陽極材質の固有最小アーク電圧と同程度のアーク電圧が現れたこと，および，放電後の陰極放電部位に異物付着が見られたことから，陽極材質が陰極表面にアーク形成前，および／またはアーク形成後に付着し，このような特性が出現したと考えられる。

1-173

アークからの放射パワーによる二層構造の耐アーク布材温度上昇の数値解析的検討

◎松島智也・宇都宮裕人・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・見尾 渡・松本良友・内堀恵太（カネカ）

アークフラッシュ事故によって発生する高熱流から作業員を保護するため，防護服の耐アーク性能向上が望まれる。筆者らは，アクリル系繊維の溶発現象による熱遮蔽効果を検討してきた。しかし，溶発現象により遮蔽できるのはアークからの高熱流束のみであり，強力な放射光への対策が必要である。これまでの実験的検討から，光吸収剤を添加した布材と非添加の布材を組み合わせると，耐アーク性能が向上することが分かっている。筆者らはこれまでに，アーク放射光により一層の布材の温度上昇を模擬する，簡易的な数値解析モデルを構築してきた。本報では，さらに2種の層を組み合わせた布材の温度上昇を模擬するモデルを構築した。

1-174

プラズマ切断用トーチにおけるアークプラズマ特性のノズル形状依存性

◎大邊優太・諏訪部恭平・竹中裕亮・上杉喜彦・田中康規・石島達夫（金沢大学）・山口義博（コマツ産機）

プラズマ切断機の性能向上のため、切断対象への入熱を増やすとともに機器へのダメージを減らすノズル形状を検討することを目的としている。そのため、アークプラズマを緊縮しているノズルの形状によって、噴出するジェットの持つ熱やノズル内の圧損がどれほど変化するのかを数値解析によって調査した。 その結果、ノズル径を大きくするとノズル圧損が小さくなることが確認できた。しかし、プラズマの収縮が弱くなり、集中した熱を噴出できなくなるというトレードオフの関係も同時に確認できた。そのため、最適なノズル形状にはいくつかの条件を吟味して決定する必要がある。

1-175

YAGレーザを用いたプラズマ切断面の溶融挙動の観測〜スペックルノイズの軽減〜

◎竹中裕亮・諏訪部恭平・大邊優太・上杉喜彦・田中康規・石島達夫（金沢大学）・山口義博（コマツ産機）

プラズマ切断において発生するドロス及び溶融挙動の観測を目的としているが，アークプラズマの発光が強すぎてアークプラズマの裏側の切断面近傍での溶融挙動の観測が行えない。そこでアークプラズマよりも強い光を出力するYAGレーザとバンド・パス・フィルタを用いたストロボ撮影によって，今まで見ることのできなかったアークプラズマの裏側の溶融挙動を行った。しかしYAGレーザのようなコヒーレンス性の高い光を切断面のような粗面に照射すると，斑点模様が発生し詳細な観測が困難となる。このような斑点模様はスペックルノイズと呼ばれている。このスペックルノイズを軽減させることによって，詳細な観測が行えると考えている。

1-176

N2,CO2,Dry airおよびSF6ガス中の導体および絶縁物への金属異物付着による絶縁特性

◎吉田貴志・井波 潔・清水芳則・羽馬洋之（三菱電機）・植田玄洋・和田純一・岡部成光（東京電力ホールディングス）

SF6は優れた絶縁媒体であるが，地球温暖化係数が極めて高く，環境への影響を低減するためN2, CO2, Dry airなどの環境負荷の小さいガスの絶縁特性が研究されている。例えばCIGRE SC D1においては，これらの絶縁特性をもとに自然ガスによる代替試験法の検討が進められている。今回，各種自然ガス中における絶縁物および導体表面への金属異物付着による，AC電圧印加時の放電特性を取得し，SF6中の同特性と比較検討したので報告する。

