2007年度日本物理学会第3回Jr.セッションプログラムおよびアブストラクト

   
  開会の挨拶(10分) 坂東会長
     
27aSM Jr. セッション 10:50 ~ 12:30  
 
座長:河野 公俊(理研)

27aSM-1 屈折率を利用した液体の拡散の研究  
 
清水東高等学校
 
 
新井絵里奈
 
  水中に拡散していく物質の様子について、昨年の春から継続的に研究に取り組んできた。
本年度は、水中に拡散していく溶質が無色透明な場合について、特に重点をおいて研究に取り組んだ。水を入れた水槽にショ糖を沈め、攪拌せずそのまま放置しておいても、時間の経過とともに、底に沈めたショ糖は水面に向かって拡散していく。無色透明であるため、拡散の様子を目視観測することはできない。そこで、溶液の屈折率分布を利用して解析を進めた。溶質が拡散した溶液は、深さに応じた濃度分布を形成しているはずであるから、屈折率も深さとともに変化していると考えられる。透明な水槽の側面からレーザー光を照射し、各水深ごとにレーザー光の偏角を測定することで、溶液内部の屈折率分布を計算で求め、解析した。実験の結果、経過時間や水温とも関連させながら、溶質が拡散しつつある溶液中の屈折率分布について、グラフ化することができた。
 
     
27aSM-2 青森県の降雪について  
 
青森高等学校
 
 
渡邊世梨華,木村佳那子、立田卓登、窪田駿平
 
  青森高校地学部は,過去3年間ヤマセの気流について研究し,ヤマセの気流が青森県の地形に大きく影響されることを説明した。この研究で用いた手法を使い,青森県の降雪について研究することとした。
一般に同じ津軽地方でありながら青森市と弘前市では降雪量に大きな差があると言われている。この研究では,青森市と弘前市の降雪量の差を調べ,その差の原因を探ろうと考えた。そのため,ヤマセの研究と同様に地形モデルを作成し,ドライアイスで作製した雲の流れを観察した。さらに,気象庁のアメダスデータの用い風向頻度を検討した。その結果,津軽平野に吹き込んだ季節風が地形の影響を受けて青森で収束することが,青森市の降雪量の多さに関係しているという結果を得た。
2005年12月~2006年2月の平成18年豪雪は新潟県を中心に豪雪をもたらしたが,青森では2006年2月に最深積雪148cmを記録した。むしろ2005年2月に最深積雪が174cm,同年3月には178cmと例年にない大雪で,178cmは観測史上4番目の記録である。この平成17年3月の豪雪について検証し,この豪雪には日本海の海水温が影響している可能性が高いという結果が得られた。
 
     
休  憩 11:30~ 11:45
     
27aSM-3 ピコピコカプセルの力学  
 
関西創価高等学校
 
 
井上優貴
 
  ピコピコカプセルというものをご存知だろうか。これは、薬のカプセル内に鉄球を入れて斜面を転がすと言うものである。その結果、鉄球を中に持つカプセルが周期的に起き上がりながら斜面を回転する。これをはじめて作ったのは私が幼稚園の時で、当時はこのカプセルの奇怪な動きにとても好奇心が刺激されたのを覚えている。今回、私は改めて、このカプセルの回転運動を物理の観点で見ることにした。私は、この回転運動の要点を、地面とカプセルとの摩擦、箱と小球の重心の位置であると考えた。カプセルの回転が斜面との設置点からのモーメントのつりあいで考えられることから、このカプセルの回転運動が起こる条件を簡単なモデルに置き換えて計算した。その結果、斜面の傾きがカプセルが滑り始める角度と回転し始める角度の間である時に回転運動を行うことがわかった。この関係を用いて、実際にモデルを作成し、その回転角度し始める臨界角、および、動摩擦力から計算される斜面を滑る落ち始める臨界角を測定し理論の検証実験を行った。その結果、このカプセルの回転条件は確かに理論を満たしていることが確認できた。今回は、カプセルにおける回転条件の理論とその検証実験を中心に発表する。  
     
27aSM-4 ばねと糸から構成された振り子の研究( 第4報)
 
