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永久磁石同期モータの矩形波制御に関する検討
尹 英杰(トヨタテクニカルディベロップメント)・奥松美宏(トヨタ自動車)・◎脇坂 龍(トヨタテクニカルディベロップメント)
永久磁石同期モータ(PMSM)は高効率・高出力という利点から自動車、ロボットなどに広く採用されている。特に電気自動車の主機として用いられるPMSMは広い駆動領域と高速な応答が要求され、その実現には、インバータの駆動領域に応じてPWM制御、過変調制御、矩形波制御などの制御法が使い分けている。矩形波制御では、トルクフィードバックで電圧位相を決め、それを元に矩形波電圧を出力し、トルクを制御する。一方、フィードバック制御性質上、制御システムの安定性はフードバック量と制御量の単調増加関係に限る。そのため、従来ではトルクと電圧位相の関係を標準正弦波と近似し、例えば表面磁石同期モータ(SPMSM)の場合、電圧位相を±90度の範囲内に制限する。しかし、このような標準正弦波近似には誤差が伴う。
本稿では、PMSMの矩形波制御におけるトルクと電圧位相の関係式を改めて導出し、従来の標準正弦波近似による誤差を検討する。また、新しく導出したトルクと電圧位相の関係式に基づいて、従来の矩形波制御の改良方法を提案し、トルク追従性能の向上を狙う。