1-177

乾燥空気/樹脂の複合絶縁における初回絶縁破壊電圧と電離指数の関係

◎上田優貴・岩本崇弘・大澤直樹（金沢工業大学）

地球環境保全の観点からSF6ガスを使用しない高電圧絶縁方法が研究されており，高ガス圧力化が不要な乾燥空気と樹脂を用いた複合絶縁が注目されている。本研究では各種ギャップ長(22mm，28mm)における樹脂被覆電極の初回絶縁破壊電圧と静電界分布を利用し，Schumannの火花条件式から電離指数Kを求めた。 その結果，ギャップ長を6mm長くすると初回絶縁破壊電圧は22%増加した。また，初回絶縁破壊時の電離指数Kは初回絶縁破壊電圧の値に影響されることを確認した。さらに電離指数Kの値は空気の一般値と近い値となった。

1-178

固体絶縁物同士の界面における絶縁破壊現象－表面粗さと面圧の影響－

◎増井秀好・山本雄登・大澤直樹（金沢工業大学）・柳瀬博雅・岡本健次（富士電機）

固体絶縁物の電力輸送機器への適用が注目されているが，円筒状の被覆電極の接続部を模擬した実験データが少なく，固体絶縁物同士の界面における絶縁破壊電圧(BDV)や放電の挙動などはほとんど報告されていない。 本研究では，固体絶縁物としてアクリル樹脂を使用し，固体絶縁物同士の界面への圧力(以後，面圧と呼ぶ)と表面粗さがBDVに与える影響を調査した。 その結果，面圧を加えるとBDVの平均値は28%上昇したが，ある値以上の面圧を加えてもBDVの平均値は上昇しなかった。また，すべての面圧において，表面粗さを変えてもBDVは変化しなかった。

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直流高電圧印加時の空気中複合絶縁における部分放電・帯電・絶縁破壊特性

◎高林享平・古屋鋪 樹・酒井崇行・中根龍一（愛知工業大学）・加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）・大久保 仁（愛知工業大学）

現在，電力機器において高電圧直流技術(HVDC)が導入されつつあるため，高電圧直流絶縁性能の向上必要である．そのため，直流部分放電・帯電特性および絶縁破壊特性の解明が重要である．本論文は，ステンレス製の針・棒・球―平板を用い，直流高電圧を印加し直流部分放電・帯電特性及び絶縁破壊特性の測定を行った．その結果，直流高電圧印可時における空気中複合絶縁系の直流部分放電，絶縁破壊及び直流帯電特性による電荷挙動の相関性を明らかにした．

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Kernel ridge regressionと量子化学計算を用いたSF6代替ガスの絶縁破壊電界・沸点予測

◎佐藤正寛・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）

近年は環境保全の観点から各国でSF6の代替ガスの研究が行われている。気体材料の絶縁特性にとって絶縁耐力と沸点は最も本質的な物理量である。ただ、SF6のような人工的な気体まで含めると、すべての気体種の特性を実験的に確認することは不可能に近く、気体絶縁材料の探索を高速化するためのスクリーニング法の開発が行われている。本稿では機械学習法のkernel ridge regression法を及び、量子化学計算を用いることでSF6代替ガスの絶縁破壊耐力と沸点を予測し、予測モデルの精度をdouble cross validation法によって評価した。結果、予測された絶縁破壊電界・沸点は実験値と20%程度の誤差の範囲内で一致し、先行研究とくらべて推定値誤差を30 %程度低減できることが確認できた。

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圧力測定フィルムを用いた気中長ギャップ放電の圧力測定

◎高根直也・高村紀充・矢野誠明・山﨑翔太・川岡広典・佐藤功章・森山 晃・沖村健也・花井正広（福岡大学）

本論文では、絶縁物を貫通する要因の1つとして考えられる放電の圧力について調査した。棒－平板電極間に圧力を加えると色が変化するフィルムを置き、電極間に負極性雷インパルス電圧を印加して放電を発生させた。このとき、放電の熱などがフィルムに伝わらないようフィルムを銅板で覆い実験を行い、実験後にフィルムの色の変化（放電の圧力）を調査した。その結果、放電の圧力は約10 ~ 25 MPaであることがわかった。これまでの実験で貫通が確認されている、厚さ100 µmのPETフィルムのカタログでの破断強度は225 MPaである。このため、均等に加わった放電の圧力だけは貫通する可能性は低いと考えられる。

