社団法人 日本物理学会 Jr.セッション

The Physical Society of Japan

第14回日本物理学会Jr.セッション(2018)

Jr.セッションは中高生による物理的内容を含む理科の研究発表の場で、世界物理年の2005年からスタートしました。
Jr.セッションは、毎年日本物理学会年次大会で開催しています。

風力発電とエネルギー問題

(質問) 今後のエネルギー利用について多くのことを知りたい。か。

(回答) 「エネルギー」の利用や研究については多様な切り口があると思います。既存の火力発電、水力発電、原子力発電などはそれぞれにメリット・デメリットがあり、将来に向けて課題に取り組んでいます。また枯渇せず、なるべく環境に害を与えない新しいエネルギー源を求め、研究・開発を行っている企業や研究所などもあります。自分の関心がどこにあるかを考え、焦点を絞って、更にもっと知りたいと思う分野について調べることが、研究をはじめる第一歩となるでしょう。(興治文子)

(質問) 落雷を電力として利用する方法はないのですか。何が解決されれば実現が可能なのですか。

(回答) 日本雷保護システム工業会のホームページhttp://www.jlpa.jp/04/04_1.htmlには雷のエネルギーについて次のような説明があります。
「雷の電圧は通常1億V(ボルト)位といわれています。家庭で使う電圧は100Vですから,その100万倍です。雷のエネルギーを見積もるには,さまざまな方法がありますが,10kWhから500kWhとされています。最大で一般家庭の電力使用量の50日分くらいの大きさです。(一般家庭の月平均電力使用量は,287kWh−東京電力調べ)このエネルギーは落雷するときに,その大部分が電波,光,音のエネルギーとして,大空いっぱいにまき散らされます。」
 これだけの大きなエネルギーですが,制御して利用することはきわめて困難です。電気エネルギーは,蓄電池などによる少量の蓄積をのぞけば,もともと蓄積するのが難しいうえに,雷のエネルギーが余りにも大きくしかも短時間(1/1000秒〜1秒)に発生し,その発生場所や時刻は正確には予測できないことがその理由です。
 現在は,落雷による被害を防ぐための落雷対策技術や,雷をレーザーで生成した誘導路に沿って導き安全な場所に落雷させるなどの方法を用いる「誘雷技術」の研究が,複数の大学や研究機関で行われており,インターネット上でも最近の研究状況を調べることができます。(覧具博義)

(質問) 風力発電を自宅に設置することは可能ですか。

(回答) 家庭用の小型風力発電機は何種か発売されているようです。またそれらは、自宅にも設置することが可能のようです。(佐野雅己)

(質問) また,その発電量によって元を取ることが出来ますか。

(回答) まず、風力発電で得られるエネルギーを求めてみましょう。風の運動エネルギーは、1/2x(質量)x(速度)2で与えられますが、単位時間当たりに羽の面積を通り過ぎる空気の質量は、(空気の密度)x(速度)x(面積)で与えられるので、風から得られるエネルギーは風速の3乗に比例します。仮に、風を受ける面積を1m2、風速を10m/sとして計算してみると約600Wとなります。このエネルギーの大部分が羽の回転運動に変換可能と仮定すると発電機自体の効率は高いので一見、有望そうに思えます。実際、Webで小型風力発電機の情報を調べますと、比較的性能の良いもので直径1.8m、定格出力1KW程度のようです。またこの場合、定格出力が得られるのは風速12.5m/sとありますので上の見積もりと大差ありません。平均的にこのくらいの風速がある地域でしたら、元をとることも可能かもしれません。しかし、東京近郊などでは、年間の平均風速は約4m/sだそうです。速度が1/3になると得られるエネルギーは、(1/3)3=1/27になってしまいますので、平均的には37W程度しか発電できないことになります。このような地域ですと元をとるのは難しいと考えられます。http://www.tronc.co.jp/pdfweb/fuukyo8pc0.pdf などに日本における平均風速分布の情報が載っています。風の強い地域では、風力発電機を設置しても一定の効果が得られると思われます。ただし、実用のためには個々の発電機では風速により電力の変動が大きいため、フライホイールや蓄電池でエネルギーを貯蔵したり、広い地域で大規模に発電し、電力を調節するなどの対策が必要になり、組織的な取り組みが必要になると考えられます。
(佐野雅己)