札幌北高等学校
 
 
山田祥太,宮澤拓也,佐久間英喜,
佐藤圭,常田慧徳,花田浩大,
澤口加奈,長田悠里
 
   2004年に「ばねと糸から構成された振り子」(以下『糸ばね振り子』と呼ぶ)についての研究を開始し、糸ばね振り子に見られる特徴的な運動の一つに着目した。「ばねのみでおもりが鉛直方向に上下動する振動」(以下『ばね振動』と呼ぶ)と「ばねがある長さを保つように見える状態でおもりが横方向に運動する振動」(以下『振り子運動』と呼ぶ)が繰り返す運動である。この運動が現れる条件は「ばね振動の周期Tv」:「振り子運動の周期Th」≒1:2であった。(以下この条件を満たす糸ばね振り子を『固有糸ばね振り子』と呼ぶ)。これは2005年第1回Jr.セッションで報告した。2005年は固有糸ばね振り子の状態から糸の長さを少し変化させて運動の様子を調べた。おもりの動きをカメラで撮影、コンピュータ上で座標を読み取りグラフ化することにより得られた事柄を2006年第2回Jr.セッションで発表した。その際に「振り子運動時の運動方向は地球の自転の影響を受けているのではないか」という質問などを受けていた。
この研究が始まったころから『固有糸ばね振り子』の振り子運動時の振動面の出現の仕方についても興味を持っていた私たちは振動面測定器(手作り)を用いて振動面の角度変化を測定し、分析した。今回はその結果である振り子運動の振動面の出現規則性についての仮説を報告する。
 
 
 
27aSM-5
磁場中の強磁性体の磁気量の考察
 
 
関西創価高等学校
 
 
玉田裕明
 
  磁石どうしが引き合う力は磁気力に関するクーロンの法則で求めることが出来るが、磁石と強磁性体の場合はそうはいかない。近づけば近づくほど強磁性体の磁気量が増えていってしまうからだ。そこで磁気量がわかっている磁石と小球を用いて、磁石との距離とその時の小球の磁気量の関係を導く方法を考えた。  
     

お昼  12:30 ~ 13:30

     
     
     
27pSM Jr. セッション 13:30 ~ 16:30  
 
座長:興治 文子(日大)

27pSM-1  ESR を用いたポテトチップス劣化の測定について
 
岡山一宮高等学校
 
 
沖田浩希,東岡大輔,佐々木大,江口岳
 
   賞味期限が過ぎると食品がどうなるのか知るために、見た目ではわかりづらい食品の劣化を測定した。この劣化とは食品の脂質中にある不対電子と酸素が反応して、マロンジアルデヒドができること。
対象にはポテトチップスを用いた。まずポテトチップスを25℃、5℃の状態に置き試料を保存した。そしてその劣化の度合いを、ESRによる計測で不対電子の量を数値化した。結果は25℃、5℃の順に劣化の度合いが大きくなっていった。また20℃、5℃、-15℃の状態にポテトチップスを保存して、TBA測定法によっても調べた。その結果-15℃、20℃、5℃の順に劣化の度合いが大きくなっていった。これらの実験結果からESR測定法、TBA測定法共に5℃が最も劣化が進んでいることがわかった。
この他に、湿った試料をESRで測定すると測定値が極端に小さくなった。水がマイクロ波を吸収したと考えられる。このことから、ポテトチップスを保存する時に露点に達するような温度変化があると、測定に影響を及ぼすことが考えられる。
 
     
27pSM-2 ホイヘンスの原理について -作図における素元波の形-
 
姫路飾西高等学校
 
 
是川翼,高橋正倫,寺尾茂史,浜中健太郎,松田尭之,若月泰貴
 
   ホイヘンスは著書の中で波面の作図方法を紹介している。
円形波、減衰波、三角形素元波など興味深いものが多い。前回のJr.セッションでは素元波の大きさについて報告したが、今回は素元波の形について議論する。
現在、素元波の形として多く採用されている円形素元波と今回考察した正三角形素元波や正方形素元波を比較しながら報告する。素元波の形によって、作図方法に以下のような規則性があることを発見した。
1.反射:正三角形の場合、頂点を波の進行方向に向けて反射面で30°回転させる。正方形の場合も30°回転。
2.屈折:正三角形の場合、屈折の法則から入射角iと屈折角rを算出し、(i-r)だけ回転させる。正方形の場合も(i-r)だけ回転。
3.回折:正三角形、正方形の両方の場合、障害物の背後へ90°回転させる。
これらの結果を利用することにより、円形波を利用したホイヘンスの原理が合理的であることが立証できた。
 