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気中長ギャップ放電による絶縁物の貫通試験〜重ねの影響〜

◎山﨑翔太・高村紀充・矢野誠明・川岡広典・高根直也・沖村健也・佐藤功章・森山 晃・花井正広（福岡大学）

本論文では、放電が絶縁物を貫通する現象を調査するために、厚さ250 µmのシートのみの場合と、11.5 µmのフィルムとテープでシート上部・下部に気泡を作った場合において放電試験を行い、放電貫通時の絶縁物の気泡とテープの影響を調査した。シートのみの場合、10サンプル中2サンプルでのみ放電の貫通痕が確認できた。一方、シート上部に気泡を作った場合、全てのサンプルで貫通痕が確認でき、5サンプル中4サンプルでフィルムを重ねた気泡部分が破裂した。また、シート下部に気泡を作った場合、5サンプル全てでテープの端の部分に貫通痕が確認できた。従って、シートにシート以外の物が存在する場合、放電はシートを貫通しやすくなると考えられる。

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空気中チャネル加熱絶縁破壊に至るエネルギーに関する考察

◎杉野一樹・小島寛樹（名古屋大学）・大嶽 敦・小林金也・加藤達朗・六戸敏昭（日立製作所）・早川直樹（名古屋大学）

環境適合性の高い空気は，多くの電力機器において絶縁ガスとして使用されているため，絶縁破壊メカニズム解明が重要となっている．空気中不平等電界短ギャップ放電においては，針電極から複数の1次・2次ストリーマが発生・進展し，対向電極に到達後，最短距離のチャネルに電流集中が生じ，他のチャネルは減衰する．最短距離のチャネルは電流が流れ続けて，加熱され，絶縁破壊に至る場合がある．本論文では，制限抵抗によりチャネル電流を制御し，絶縁破壊に至るチャネルの投入エネルギーのしきい値を検討した．その結果，しきい値は電流値によらず，ギャップ長が長くなると増加することがわかった．

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エポキシ樹脂-ゴム密着界面における金属異物混入時の絶縁特性

◎大竹泰智・梅本貴弘・吉村 学・釣本崇夫（三菱電機）

高電圧の電力機器やケーブルにおいて、固体絶縁部品が接続されて形成される密着界面は、接続作業時の異物混入で絶縁性能が大きく左右される。これに対し、これまでの検討から金属線（導電繊維）混入時が絶縁性能への影響が大きいことが明らかになっている。しかし、金属線のサイズと絶縁低下の関係の検討は未だ少ない。そこで本報告では金属線の線径と絶縁特性の関係を検討した。

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仮想陰極発振器における高出力マイクロ波の電力測定と共振器の効果

◎寺前元裕・丹羽郁弥・中村 吏・大橋隼人・伊藤弘昭（富山大学）

仮想陰極発振器とは相対論的電子ビームを利用した高出力マイクロ波源の一つで、空間電荷効果により仮想陰極を形成し、電子ビームの往復運動と仮想陰極自身の振動によりマイクロ波を発生させる装置である。仮想陰極発振器は他のマイクロ波源に比べて構造が単純でありながら、数十MWから数GWといった高出力のマイクロ波を発生することができる。その一方、仮想陰極発振器にはマイクロ波変換効率が著しく低いという欠点がある。そのため、本研究室では仮想陰極発振器の電極構造や電極材料を変化させたり、特定周波数のエネルギーを増大する共振器を組み込んだりして、マイクロ波の変換効率の向上を試みてきたが、マイクロ波電力の評価は行っていなかった。本研究では、測定用アンテナの校正を行うことで電力測定と共振器の効果を検証した。

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パルス放電を用いた高輝度短波長光源のための液体金属流制御と放電負荷の構築