(質問) 日本ではなぜ風力発電が大規模に行われないのですか。

(回答) 政策的な問題もあると思われますが正確にはわかりません。欧州では偏西風の影響で風向が安定しており、オランダなどでは古くから風車による動力や発電が行われてきましたが、石油等に比べて非効率のため一旦は衰退しました。しかし最近は欧州全体で見直され、大規模な風力発電が行われています。世界的に見ても欧州では急速に導入が進んでおり2005年末で40500MWの設備を設置し、年間発電量ではEU全体の消費電力の2.8%に達すると見積もられています。現在これらの国々では風力の発電コストが化石燃料による発電コストを下回っていると報告されています。一方、日本における風力発電設備は約896MW(2005年末、一次エネルギー供給の0.06%)だそうです。日本の計画では2010年に3000MWの設備を設置し、一次エネルギー供給の0.2%をまかなうという計画のようです。しかし、欧州やアメリカに比べるとまだ低い水準と考えられます。日本では一定して強い風の吹く地域が限られており、また風の乱れが大きいこと、さらに稼働率に比べ土地などのコストが高くつくことが妨げになっていると資源エネルギー庁の資料では述べられています。地球温暖化対策や、石油資源に変わるエネルギーの一つとして今後一層、研究や実用化を進めていく必要があると思います。(佐野雅己)

(質問) 現在使われているエネルギー資源は今後100年以内には尽きるという話をよく聞きます。現在それに対処したエネルギー資源の開発をされていると思いますが具体的にどのようなものか教えてください。またそれはどのくらいで実用化が可能になりますか。

(回答) 資源エネルギー庁の資料によれば、1999年に確認されている埋蔵量は、石油で1兆460億バレルで、これを現在の年間生産量で割った可採年数は39.9年、同様に天然ガスは可採年数61.0年、石炭は227年、ウランは64.2年と計算されています。
一方、新たに発見される資源もあるため、例えば石油の可採年数は、2004年では49年とわずかですが増えています。また、最近ではメタンハイドレードなどが海底に大量に存在することなどもわかってきました。これらのことからエネルギー資源が100年以内に尽きることはないと思われますが、地球上の資源が有限であることは明らかであり、ご心配のようにそう遠くない将来にエネルギー資源が尽きてしまうことが予想されます。
現在、石油などのエネルギー資源に代わり実用または検討されているエネルギーとして、太陽光発電、風力発電、地熱発電、潮力発電、海洋温度差発電などの自然エネルギーの利用の他、バイオマスや燃料電池、核融合などがあります。自然エネルギーは元をたどれば全て太陽光のエネルギーが形を変えたもので、地球に降り注ぐ太陽光の総エネルギーは、全世界の使用エネルギーの15000倍に相当します。これを有効に使うことが究極の持続可能なエネルギー利用であり、自然エネルギーの比率を高めることが必要です。しかし、自然エネルギーではエネルギー密度の低さと、不規則な変動が問題となるため、化石燃料に比べてコストが高くなる場合が多いだけでなく、今の世界のエネルギー消費量を自然エネルギーのみで維持することは現在の技術では不可能と考えられています。
核融合は恒星の中心で起こっており、究極のエネルギー源とも考えられます。現在研究されている核融合は、重水を原料とするものですので資源は豊富にあると言えます。しかし、大量のγ線や有害なトリチウムが生成することや、原子力発電以上に制御が難しいことから、あまり過度な期待はしないほうがいいかもしれません。世界的は、ITERなどの研究が行われていますが、実用化までの年数を予想することは困難と思われます。
また、新しい技術として石油を合成するバクテリアの研究なども開始されています。あなたも新しい方法を考えてみませんか?                  
(佐野雅己)

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