     
27pSM-3 熱電対による発電  
 
岡山一宮高等学校
 
 
宗兼将之,大森直樹,木田大雅,木村篤,野呂勇馬
 
   異なる二種類の金属を組み合わせて、2つの接合部に温度差を生じさせることによって起電力が生じると聞いて興味を持ちました。調べているうちに、新エネルギーとして使用できるのではないかという考えが浮かび、最も大きな起電力が出る条件を探ることにしました。面積と起電力の関係及び金属の組合せと起電力の関係にそれぞれ着目して実験を行いました。金属は、身近なものであるアルミニウム・鉛・亜鉛・銅・鉄・ハンダ・真ちゅうを用いました。実験の結果、面積と起電力は関係がなく、アルミニウムと鉄の組合せのときに最も大きな起電力が出ることが分かりました。また,起電力と温度のグラフの傾きから2種の金属のゼーベック係数の差を求めました。ゼーベック係数の理論値から相対誤差を求めると10%以内でした。そして、合金のゼーベック係数はそのもととなる金属のゼーベック係数の間の値になるわけではないということが分かりました。これらの結果から最終的に、ソーラーパネルに集まる熱と地中との温度差を利用して発電するなど太陽エネルギーから効率よく電力を得て、クリーンなエネルギーとして現代社会に適用させたいと考えています。  
     
休  憩 14:15~ 14:30
     
27pSM-4 宍道湖の蜃気楼の分析  
 
松江東高等学校
 
 
森脇崇史,阪本佑,谷口未来,松本萌美
 
   蜃気楼を見せる光の動きをシミュレーションして、蜃気楼を分析します。そして、実地観測のデータと照らし合わせて、似ている点は何か?またどのように違う点があるのか?そしてその違いの理由とは?ということを調べていきます。シミュレーションは今70%位完成しています。シミュレーションの内容としては、光の軌道を描くように線をプログラミングしてわかりやすいようにしています。その他には、マイケルソン干渉計を自分たちで作成し干渉縞の観察をしました。そして一定の面積の間に何本の干渉縞があるかを観測しました。この実験は光の干渉縞を計測しました。結果として、1センチ平方メートルのなかに10本から13本確認できました。  
     
27pSM-5 レーザーを用いた菌の繁殖量測定の試み2  
 
関西創価高等学校
 
 
岡田健太郎,北澤文子,瀧本真由美,
上田幸太,竹内貴洋,織田清彦
 
   菌の繁殖量を測定する方法の一つにコロニーを数えるものがある。菌が大量に繁殖してコロニーが正確に数えられないときでも繁殖量を正確に測定したいと思い、本研究に取り組んだ。秋のセッションと同様に今回の研究も、菌の繁殖量を求めるのにレーザーを用いた。レーザー光は、寒天培地に照射すると寒天および菌によって吸収・拡散されるので、その透過光の減少が菌の繁殖量の指標となると考えた。実験では、レーザー光を寒天培地の各々の点に照射し、感光器に発光ダイオードを用いてその電流値を測定し、透過光強度とみなした。そこから透過率および透過光減少率を求め、グラフに表し、細菌の繁殖分布を作成した。今回は菌を一日および二日繁殖させ、菌繁殖量の日ごとの変化を比較した。結果は、一日繁殖と二日繁殖のそれぞれでグラフを書くと、菌を植え付けた中央部と同じ位置に高い数値が見られた。一日目と二日目を比較するグラフでは、菌があまり増加していないことが明確に顕れた。今後は、菌を別のシャーレで条件を変えて繁殖させ、その量を正確に測定・比較することに挑戦する。  
     
27pSM-6 0からつくる みかんで動く新しいロボットの開発
 
奈良女子大学附属中等教育学校
 
 
西田惇,樋口幸太郎,前澤俊哉,
中嶋研人,岡田真太郎
 
   私たちは、中学生と高校生の共同研究として、モーションキャプチャシステムをコントローラとして採用した遠隔操作可能なロボットを研究し、開発することができた。このロボットは、直感的に操作することができ、原理的には地球の裏側からでもコントロールが可能である。また、ロボットのカメラがとらえた映像をリアルタイムで取得でき、構造がシンプルなため、高い拡張性を持っているという点で優れている。さらに、任意の物体の動きをキャプチャできるため、みかんをコントローラにすることもできる。
 コントローラに用いた自作したモーションキャプチャシステムは、USB接続のカメラを利用して、人間や物体の動きを記録できる。このシステムの特徴は、一台のカメラで物体の3次元座標を取得することが可能な点である。これを利用すると、3次元空間を操作できる新しいマウスを実現することができるなど、様々な応用が可能である。このモーションキャプチャシステムに加えて、無線LANやPC、PIC、サーボモータなどを組み合わせ、ロボットを作り上げた。ハードウェア、ソフトウェアともに、ロボットの根幹となる部分は、ほとんど自前で作ることができた。
 これらの研究を通して、私たちは一貫して、できるだけブラックボックスの部分を排し、自分でつくることを大切にした。そうすることで、研究成果を広く応用できることを学んだ。
 
     
休  憩 15:15~ 15:30
     

     
高校生のための講演  
  「宇宙の中の特等席から自然を探る」 30分  
 
首都大東京理工
 
 
南方久和
 
     
講評・表彰式 30分
 
(閉会)
 
     
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