◎渡部祥史・本間佑奈・戸矢一弘・高橋一匡・佐々木 徹・菊池崇志・原田信弘（長岡技術科学大学）

高輝度短波長光源の一つとしてXピンチ型プラズマ源があるが、放電毎に負荷の再装填が必要になり連続性が低いため、液体金属を用いた負荷が提案されている。高温・高密度プラズマ生成には、ピンチするための高い磁気圧が必要であり、液体金属流の微細化と大電流が要求される。本研究は、液体金属流の微細化制御法を取り入れた放電負荷を設計・構築し、短絡試験から放電装置の特性を評価した。構築した放電負荷のインダクタンスを計測するために銅線を用いて短絡試験を行い、設計値と同程度の電流が得られた。また、構築した負荷にφ30 μmのノズルを設置し、液体金属の挙動を観測した結果、従来のX-pinch負荷と同程度の直径が得られた。これらのことから、設計通りの放電負荷を構築することができた。

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高強度パルス窒素イオンビーム発生用両極性パルス加速器の開発

◎朴木太郎・今井嘉生・大橋隼人・伊藤弘昭（富山大学）

炭化ケイ素（SiC）は新パワーデバイスとして実用化が進められている．しかし基板作製プロセスにおいてイオン注入の問題が上げられ，本研究室ではイオン注入と結晶欠陥回復のためのアニール処理が同時に行えるパルスイオン注入法を提案してきた．そこで多様なイオン種の発生，高純度・高強度パルスイオンビーム源が必要であり新しいパルス重イオン加速器として両極性パルス加速器の開発を行ってきた．実験条件はイオン源陽極表面から 60 mm 下流に設置した BIC ( Biased Ion Collector ) で窒素イオンビームを測定した．その結果，イオン電流密度 J_i = 23.9 A/cm²が得られ，イオン飛行時間法からエネルギーを概算すると60 - 120 keV (N⁺) となり, イオンビームの初段加速を確認した．

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Simple bipolar and unipolar pulse generation by using SIDAC for efficient DBD generation

◎Hoa Truong-Thi・林 美紗希・上杉義彦・田中康規・石島達夫（金沢大学）

We are reporting on designs for high voltage bipolar and unipolar pulse generation used as a low cost power supply for efficient Dielectric Barrier Discharge (DBD) plasma generation. These pulses were generated by using SIDAC or Silicon Diodes for Alternating Current which is a bidirectional high voltage switching device and is designed for direct interface with the power line. When applied voltage (VSIDAC) meets or exceeds its breakover voltage (VBO), the SIDAC will switch from blocking state to conducting state. If the number of SIDACs in series connection is N, the breakover voltage of this connection will be increased to N times. Then, a low cost high voltage pulse with tens of kilovolt derivation is created without controlling by switching characteristic of these SIDACs. In our work, we used a series connection of ten SIDACs (K1V38(W)) connected to a step-up transformer and a conventional AC power supply in order to generate high voltage bipolar pulses. However, if this connection of SIDACs were connected to a capacitor bank and a DC high voltage power supply, then the high voltage unipolar pulses were generated. The experiments demonstrated that such proposed configurations is capable of generating the less expensive high voltage pulses which have been successfully applied for inexpensive and efficient DBD plasma generation.

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コンデンサ放電型パルス電圧発生回路への出力電圧補償回路の適用に関する検討

◎高橋勇紀・飯嶋竜司・磯部高範・只野 博（筑波大学）・山崎長治・長谷川智宏（東芝三菱電機産業システム）

加速器に用いられるパルス電源は一般的にコンデンサなどからなるパルス電圧発生回路が一般的であるが、高電圧大電流かつパルス幅が非常に長いうえにパルス電圧に平坦さが求められるため、大容量のコンデンサバンクが必要となる。そこで、本研究では直列補償回路を多段構成で用いる方式を検討する。 提案方式は補償電圧相当の回路でパルス波形の制御を行うもので、構成するデバイスは低電圧となるため、体積・入手性・制御性が優れている。よって、補償及びコンデンサの縮小の両立が可能である。 回路を実際に設計・構築した結果、電圧降下に応じて階段状の補償電圧が発生し、平坦なパルス電圧出力が得られることが確認できた。

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Influence of Flow Rate on Scale Control using HVI Technology

◎Woong-ki HONG・June-Ho LEE・Seung-yeon CHO・In-soung CHANG（HOSEO UNIV.）

In power generating plant, the scales on the water pipe degrade cooling efficiency due to the consumption of unnecessary energy. In this research, we aim to control the scale in the hard water using HVI (High Voltage Impulse) and to examine the effect of flow rate on scale control. At a flow rate of 320 [ml / min], it starts to saturate after a certain period of time and it is hard to see that the calcium concentration is decreasing.

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プラズマジェット処理によるトマト種子の嫌光性喪失現象

◎中田晃弘・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

我々の研究グループではこれまで、代表的な嫌光性種子（暗発芽種子）のひとつであるトマト種子に対して極性反転パルス電圧によるDBD処理を施したところ、トマト種子の嫌光性が喪失され、本来は発芽しづらいはずの明室下でも発芽率が高まる現象を発見した。しかし、トマト種子の嫌光性喪失がDBDが引き起こす様々な物理現象（電界、光、活性種、荷電粒子衝突、熱）の中の何に起因しているのか判明していないのが現状である。そこで今回は、荷電粒子衝突の効果を検証するために、プラズマジェットを種子に照射した後、発芽率を測定した。結果は、プラズマジェット処理でもDBD処理と同様にトマト種子の嫌光性は喪失されたため、嫌光性喪失は荷電粒子衝突によるものと考えられる。

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高電界パルス殺菌によるBornエネルギーを考慮した生菌率の算出

◎山田基生・村上祐一・村本裕二（名城大学）

高電界パルス殺菌法は非加熱殺菌法の1つであり、加熱殺菌法に代わる液体食品の新たな殺菌方法として注目されている。本論文では、これまで本研究室で試みてきた高電界パルス殺菌の殺菌機構モデルを用いた大腸菌の生菌率の算出方法に加えてBornエネルギーを考慮して生菌率を算出し、従来の実験値との比較を行ったので報告する。今回は、NaCl水溶液では細胞膜電位が1Vになると大腸菌が死滅し、MgCl2水溶液では4Vになると大腸菌が死滅すると仮定して生菌率を算出した。その結果、大腸菌の生菌率の算出値は実験値と一致せず、また溶質濃度が増加しても生菌率に変化が見られない領域が現れた。

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マイクロギャップリアクタ内における酵母増殖率のパルス幅及び電圧振幅依存性

◎薄葉考史・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）

近年、生体作用の電気的制御においてパルス電界処理が注目されている。本技術は瞬時電界による非加熱的手法であり、周波数制御によって、アポトーシス、細胞増殖、遺伝子発現といった異なる生体反応を誘起できる。そのため、がん治療や創傷治療への医療応用が報告されている。本研究の目的は、マイクロギャップリアクタ内でのパルス電界処理による菌体への影響を精査し、制御条件を明確にすることである。本報では、異なるパルス幅や電圧振幅における酵母の増殖率および膜損傷度を測定することで、酵母の生育活性変化を定量的に検証した。

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パルス電界を用いた海水の殺菌に対するNa2CO3の効果

◎中田悠太・小松偉仁・瑞慶覧章朝・和田理征・澤井 淳（神奈川工科大学）・乾 貴誌（富士電機）

船舶のバランスを保つために使用されるバラスト水には、プランクトン、細菌を含む海洋生物が混在しており排出の際に処理が必要である。著者らは、これまでにあらゆる大きさの菌を同時に処理することを目的とし、パルス電界による海水の殺菌効果を検討してきた。本報では、殺菌効果の向上を目指し、海水中にNa2CO3を添加することでマイクロバブルの生成を試みた。Na2CO3を添加した場合と添加していない場合で比較を行った結果、海水のみの場合、印加回数10000 回で生存率が1/10程度であるのに対し、Na2CO3を添加した場合は1/10000に達した。この要因として、Na2CO3添加によって発生するバブルの効果が考えられる。